Microsoftやリクルートを経てデータ企業FLYWHEELで働くPdMが大事にする野球部のマネージャー視点とは?

フライウィール横井さんメイン画像

今回は、株式会社フライウィール(FLYWHEEL)でプロダクトマネージャーをされている横井 啓介さんにお話を伺いました。
横井さんは、MicrosoftでProgram Manager(プログラムマネージャー)としてキャリアをスタートされ、その後、アカツキで新規事業立ち上げやリクルートでのプロダクトマネージャーを経験され、現在、株式会社フライウィールにてPdM兼Productチームのリーダーをされています。

フライウィール社におけるPdMのあるべき姿を定めたPM VALUESや、みんながワクワクして働けるようなカルチャー・仕組みづくり、ストーリーテリングに取り組まれているお話は一読の価値ありです。特に、マネージャーの役割を「管理」だと思っている方には「野球部のマネージャーの視点」のお話がオススメですので、ぜひご覧ください!

素敵なお話ばかりで約15,000文字の大作となっておりますが(笑)、読んで良かったと思っていただけること間違いないです!

この記事は100人100色のプロダクトマネージャー(PdM)のリアルを知るためのインタビュー記事「PdM Voice」の連載第7回目の記事です。

株式会社フライウィールでPdM兼Productチームのリーダーを担当

Qまずはご自身の仕事について教えてください。

株式会社フライウィールでプロダクトマネージャー兼Productチームのリーダーとして働いています。

フライウィールは、「データを人々のエネルギーに」というミッションを掲げ、BtoBで企業に対してデータ活用やAI活用を一気通貫してサポートする創業3年目の会社です。
一気通貫とはなんだ?という話なのですが、世の中的にはまだデータを全然使えてない企業がたくさん存在します。そのような企業はデータを使う以前にそもそもデータが取れてなかったりもするのです。
その企業のデータを収集するところから始めて、その収集したデータを扱いやすい形に変形させて、整理されたデータを使って企業の価値を適切な人に、適切な状態で、適切な形で届けるお手伝いをしています。
例えば整理したデータを活用した広告配信・レコメンデーション・検索エンジン、あるいは企業のマーケティング企画担当がユーザーや商品をより理解するための可視化やよりよいコミュニケーションを取るためのパーソナライズメール施策など、データを軸に自社のファンを増やしたり、データを経済的な価値に変えたり、データを用いて従業員の依存度や工数を減らしたり、組織に真のDXを提供するための多様なソリューションを展開しています。

Qプロダクトについてもう少し教えていただけますか?

正直、一般的な「プロダクト」と言えるかどうかはよくわからないです。笑
僕らの強みは、リクルートやメルカリ、サイバーエージェントなど日本企業出身、Google やMicrosoft などで検索やマップを開発していたグローバルプラットフォーマー出身のエンジニアが集まり、ローカルのニーズを汲み取りつつ、非常に量の多いウェブスケールとのデータを扱えるところです。大きなメディアやサービスの大量のユーザーデータやログを整理して有効活用できるようにしています。

「データを集めて扱いやすい形に変形する」「変形されたデータを適切な人に適切なタイミングで届ける」大きくこの2つの領域にプロダクトチームを分けており、多様なお客さんに届けられるようにそれぞれ汎用的に作ろうとしていて、そういう意味でプロダクトと呼べるものではありますが、それをそのまま売り物にしているのではなく、実際にはそのプロダクトを組み合わせてサービスとしてお客さんに届けるということをしています。

QProductチームのリーダーとしての仕事を教えてください。

3月半ばまでは、ぼっちPdMとしてやっていましたが、最近チームになってPdMが3人になりました。PdMだけではありませんが、この半年に60人ぐらい面接させてもらって、ようやくチームになりました。採用はかなり大変でしたね。笑

採用活動には力を入れていて、一般的には人事に会社説明してもらって僕らは面接から入る流れが多いと思いますが、PdMとして直接会社のストーリーを語ってそのストーリーに共感してもらった人に入ってもらいたいという思いが強くあるので、選考フローの最初は僕がまず語る時間をできるだけ取っています。ステップ1は、1時間取っているのですが大体45分ぐらい僕が会社説明を話します。人事のものとは別に自分専用の会社説明資料を作りましたし、会社としてオフィシャルに発信されていないけど僕はこう思うみたいなことも伝えています。

弊社のミッションは「データを人々のエネルギーに」なんですが、これだけだと正直あんまり明確ではないですよね。笑
会社のミッションとしてはそれでいいと思っているのですが、ただ僕自身が動く中で行動指針ともなるミッションとしてはもうちょっと明確にしたいなと思って、勝手に作っていたりします。

Qなんと!笑 どんなミッションでしょうか?

