「難しい課題こそやりたがれ」建機レンタル企業向けSaaSのPMが業界のDXに挑戦!

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今回は、SORABITO株式会社でプロダクト本部長 兼 プロダクトマネージャー(以降、PM)を務める遠藤 俊太朗さんに仕事内容やキャリア、マイルールなどを伺った。

遠藤さんは、NTTデータに新卒入社し、エンジニアや開発PjM(プロジェクトマネージャー)としてキャリアを積んだ後、リクルートではSUUMOのプロダクトマネジメントと新規事業開発に従事。SORABITO入社後はプロダクト開発組織の統括と並行して、建機レンタル企業向けSaaSのPMとして活躍されている。

旧態依然とした商慣行やワークスタイルが根強い業界に変革をもたらすということは簡単なことではない。そのような中にあっても遠藤さんは「みんながやりたがらない難しい課題を、誰よりもやりたいと思って取り組んでいる」と語り、解決してはまた次の課題に向き合い、プロダクトの成長を通して業界のDXに日々取り組んでいる。

この記事は100人100色のプロダクトマネージャーのリアルを知るためのインタビュー記事「PdM Voice」の連載第26回目の記事である。

建機レンタル業界向けSaaS事業を牽引するプロダクト本部長 兼 PM

PMノート編集部 マツバラ(以下、PMノート):まずはご自身の仕事について教えてください。

遠藤:SORABITO株式会社で、プロダクト企画・開発組織の統括と、建機レンタル業界を中心とした企業様向けSaaSのPMを務めております。

業界にいないとあまり馴染みのない分野ですが、一般的に建機というのは、工事現場などで目にする、ダンプカーのような重機や、現場の電気供給を行う発電機などの機材のことを指します。こうした建機の実に7割はレンタル業者が建設会社へ提供しているのですが、その商慣行から実務に至るまで、アナログな文化が色濃く残っています。そうした背景から、当社ではSaaSプロダクトを通して建機レンタル業界の業務効率化の支援に務めています。

一般的にプロダクトマネジメント組織というのは、プロダクトの企画構想や開発推進がメインかと思いますが、私が管掌しているプロダクト本部は、BizDev(事業開発)やCS(カスタマーサクセス)の機能も有するという点が大きな特徴となっています。現在のプロダクト本部を構成する社員数は20人程度ですが、開発を担うSIerや業務委託エンジニアを含めると60〜70名規模の体制となっており、そのうちPMを担うのは私を含め7名です。

PMノート:御社のサービスについて教えてください。

遠藤:まず、当社創業当時から”ALLSTOCKER”(オールストッカー)という、建機の売買プラットフォームを展開していましたが、ALLSTOCKERを通してレンタル業者との関係構築を図り、その実績を土台にして、2年前に”i-Rental”(アイレンタル)シリーズという建機レンタル業界のDXサービスの展開に注力しています。

PMノート:i-Rentalについて詳しく教えてください。

遠藤:大きく2つのサービス体系があり、1つはレンタル業者の業務効率化を図る”i-Rental受注管理”というサービス。もう1つは、建機をレンタルしたい建設会社向けの”i-Rental注文アプリ”というものがあります。従来、建機レンタルの申込・注文は電話やFAXを用いることが主流でしたが、それをアプリで完結するというのが注文アプリの大きな特徴となっています。

PMノート:現在扱っているプロダクトの課題は何でしょうか?

遠藤:まず挙げられることとしては、建機レンタルに関わる方のほぼ全ての業務が非効率となっているため、その解消が重要課題の1つです。

例えば、建機のメンテナンスを行うサービスマンの主たる業務に、点検業務というものがあります。サービスマンは建機が置いてある現場に赴き、200項目を超える規定項目をチェックし、それを全て紙に記録するという作業を行います。それを朝7時から夜7時ごろまで延々と行うのです。そして点検が終わったら、今度は事務所に戻ってExcelやレガシーな基幹システムに延々と登録するという作業が待っています。土日営業している業者さんも多いため、それを踏まえるとかなり辛い環境に置かれていることが分かります。

ですが、i-Rental受注管理を使えば、サービスマンはタブレットで点検項目をチェックすることで、事務所に戻ることなくその場で登録処理まで完了できるため、労働改善を図ることができます。こうした労働改善や業務効率化はサービスマンだけでなく他の職種にも求められているため、今後も取り組んでいきます。

