今回は、ROBOT PAYMENTで請求業務を自動化するクラウドサービス「請求管理ロボ」のプロダクトマネージャーをされているたもりょうさん(@tamotamo97)にお話を伺いました。
たもりょうさんは、キャリアを陸上自衛隊からスタートし、ベトナムでの不動産関連事業の起業を経て、ROBOT PAYMENTに入社されエンジニア→プロジェクトマネージャー→プロダクトマネージャーとユニークなキャリアを歩まれてきました。現在も副業でcheeseという会社を経営されています。
自衛隊時代に培った変革力や考え方、プロダクトマネジメントロールがない会社にロールを新設したお話、cheeseを起業された経緯など、興味深いお話をたくさんしていただいています!
この記事は100人100色のプロダクトマネージャーのリアルを知るためのインタビュー記事「PdM Voice」の連載第20回目の記事です。
目次
請求業務を自動化するクラウドサービスのPM
Q. まずはご自身の仕事について教えてください。
株式会社ROBOT PAYMENTで請求業務を自動化するクラウドサービス「請求管理ロボ」のプロダクトマネージャーを担当しています。
ROBOT PAYMENTは、2000年に創業した会社でインターネット決済代行サービスを当時から提供してきました。
請求管理ロボは、約7年前にBtoBの事業を模索している中で、請求周りの業務に困っている企業が数多く存在している状況を踏まえ、自社で提供する決済サービスとのシームレスな連携と、多岐にわたる決済手段の提供を強みにし立ち上げました。その後、順調にビジネスは成長しており、これまでの導入企業は500社を超えています。
陸上自衛隊出身プロダクトマネージャーのキャリア
Q. どのようなキャリアパスでPMになったのでしょうか?
ファーストキャリアは陸上自衛隊でした。
15歳で陸上自衛隊少年工科学校に入学し、入学と合わせて自衛官生活がスタートしました。高校卒業後は通信科の3等陸曹として駐屯地の電話網、搬送網、陸上自衛隊独自のネットワークの維持管理・運営を行っていました。
7年間勤務しましたが、敷かれたレールの上を歩いているような人生に違和感を感じ始め、自分自身の力で色々チャレンジしてみたいという思いが強くなり、22歳で退官しました。
退官する前から友人と不動産の会社をやろうという計画をしていたため、日本で唯一の不動産学部がある大学に入学し、学びながらベトナムで不動産関連の会社を起業しました。
結果的にはうまくいかず、1年間で事業を畳み、大学2年生の時にインターンでROBOT PAYMENTでの勤務を始めました。
当初は主にシステムの要件定義と受入テストを担当していました。
大学卒業後、ROBOT PAYMENTに正社員として入社し、ソフトウェアエンジニアとして開発担当を2年、プロジェクトマネージャー兼プロダクトマネージャーを2年経験した後、2021年1月にプロダクトマネジメントロールを責任者として立ち上げ、プロダクトマネージャー専任となりました。
Q. プロダクトマネジメントロールを新設されるまでは、どのようにプロダクトがなされていたのでしょうか?また、どんなプロセスで新設されたのでしょうか?
これまでは、各システムの責任者がプロジェクトマネジメント(PjM)、エンジニアリングマネジメント(EM)とプロダクトマネジメント(PM)を兼務する形でした。
厳密にPjMとEMとPMの業務の棲み分けはなく、一言で「いいものを作る」ための全ての業務を担当するというポジションでした。
利用ユーザーも増え、システムも拡大し、エンジニアの人数も増加する一方で少ないPMでやり繰りするといった状況で、日々の開発のマネジメントに追われ、最も大切な中長期のプロダクト戦略や、ユーザー分析、リリース後検証等の時間に割く時間がほとんど無くなっているという状況でした。
システム責任者になった当時、まずその部分に大きな危機感を持ち、各ステークホルダーや開発チームのメンバーと課題解決に向けた検討を始めました。
社内の理解は得られたのでプロダクトマネージャーをすぐに採用しようとなりましたが、BtoBの請求業務領域のプロダクト自体がニッチなため、なかなか採用がうまく進みませんでした。
市場的にEM,PjMの方が採用できる確率が高いと考え、すでに数年請求業務領域のプロダクト開発の経験がある私がPMになる想定でEM,PjMの採用を進めました。
結果的に約1年半くらいかかりましたが、EM兼PjMの採用ができ、プロダクトマネージャーの役割やミッションを再定義するなどして、現在の状態に持っていくことが出来ました。