言っていることは大して変わらないのですが、僕は「事業者が持つ価値・データを活用することによって、適切な相手に適切な状況において適切な形で届けるお手伝いをする。結果として全ての人が享受する価値、および幸せの総量を最大化する。」と考えています。

BtoBビジネスではありますが、Bの先にいるC(カスタマー)も意識することが大切だと考えてます。広告をビジネスとして出すにしても、その先にいるカスタマーがウザい広告を見るだけだったらあまりモチベーション上がらないですよね。なので、「全ての人が享受する価値および幸せの総量を最大化する」っていうことでウザい広告はむしろマイナスになると判断できるようにしています。ウザい広告よりも、何か運命の出会いみたいな、この広告に出会ってよかったという、そういう出会いを提供できたらいいなっていう考えを持っていますね。

また、プロダクトマネジメント・トライアングルがありますが、僕はやっぱユーザー(顧客)にものすごく偏っているんですよね。なぜかと言うと、CEOがもともとFacebookの執行役員でビジネスパートナーシップ担当だったので、ビジネスに強いんですよ。CTOはMicrosoftとGoogleでエンジニアリングマネージャーをやっていたので、開発やテクノロジーに強いんですよ。ではこの会社においてPdMが出すべき価値は何かと考えると、僕を含めPdMチームはとにかく顧客/ユーザーの視点に立つべきと思っています。

その上で、それをメンバーに伝えるためのストーリーテリングをとにかく意識しています。
CEOやCTOが言っていることを噛み砕いたり、翻訳して、僕はこう思うみたいな感じで伝えることを重視しています。仮に間違っていて訂正したり、後に言うことが変わったりしても、一社員の立場なら謝れば許されると思いますし、言わないよりは100倍マシだと思うので。笑

Qストーリーテリングによってチームが変わった事例などはありますか?

そうですね、なんだろうな。ストーリーテリングによってイメージが湧くというのはあると思いますね。目指している山が必ずしも正しいかどうかは分からないし変わるかもしれないけど、少なくとも今はこの山を登るというところで統一感取れるので、感覚値にはなりますが進みが早くなることと、コミュニケーションが取りやすくなっています

ぼっちPdMだったとお話したじゃないですか。PdMが僕1人でエンジニアが20名ぐらいいたのですが、普通にやると確実にPdMがボトルネックになるんです。なので、エンジニアに向けて登る山を明確にして、とりあえず間違った方向じゃなければどんどん進んでもらうっていうのが一番良い方法でした(その時はそれしか取れなかったという理由もありますが。笑)。そういう意味でもストーリーテリングは重要だと思っています。

【キャリア】新卒でMicrosoftに入社しプログラムマネージャーとしてキャリアをスタート

QどのようなキャリアパスでPdMになったのでしょうか?

僕は社会人としてはPdM的な経験しかありません。元々、コンピューターサイエンス出身でMicrosoftに新卒で入ったのですが、新卒で入る前に学生の頃はMicrosoftでエンジニアとしてインターンシップしていました。正社員としてオファーをもらった時に、エンジニアとして作るよりもそのタネから作り出す方になりたいと思い、プログラムマネージャーになりたいと言ったのがきっかけです。Microsoftでは、いわゆるプロダクトマネージャーはプログラムマネージャーと呼ばれる職種です。それで面接が1個増えちゃいましたが、幸いにもプログラムマネージャーとして採用いただくことができました。当時は新卒として正式なプログラムマネージャーの募集はしていなかったのですが、言ってみるもんですね。笑