そしてもう1つ重要なのが、資機材管理の効率化や適正な運用を図るということです。この問題、実は建設業界において、スーパーゼネコンから中小企業に至るまで、30年以上も前から提起されてきた問題なんです。私たちもこれまで100箇所以上の建設現場を回って現場監督さんたちにヒアリングを実施していて、その際に「この機材、何台借りていますか?」「その機材、どこに置いていますか?」という質問を投げかけたのですが、なんとほぼ全員が「分からない」と回答したんです。

この問題が長年解消されてこなかった原因として、建設会社とレンタル業者との間に立って管理するスキームが存在しなかったということが挙げられます。建設業者とレンタル業者間のパワーバランスは、前者が若干強くなるため、建設業者側が自前で資機材管理のシステムや仕組みを導入することが一般的でした。しかし一方で、レンタル業者の中には、その仕組みと連携できない所も多く存在していたことで、適切な資機材管理が困難となっていました。そこで、我々が中間に入ることで、機材の稼働状況や所在地の管理、さらには電話やFAXが一般的だった注文スタイルを変革することが出来たと自負しています。

PMノート:資機材管理を適正に行うことで生まれる効果とは何でしょうか。

遠藤:資機材管理のステップは大きく4つに分けられます。まず、今やっていることは、機械が何台動いているのかという管理までですが、次にやらなければならないと思っているのは、どの業者が使っているかの管理です。

我々の提供するアプリは建設会社のうち元請け業者向けのものなのですが、その建機を実際は下請け業者が扱っているのであれば、それも管理していくべきだと考えています。

さらに、その機械がいつからいつまで使われるのかという予約管理も必要だと考えています。これも現在はアナログでの管理が主流となっているため、アプリによってデジタル化を図りたいと考えています。

最後に、位置管理です。実は、工事現場で使用する発電機や小さな機械は、工事の過程で紛失されたり、所在不明になることがあり、それを探すためにコストがかかることが現場の課題となっています。例えば無線のビーコンなどを駆使して管理することで、Web上のUIで確認できるということが実現できると、こうした負が解消するのかなと考えております。

「会社の看板ではなく、自分の力で価値提供したい」との想いでSORABITOへ入社

PMノート:これまでのキャリアについて教えてください。

遠藤:新卒で大手SIerに入社し、エンジニアとしてキャリアをスタートさせましたが、プログラミングが肌に合わず、2年目くらいからPjMの役割を担うようになりました。当時は、大手電力会社などで、新規システム開発のプロジェクトマネジメントを担当していました。

その後、受託開発から自分でサービスを考えて作りたいという気持ちが次第に強くなり、圧倒的に成長できる環境を求めて、リクルートに転職しました。リクルートではSUUMOの賃貸メディアを担当しており、事業開発やプロダクトマネジメント業務を経験しました。業務を通して、不動産業界もアナログな業務が多いことに気づいたため、新規事業として不動産業者の業務効率化を図るSaaSを企画・開発しました。

リクルートで働いてみて、自分で企画・開発することのやりがいや面白さは充分感じていたのですが、だんだん自分が作った新規事業が本当にユーザーへ価値提供できているかが気になるようになりました。これはリクルートの良いところではあるのですが、リクルートの営業ってものすごく強いんですよ。だから次第に、「このプロダクトの価値は本当に自分の力で提供できているのか?」というふうに悶々と自問自答するようになりました。その気持ちが強くなったため、「会社の看板ではなく、自分の力でユーザーへの価値提供を実現したい」という気持ちでアーリーフェーズのスタートアップを探すようになりました。

転職活動では幾つかの会社を回ってみましたが、多くの企業が「自分たちが関わる業界のマーケットはこれだけ大きいんだ」という市場規模など定量的なアピールが目に付く中、SORABITOだけは「こういう課題にアプローチすることでみんなが喜んでくれる」というピュアな思いが全面に押し出されていたのを感じました。そうした会長・社長の思いに惹かれ、入社を決めました。

最初はいちプレイヤーとしてプロダクトマネジメントを担っていました。しかし、会社規模も小さく、良い意味で明確なロールも存在しないため、自ら事業開発や営業にもトライし、現在に至っています。

PMノート:元々建設業界・建機業界に馴染みがなかったかと思いますが、事業ドメインに対するギャップは感じませんでしたか?