QMicrosoftでプログラムマネージャーになられた時の業務範囲や役割を教えてください。

Bingという検索エンジンの開発チームに所属しました。検索の一機能、具体的に言うと、例えば「ラーメン」、「新宿 ラーメン」と検索するとGoogleでも何でもいいですが、地図とお店が出てくる機能があるじゃないですか。ローカルサーチと言いますが、その機能を担当していました。
プランニングが役割の中で一番力を入れた部分で、検索エンジンでどういうキーワードが入力され、それに対してどういう行動が起きているのかをひたすら分析して、インパクトがある施策を提案・ドライブし、エンジニアとともにリリースまで責任を持ちます
一年目からかなり裁量を与えてもらっていて、飲食店検索サービスの運営会社を訪ねて、タダでデータくださいって言ったら凄く怒られた記憶があります。笑
とはいえ最終的にはデータ提供してもらえることになり、上司やエンジニアだけでなくそういったパートナーにも助けてもらって精度向上や機能リリースを行うことができていました。

Qその後のキャリアを教えてください。

Microsoftで4年ちょっと働き、その後一瞬だけ起業しようとして3ヶ月で諦めて、アカツキという会社に移りました。
ゲーム会社が非ゲーム新規事業を立ち上げるっていうので面白そうだと思って転職して、1年3ヶ月ぐらい新規事業立ち上げに取り組み、非常に悩み、苦しんだ日々を過ごしました。すごく良い経験になりましたが。笑
何が苦しかったかと言うと、ゲームで盛り上がっている会社なのでゲームの人達に稼いでもらったお金を食いつぶしている状態だったことです。新規事業企画は僕含め、企画、エンジニア、デザイナー、業務委託のコンサル出身の人も含め全体で20人ぐらいいたと思うのですが、8ヶ月間何も立ち上がらない状態でした。別に文句は言われないのですが、結果として何も生み出せていない焦りはもの凄くありました
最終的には、社長をはじめとするドライブ力があって事業が立ち上がっていったのですが、自分で最後まで考え抜けなかったこと、何より実現したい世界や自分の意志を強く太く持ちきれなかったことは非常に悔しい経験として覚えています。

アカツキの後に、リクルートコミュニケーションズに転職し、プロダクトマネージャーを務めさせていただきました。リクルートコミュニケーションズでは、データを扱ったデジタルマーケティングビジネスを展開していて、そのデータを活かすデータプロダクトのプロダクトマネージャーを担当しました。転職先は、データとテクノロジーを武器にできる環境を重視して選びました。結果としてリクルートでは、データを扱って新たな価値を生み出す事を色々考え、優秀なエンジニアと協働して新たな価値を生み出すこともでき、上司や同僚の多大なサポートを得ながら全社表彰をいただくこともできました。

Qその後、フライウィールに転職された理由や決め手などを教えてください。

フライウィールには、約1年半前に入社しました。
入社の決め手としては、期待感と言うか、強くてニューゲームだと思ったんです。僕が入った時はまだ創業半年ぐらいで、社員で言うと7人目ぐらい?なのですが、当時の社員はGoogleやMicrosoft上がりの優秀なエンジニアと、CEO・CTOがFacebook、Microsoftの執行役員という顔ぶれでした。そんな企業あんまり見たことないですよね。当時ビジネスも何も決まってなかったのですが、何かよくわからないけど大きいことをやろうとしているという、本当に人間に対する期待感、メンバーに対する期待感だけで入りましたあとは、Microsoft時代に入社して一番最初のプロジェクトであるローカルサーチ開発を2人でやっていたひとまわり上のエンジニアの人がフライウィールに入ったというのが大きいです。超大企業で20年以上も働いていたような人が、いきなり創業1年目、立ち上がり初期のスタートアップにいるんですよ。よく分からないけど、めちゃくちゃ面白いじゃないですか。笑
その人とは今も一緒に仕事しています。

【ミッション】最も重要なのは「Focus on customers」

Q今の会社でのPdMのミッションを教えてください。

ミッションとは少し違いますが、PdMチームの中では「PM VALUES」を定めています。
PM VALUESは、フライウィールのプロダクトマネージャーがどうあるべきか、どうありたいかについての自戒の念も込めた「宣言」として掲げています。

Pursue WHY and clarify WHAT
私たちは新しいものを提案するとき、人にものを頼むとき、会議で意見を発言するとき、さらには今やることを決めるときまで、自分を含む誰かに影響を与えることについては「何か」を明確に定義し、それは「なぜか」を常に意識します。Company Value の「Focus on Impact, and decide what you do not do」の考え方に近いですが、本当にそれは必要なの?そもそも何のためにこの会議開くんだっけ、と考える起点としても非常に役立ちます。

Focus on customers
私たちはCEO/CTOを含み誰が何と言おうと、顧客にとってどのような価値があるのか、その課題に顧客はお金を払うほど困っているのか、についてこだわりたいと考えています。プロダクトマネージャーは「ビジネス・技術・顧客に関わる全ての領域を健全に機能させることが役割である」とプロダクトマネジメントトライアングルの説明にもありますが、フライウィールにおいてはその中でも特に顧客に関して考え抜くことが非常に重要と考えています。なぜならCEOを始めとするビジネスのスペシャリスト、CTOを始めとする技術のスペシャリストは複数いますが、顧客のスペシャリストはプロダクトマネージャーであるべきと考えているからです。

Define and evangelize the destination without any misunderstandings
私たちはエンジニア・ビジネスの各メンバーが同じ方向を向き、その向かう先にワクワクしている状態をつくることにコミットします。メンバーが同じ方向を向くために、私たちは明確に言語化する必要があるし、その中に誤解のある言い回しがないか、曖昧な言い方をしていないかなど細部に注意し、常にメンバーの頭に残るように伝え続けます。「プロダクトマネージャーは『伝道師』である」と「INSPIRED」等の著者マーティ・ケーガン氏が言っていますが、それを体現します。

Be a leader of company values
私たちは積極的に Company Values を体現し、私たちが中心となって Company Values を会社全体に浸透させます。プロダクトマネージャーは会社の中で最も多くのメンバーと関わる役割と言っても過言ではなく、CEO/CTOより、事業リーダーより、あるいは人事よりも、広く深く多様なメンバーと関わっているはずで、最も社内メンバーに影響を与える役割としての自覚を持って行動します。

Qこの中で最も重要なVALUEはどれですか?

この中でも特に重要なのは、「Focus on customers」です。
カスタマーのことをとことん考えられる、妄想できる人間は、うちの会社ではPdMが一番だと思っているし、PdMしかできないと思っているので、そこがとにかく重要ですね。

Qプロダクトマネジメントトライアングルを元に、具体的な業務範囲を教えてください。

横井さん_PdMトライアングル

基本的にはとにかく顧客ファーストですが、ユーザーストーリーを作るデザインの領域と、それを成り立たせるためにデータを分析してどう使うかというのを決めていく領域に注力しており、顧客と開発者の間を取り持つところをとにかく強くやっています。
実際にお客さんの所にプレゼンしに行くというのも初回は営業の人達におまかせしているのですが、2回目以降は必要に応じて入り込んでおり、お客さんに対して自分たちがどのようにサポートできるか、どの価値がお客さんに合っていそうかなど、できるだけ無邪気に話すようにしています。
ただ、基本的にPdMはどうしてもボトルネックになりがちなのでやらない事を決めており、プロジェクトマネジメントは状況に応じてエンジニアにお任せすることもありますし、プロダクト仕様のHOWの部分までは口を出しません。何を作るかのWHATの部分、なぜつくるかのWHYの部分をとにかく明確にしようとしています。

Qどのようにやらない領域を決めてますか?

僕がやらなくてはいけないことは何か、逆に僕がやらない方がむしろ進むのは何かという点に関しては、コミュニケーションしながら決めることだと思っています。エンジニアがむしろカバーした方が、チームにとって全体として良いのであればチームに任せた方がいいし、僕個人がどうっていうのはどうでも良くて、チーム全体として、物事を前に進めるために何が必要なのかということを考えています。

野球部のマネージャーの視点でワクワク働ける環境づくり

Qチームのパフォーマンスを最大化させるためにどんなことをされてますか?