遠藤:確かに、かねてから建機業界というものを知っていたわけではありません。ですが、この仕事を始めて、レンタル業者の支店にユーザーヒアリングを兼ねて出向くことで、段々とそこで働いている人たちに愛着が湧いてきたんです。SORABITOの良いところは、ユーザーと接触する機会が物凄く多いことです。その愛着を重ねることで、より一層この業界のいろんな課題を認識するようになったと感じています。

エンジニアリングのバックグラウンドでBizDevまで担うPM組織

PMノート:ご自身や組織のPMとしてのミッションについて教えてください。

遠藤:私自身は経営チームにも属しているため、プロダクトマネジメント業務に加え、会長・社長・CFO等に準ずる視座に立って、事業がどうやったら売れるのか、どうやったらコストを小さくできるのか、それを実現するための組織体制はどうあるべきか考えることを、自らのミッションだと認識しています。

自社のPMのミッションとしては、プロダクトの企画構想や開発推進だけでなく、BizDevにも力を入れている点が特徴的かと思います。経験豊富なメンバーが続々入社してくれていることもあり、最近、社長室内にBizDev専門の組織が発足したのですが、ビジネスアライアンスや顧客折衝業務に長けているメンバーは多いものの、建設やレンタル業界に精通しているわけではないため、どういう事業・戦略・プロダクトを形作っていくかについてはフォローが必要です。そのため、現在はPM組織がBizDevからプロダクト企画・開発ディレクションを一貫して行う体制が定着しています。

また、当社のプロダクトはまだ10→100の局面までグロースするに至っていないため、やはり事業開発から物事が始まるというのが現状です。

PMノート:ということは、プロダクトマネージャーとして採用される方は事BizDev領域の経験がある方が多いのでしょうか

遠藤:実はそんなことはありません。まず、私が採用を行う際は、SEやプログラマとしての下地や経験を有していて、開発PjMとしての経験を持っていることを必須要件としています。なぜなら、プロダクトマネジメントというのは1人でやることではなく、さまざまな職種とのコミュニケーションを取りながら推進する必要があり、そのスキルを発揮できることが当社のPMには必要不可欠だと考えているからです。

その上で、BizDevの経験があれば尚良いのですが、そこに関してはゼネラリストとしての要素が強いため、後からでもどうにでもなるのかなという印象です。実際、BizDevの部分は、開発者としての下地や経験を有した上で、入社してからアドオンしていく方が多いと思います。

PMノート:プロダクトマネジメントトライアングルを元に、具体的な業務範囲を教えてください。

遠藤:プロダクト本部の中に、プロダクトマネジメント、エンジニアリング、カスタマーサクセスの3組織が存在しており、経営に関与する立場としては、「顧客とビジネス」よりの視点でプロダクトに携わっております。一方、これまでのキャリアや、現在でもプロダクトマネジメントの実務に携わっているという観点では、「開発者とビジネス」の部分が最も強みであり、現在でも深く携わっている領域だと思います。

PMノート:プロダクトマネジメントで一番得意と思う領域や、PMとして自慢できる実績は何でしょうか?

遠藤:やはり0→1で事業を立ち上げるところは好きですし、得意だと思っています。

ビジネスモデルを構想する事業開発と、ビジネスモデルをもとにプロダクトを構想するプロダクトオーナーの役割を分けてしまうと、歪みが出てしまう印象を持っています。事業開発の人たちはプロダクトマネジメントが必ずしも得意とは言えず、彼らの観点からは、開発する上での現実味に欠けている要素が出てくることも少なくありません。一方でプロダクトマネージャーはプロダクトの企画・開発は得意としているけれど、どう売っていけば良いのか、であったり、それを戦略的にどういう順番で実現していくのかが弱い印象があります。

ですが、私はその両方を経験しているため、それらを両立して推進できる点に強みがあると感じています。実際にこの会社に入って携わったi-Rental注文アプリは、自分が0から立ち上げたプロダクトですので、自慢できる実績の1つだと思っています。

人がやりたがらないような難しい課題に挑戦し、夢中で取り組む

PMノート:PMとして大切にされているマイルールはありますか?