プロダクトマネージャーの「マネージャー」という言葉をみんながどう捉えているのかな?って僕は気になるのですが、僕自身は野球部のマネージャーのようなものだな、と捉えています。チームのエンジニアがいつでも気持ちよく働けるような仕掛けを、常に考えることを大事にしています。
管理っていう言葉って凄く損じゃないですか。なんかすごく言葉の響きが堅いなって思ってしまいますし、そもそもマネージャーという言葉ってそういう意味じゃないと思うので、みんながもっとワクワク働けて、パフォーマンス出せるようにする為にどうすればいいかを考えるべきですよね。

今もせっかくPdMチームになったので、みんながもっとすごい存在になる為にはどうすればいいのかっていうのは凄く考えます。そのために、PDCA回すと言うか、MVPたくさん作っていくぞっていう意気込みで、PdMチーム間の制度などを作っては捨て、みたいなことをやっています。

Q先ほどのPM VALUESもその取り組みの一つですか?

そうですね。それもバージョン1なので、別に変わったら変わったでいいと思っていますけど、とにかくここに書いてあることはみんな意識したいっていうことをまとめています。
あと、PdMではない人にPdMはこういう存在なのですと伝えることにも役立っています。

Q他にどのような取り組みとか、なんかその制度を作られていますか?

例えば、「カタリバ」っていうのをやってみました。残念ながら失敗したのですが。笑
昨日の第1回語り場は、カンパニーバリューやミッション、ビジョンについてPdM3人で語るということをやりました。それを録画・編集して会社全体に流したいなと思って。
カンパニーミッションの「データを人々のエネルギーに」が解釈に自由度があるからこそ、新しく入ってきたPdMの2人はどういうこと考えているのかなって。そこが足並み揃ってなかったら経営層に対してちゃんと説明しなきゃいけないって伝えられるじゃないですか。笑
そういうのを期待して撮ろうとしたのですが、音声が全然入っていなくて、来週もう1回やることになりました。笑

あと、これはPdMではないのですが、コロナ禍において大変なのはビジネスサイドです。エンジニアはオンラインでも何とかできますが、営業が営業に行けないじゃないですか。そのような中で、この機会を活かして、ビジネスサイドがプロダクトやサービスの理解度を上げるための新しい取り組みを始めました。
もともと僕らのプロダクトって、幅広く価値を組み合わせることを目的としていて、これまでの言語で説明しづらく、複数のプロダクトが組み合わさってサービスになると言われてもイメージしづらい、という課題がありました。
今、何をやっているかって言うと、週に1回僕がyoutuberみたいになって、開発チームがやっていることデモ付きの動画で紹介するということをやっています。結構面白くて、6回ぐらいやりましたけど、僕自身の理解にも繋がります。音声だと文章にするよりも分かってもらいやすいのですが、皆が外出自粛の影響もあって普段から動画を見ているので、音声付きの動画を見ることに抵抗もなくなってきており、これは新しいコミュニケーションのあり方だと思って凄く楽しんでやっています。

Qビジネス側からのフィードバックとか、それを通したコミュニケーションもありますか?

Googleフォームでフィードバックを募っているのですが、「営業の材料として話すべき内容がクリアになりました」「動画だからこそ分かったことがある」といったポジティブな反応があったり、「この仕組みはどうなっているのですか?」「この裏側のロジックってどうなっているのですか?」という結構突っ込んだ質問がきたりと、皆がもっとプロダクトや技術に興味を持ってくれていることがすごく分かりました
実際、10段階評価とかで取っているのですが、平均点は8点超えている状況です。これはかなりいいので、オススメですね。みんな、社内YouTuberになればいいと思います。笑

僕は皆が仲良く楽しんで仕事できることが好きなので、他にもTGIF(金曜日に飲み会をするあの制度)を導入したりしました。導入には2つの理由があって、1つはエンジニアとビジネスってどうしても距離が離れてしまうので、多少人数が増えてきても会話をして欲しいということ。もう1つは、外資出身者が多いのは凄そうですけど、裏返せば外資しか知らないのは世間知らずにもなりがちのため、多様なカルチャーに触れ合える機会が作りたいということです。

【体制】プロダクトマネージャーがボトルネックにならないかが勝負

Qどんな組織体制でしょうか?

プロダクトマネージャー3名はチームとしてやっていて、エンジニアが20名くらいいるのですが、ざっくり5つほどエンジニアチームがあるので、それぞれにPdMが1人ついてドライブするっていうイメージです。
プロダクトマネージャーがボトルネックにならないかが勝負なので、エンジニアとコミュニケーションをとりながら、できる範囲でベストな役割分担を探ります。
同時に、セールスやビジネスディベロップメントの役割のメンバーとはPdMが密にコミュニケーションしています。

よくあるプロジェクトマネージャーとか、プロダクトマーケティングマネージャーとか、あるいはスクラムオーナーとか、そういった存在はいないので、プロダクトマネージャーとエンジニア、プロダクトマネージャーとセールス、みたいなシンプルな構図です。

Q開発の優先順位や意思決定、戦略策定はPdMがされているのですか?

基本的にはそうですね。そして、優先度を決める部分がもっとも難易度が高いところですね。
企業としてやることは、データを整理して、いろんな施策にして出していくことですが、まだ3年目の小さな会社で、確立したパッケージがあるわけでもないので、どこをやらなければいけないのかという優先順位を考えるのが悩ましく思いながら、とはいえ走りながらやっていくという感じです。
なので、そこに関しては基本PdMが考えています。プロダクト戦略に関しては大体任してもらっているので。

【得意なこと】プレイヤーの活躍を支援するストーリーテリングやカルチャーづくり

Q自慢できる実績やプロダクトマネージャーとしての強みや得意なことはありますか?

運ですかね。笑
なんだろう、自分個人の自慢は特にないんです。ただ、まわりのサポートがあって成果が出せているだけです。
それはやっぱり運だなって思っていて、Microsoftでもリクルートでもそうですが、エンジニアの方々が優秀すぎて、それに尽きます。強いて言えば、仲良くなれているところでしょうか。

先程もお話した野球部のマネージャーの視点です。いかにプレイヤーが気持ちよくバッターボックスに立ってもらうか、そこが重要だと思います。なので、プロジェクトマネジメントとかも必要であればやりますが、それ以上にストーリーテリングであるとか、あるいは全然関係ないところで、カルチャーを作るところとか、エンジニアとお昼ご飯に行ったりすることも重要です。最近はコロナ禍で行けなくなりましたけど。笑

Qプロダクトのビジョンも作られているんですよね?

そうですね、全体としてもそうですが、1つ1つのプロダクトごと考えたいと思っています。

管理画面的なプロダクトがありますが、例えば広告を配信する為に管理画面で設定できるとか、設定してその結果をダッシュボードで見れるとか、それだけだとあまり面白くないんですよね。
結局それを作る意味は、お客さんがよりデータの意味を理解できるための管理画面でありたいなと思います。

そのプロダクトで僕が掲げているプロダクトビジョンは、「オドロキとタクラミを繋ぐ」というものです。
管理画面のビジョンが「オドロキとタクラミを繋ぐ」というかなり離れたように聞こえますが、得られたデータから意味を見出して、設定した施策だけではなくその先にあるお客さんとのコミュニケーションに活用してほしいと考えています。
何か配信した結果から得られるオドロキをどうやって表現するのか、そして驚いた後に次はこれをやってみようとタクラミを考えられるようにする。単なる管理画面としてじゃなくて、そのオドロキとタクラミをどうやって生み出せるのかっていうのを重視しています。

Q意識的にユーモアを混ぜながらやろうとされているのでしょうか?

ユーモアって言っていいのか分からないのですが、皆がワクワクするようにしたいんです。

画面で広告を設定するだけのものですって言われたら、別にエンジニアにとってモチベーション沸かないんですよね。
でも、その管理画面から得られるものがあり、お客さんの行動、会社全体の行動を変えるかもしれないというものを作り上げるとなるとワクワクしますよね
僕みたいに妄想するのが大好きな人だけじゃないかもしれないのですが、皆が凄いことをやっている感覚を持って欲しいと思うし、僕の会社のエンジニアメンバーは結構そういうのを重視してくれる人が多いのです。
あと、そうでなければ、プロジェクトマネジメントする人もいない中でエンジニアが自分でやっていくことはできないと思うので、大事にしています。

【行動指針】みんながワクワクすればうまく回る

Q行動指針や大切にしていることはありますか?