遠藤:みんながやりたがらない難しい課題を、誰よりもやりたいと思って取り組んでいると思います。

現在、管理職に就いていますが、難しい課題や誰しもがやりたがらない課題を率先してやらない上司に周りはついてこないと思いますし、難しい課題が解けた時は面白くて嬉しく思えると実感しています。

当然人間なので、その課題に取り組む前は、ネガティブに感じることはあります。しかし、実際に取り組んでみると、それが楽しくて夢中になっていく自分に気づき、自分はその状況に居ることが好きなんだろうなと感じています。

特に私が向き合っている業界というのは、DXはおろか、PCすら触りたくないという風潮があるため、それを変革していく難しさというのはとても感じます。システム開発の業界変遷をたどると、従来はSIerや受託開発が台頭し、「良いシステムが完成したらそれでおしまい」というのが一般的でしたが、現在では「良いシステムを作っても使ってもらわないと意味がない」という風潮にシフトしています。ですから、旧態依然とした業務が根強く残っている建設業界やレンタル業界と向き合っていると、使ってもらうという方向に仕向けていくのがより難しいなと感じています。

PMノート:いいチームを作るために意識していることはありますか?

遠藤:会社に依存しない関係性を重視しています。自分も元々は開発PjMやBizDevなどやりたいことをやらせてもらってきたのですが、他のメンバーにも、今やっている分野とは違うことをやりたいという考えがあると思います。当社ではミッション制による人事制度を設けてはいるものの、全業務のうち20〜30%はミッション以外の活動に充てさせて、今後やりたい分野というのが本当に面白いと思えるのか、ただの憧れに過ぎないのか、という機会を提供して次のキャリアを考えてもらうということにも取り組んでいます。そういうことがメンタリティの安定やキャリア形成につながっていくと考えています。

メンタリティの安定につながるという発想は、私がリクルートでキャリアを積んでいく中で実感してきました。リクルートに勤める人たちは、そういう考えの人間が多かったですし、スタートアップに集まってくる人たちも、会社に依存したくないという考え方や、自己成長やキャリア形成に対する意識が強いため、その発想に共感できるのではと思います。

PMノート:いい企画や打ち手を出すために意識していることはありますか?

遠藤:何よりも愚直にユーザーと向き合うことだと思います。圧倒的にヒアリングしたり、必要があればその現場でスタッフと一緒に働くという経験を通し、彼らが感じているペインを知るということが大事だと考えています。

ただ、ユーザーに向き合いすぎると、そのユーザーの課題の解決につながっても他のユーザーを救えなくなることもあるため、ある程度対極なスタンスは持つようにしています。自分達なりの「このプロダクトで何を解決したいのか」という意識を持って、徹底的にユーザーと向き合ってバランスをとっていくということは重要ではないかと考えています。

PMノート:配下のプロダクトマネージャーの企画力を高めるために育成において意識していることはありますか?

遠藤:上述した点はメンバーにも意識してもらいたいものの、口で言ってもなかなか理解が難しい要素であると感じています。なので、自分のロールよりも1個上のミッションを与えることで、視座を高めて、肌身を持って身につけてもらうような取り組みを意識しています。

他の業界・企業を知ることで自分自身の引き出しが増える

PMノート:プロダクトマネージャーにおすすめの本がありましたらご紹介お願いします!

遠藤:実はあまり本を読んでいなくて・・・。本ではなくて自分が普段習慣としていることを紹介します。

普段から、転職サービスから送られてくるスカウトに目を通しています。時々、自分が知らないスタートアップ企業からスカウトが届くのですが、それをきっかけにその企業のホームページを見にいくのが趣味になっています。

ホームページを見ると、色んな企業のミッション・バリューや解決したいことを知ることができ、いろんな業態はあれど世の中に散らばっている課題やそれに対応するソリューションが色々あるんだなということに気がつきます。我々PMって、普段は自分の目の前にあるプロダクトに向き合いすぎるがゆえに視野が狭くなりがちになると思うのですが、このように他業界・他企業のホームページや情報に触れることで、様々な取り組みや課題について知ることができ、自分自身の引き出しも増えるので、これは有意義な取り組みかなと思っています。

最後に

遠藤さんのお話はいかがでしたか?
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