PdMの中ではPM VALUESを凄く大事にしています。
あとは僕個人が、単にその事業としてとか、プロダクトとして成功することだけだとあまり面白くないので、会社や組織の中で社員皆がモチベーション高くワクワク楽しく仕事ができるようにすることを意識しています。

なので、よくやるのがSlackでふざけられるとか、空気を読まない発言が許されるとか、このご時世特に皆の姿が見えにくいので、皆が少しでもモチベーション高くなるようにできないかなって考えています。

たしか、2017年のPMカンファレンスだったかな、LINEのPdMの方がPM10ヶ条を話していたのですが、そのうちの1つが私の中で印象に残っていて、「PMはパーティーマネージャー」であると説明されていました。みんながワクワクしないとうまく回らない、皆がワクワクすればうまく回るっていうこと言っていて、僕の目指したいPdMとしては凄く重要だと思いました。

Q他に大切にされていることはありますか?

もうちょっとPdMっぽいことを言うと、言葉の重みはすごく重視します。ドキュメンテーションでも何でも、形容詞ひとつとっても相手の印象は変わってしまうのです。それによって情報齟齬が生じてミスコミュニケーションが生じてしまうので、ドキュメント書いたり、レビューする時にも、この言葉はどういう意味だったかと注意します。すごく難しいのです、言葉は。
最近だと、プロダクトって言葉だけでもミスコミュニケーションが生じてしまいます。エンジニアチームではプロダクトと言うと作る物としての単位で捉えていますが、ビジネスチームからすると今まではプロダクトは売り物(パッケージ)というイメージがありました。特にドキュメントだと補足説明が出来ないので1人歩きしてしまうので、より注意が必要です。
今まで失敗したことがあるので、言葉一つ一つがどういう意味で、なぜその言葉を選んだのか、そしてそれが他の人にどういう印象として受け取られるのか、については気を付けています。

【挑戦】BtoBのビジネスだが、Bの先にいるCの人達を意識し社会全体に影響を及ぼす

Q今、挑戦していることはありますか?

みんながモチベーションを高めるために何ができるのかということに挑戦しています。ぼっちPdMからPdMチームにもなったので。

チームだからこそできる情報共有だったりとか、チームメンバー皆が更にモチベーション高く進んでいったり、まだ入社したばかりのPdM2人なのでパフォーマンスを上げられるようにするにはどうすればいいのと考えています。

Q5年後、どうなっていたいですか?

僕自身、自分がどうなりたいっていうのは全然ないのですが、会社がどうなっていたいというのは妄想します。

会社がすごくインパクトある存在になっていたらいいと思います。「データを人々のエネルギーに」というミッションですが、「人々の」っていうのがすごく重要と思っていて、私なりのミッションの所で、ビジネスとしてはBtoBだけどBの先にいるCの人達を意識するって話をしましたが、僕の解釈で「人々の」っていうのはそこも含めて意識を置いているのです。

ですので、BtoBのビジネスではありますが、社会全体を回しているという実感が持てる状態に少しでも近づけているといいなと思います。

【悩み】は優先度。決めないよりは間違った決め方の方がいい

QPdMとしての悩み、困りごとはある?

優先度はすごく悩みます。やるべきことは盛りだくさんにあって、その中で今どれをやるべきなのかとか、何が最短距離なのかっていうところです。
スタートアップの初期の状態って、本当に何にも整ってないのです。

その中で何がクリティカルなのかを常に探りますし、自分一人であればまだいいのですが、エンジニアの人達に動いてもらうところで、皆の行動、皆のパフォーマンスを左右しちゃうので、もう常に考えて、考え直して、プライオリティをつけていく、わからない中で、霧の中で模索して決めていく必要があります。

その中で重要だと思うことは、決めないよりは間違いでも意見を出す方が僕はプラスだと思っています。なんでもかんでも、出さないよりは良いと思っているので、まずは3割の完成度で出すことを意識しています。

それで最近気づいたのは3割のクオリティ低いバージョン1を出すと、エンジニア含めて色んな人が叩いてくれるのです。
エンジニアは大人しい人が多いので自分からグイグイ出してくれることは少ないのですが、何か出すと叩いてくれるのです、良い意味で。それで前に物事が進んでいくっていうのを見るのはすごく気持ちがいいと思いました。
ですので、僕は叩いてもらう為の材料を作ることが重要だと思っています。

ちなみに、3割と言うと聞こえが悪いのですが、自分の中で妄想できていると案外3割と思っていても、最後まで変わらなかったりすることも多いのです。
それは、どこまで妄想できているかっていうことだと思います。幸いユーザーの視点に立った妄想は自由にやらせてもらっているので、CEOではないんですけど作りたい価値は僕が意見を出させてもらっています。
その時にどれだけ今何もないものをイメージできているかってところが重要だと思うのです。なんか偉そうに言っていますが、1年半ずっと妄想し続けてようやく妄想が固まってきた気がしますね。

【聞きたい】みんなが楽しく仕事できるためにやっていることは

Q他のPdMの人に聞きたいこと、語ってほしいことはありますか?

チームを活性化させる方法とか、みんなが楽しく仕事できるため、自分が楽しく仕事できるためにどういうことをやっているのか気になります。
例えば、業務に関連するWeb記事を見つけてきては、エンジニアにシェアするとか。16Personalitiesを社内で共有したり。
いいものはパクりたいです。

マツバラからは、wevox values cardをご紹介させていただきました。
この記事をお読みの方でオススメの取り組みや施策をお持ちの方がいらっしゃれば、twitterなどでぜひ教えてください!

最後に

横井さんのお話はいかがでしたか?

プロダクトマネージャーとしてプロダクトのビジョンを作ったり、優先度を決めたり、プロダクトに向き合う上での視点はもちろんですが、PdMチーム向けたPM VALUESの作成や野球部のマネージャー視点でエンジニア、ビジネスサイドメンバーがワクワク働けるようなカルチャー・仕組みづくり、ストーリーテリングに取り組まれている点はとても参考になりましたね!

横井さんが所属する株式会社フライウィールとは?

横井さんが所属する株式会社フライウィールを少しだけご紹介させていただきます。

ミッションは?

「データを人々のエネルギーに」

データは人々が持つ価値を最大化する新しいエネルギーだと、私たちは考えています。
データは本来不必要な作業を効率化し、生産性を向上させ、より創造的な価値を創り出すための、まさに「エネルギー」になるのです。

私たち フライウィールは、企業や人々がデータや人工知能をより積極的に活用し、仕事や作業の効率化を加速する「はずみ車」になりたいと考えています。データを活用したソリューションを提供し、企業とともによりよい社会と未来に貢献していきます。

何をしているのか?

「眠っているデータでビジネスを再構築する」

フライウィールは、あなたの会社が持つマーケティングデータはもちろん、もう使うことがないと思っていた過去のデータやマーケティングでは活用しない業務系データなどの社内に眠っているデータを掘り起こし、最大限に活用することにより、あなたのお客様のLTV の最大化と、大切な社員やパートナーの業務効率の向上を実現します。

引用元:https://www.flywheel.jp/value/

詳細は、下記の企業ページをご覧ください。

株式会社フライウィール(FLYWHEEL)
お問い合わせ:https://www.flywheel.jp/contact/

PMノートではPdMインタビュー対象者を募集中!

ところで、横井さんから「PdM Voiceのインタビューを受けたPdMたちと集まって、PdM Voiceを見ながら話をしてみたい。」というご意見をいただいたので、落ち着いた頃にPdM Voiceオフ会を開催したいと思ってます!

横井さんをはじめ、PdM Voiceのインタビューを受けてくれたプロダクトマネージャーとお話したい方は今のうちに、PdMインタビューへご参加ください!笑

この記事をお読みのプロダクトマネージャーでインタビューさせていただける方は、下記のbosyuからお気軽にご連絡ください!

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プロダクトマネジメントができると、アイデアの創出からビジネスモデルを作り、デザインとテクノロジーを駆使してプロダクトを地球大のユーザーに届ける、そんなスケールの大きな仕事ができるようになります。こうしたスキルは人の生活、テクノロジーの変遷に強い普遍的なものです。これからの時代PMスキルを身につけることは自らの価値を大きく高めることに役立ちます。このコースはそんなプロダクトマネージャーの世界に入っていくための入門編です。

このコースの対象受講者:
・テクノロジーを使ってクリエイティブなことをしたいけど、どんな職種を目指せばいいかよくわからない。
・20〜40代のIT業界に勤めるビジネスプロフェッショナル。
・シリコンバレーの動向は常に気になる
・先々経営系のキャリアや起業など自分でビジネスを立ち上げてみたいと考えている。