Q. 副業で経営されているcheeseという会社を起業された背景や事業内容などについて、お伺いできますでしょうか?
自身の結婚式準備で招待状をWebサイトで作ってゲストに送っていたのですが、その際に大手のホテルからこのWeb招待状を通して協業して事業をやりませんか?とお誘いいただいたことがきっかけでした。
個人では契約できないということで法人を設立しました。
紙で招待状を送って返信を手打ちでデータ入力することが手間だと感じていて、楽な方法ないかなということでサイトを作ったのですが、こんなことがきっかけで簡単に起業できるんだなと当時感じたことを覚えています。
そこからプロダクトもできて、実際にお客様に案内するラインナップに載せていただいて利用できる状態になっていたのですが、コロナ禍になってから事業はひとまず止めている状態となります。
あとcheeseとしては、勤怠管理SaaSの運営と技術コンサル、プロダクトマネジメントコンサルを主に活動しています。
ミッションはプロダクトの成功に責任を持つ
Q. 今の会社でのPMのミッションを教えてください。
1番は、請求管理ロボというプロダクトの成功です。
もう少し細かくいうと、ユーザーヒアリング、分析、リリース後効果測定等におけるPDCAを回すことや、チームコラボレーションを上手く機能させるための役割の定義、コミュニケーションの実践など、組織全体でプロダクト成功ができる状態を作ること、詰まるところだと、プロダクトが成功するためにやった方がいいこと全てをミッションと捉えています。
Q. プロダクトの成功はどのように測られていますか?また、成功の状態目標などはありますか?
NorthStarMetric(NSM)を定義しNSMに重要なInputMetricsを測定しています。NSMを達成した先に我々が達成したいプロダクトビジョン、事業ビジョンが達成できると考えており、それを達成した状態が成功の状態と考えています。
我々のプロダクトは、請求業務を自動化して、経理の方や請求業務担当者が業務を簡単に安全に完結できる状態、またもっと言うとその業務を一切しなくてよい状態をHappyな状態だと考えており、人間が行わなくてよい機械的な作業から解放されて自身のキャリアのことや別の業務に注力できるようになることを目指しています。
NSMは「請求業務にかかった時間」と定義しており、請求管理ロボを触っている時間をいかに短くするかを考えています。
Q. 社内でのNSMの合意形成は大変そうですが、どのような工夫をされていますか?
突発的にNSMはこうですと伝えても「結局それって売上につながるの?」といった話がよくあがると思います。
NSMだけにフォーカスせずに「ARPU」や「ChurnRate」など既存の重要指標に関する指標の定義も合わせて行い、説明をすると合意形成がしやすくなると思います。
Q. プロダクトマネジメントトライアングルを元に、具体的な業務範囲を教えてください。
プロダクトマネジメントトライアングルでいうと、「開発とユーザーを繋ぐ領域」と「開発とビジネスを繋ぐ領域」がメイン業務です。
一般的にPMMが担うようなマーケティングや販売戦略などビジネス領域は事業部長がメインで行っており、その領域は情報収集と整理を行ってプロダクトにおいて何を実現するかに重きを置いて活動しています。
チェンジエージェントとして会社に変革をもたらす
Q. プロダクトマネージャーとして誇れる実績や取り組みはありますか?
1つ目に、私としての実績というよりチームで解決できたことなのですが、PjMとPM兼務の状態である程度のPMFを達成したこと、とその体制から組織にPMロールを新設していったことです。
プロダクトマネージャーはプロダクト価値の最大化のために組織も含めて改革するといったスキルも求められると思いますが、幸運にも私の周りのメンバーは非常に理解があり体制の変更、制度の変更がしやすかったです。組織全体が100名弱といったそこまで大きくないところも要因の一つだとは思いますが。
思い返せばPjM兼PMの時から会社のValue改善・施策実行、エンジニア評価制度策定、リモートワーク、副業解禁、スクラム開発導入など非常に多くのことを自ら発案・実行し、実現してきました。
2つ目は、キャリアのパートでもお話した内容とも重なりますが、起業してプロダクト(サービス)を2つ開発し、1つは継続して運用できていることです。
起業を通じて、会計業務を行ったり、資金調達をしようと事業計画を作成したりとビジネスの側面の理解が深まりました。本業でも会社の様々なKPIや業績などの数字をより意識するようになり視座が引き上がったと感じています。
きっかけやチャンスがあれば、個人でも法人でもどちらでも良いので事業を行ってみることはおすすめできます。
Q.変えるのはパワーがかかると思いますが、その変革力はどのように身に付けられたのでしょうか?
当たり前のように動けていましたが、今思うと自衛隊時代にマインドが形成されたのかもしれません。
『自分だけ良いではダメで、常に連帯責任、常に自分よりも組織や周りのことを考えろ』と口酸っぱく言われていたので、周りに不遇な思いをしている人がいれば真っ先に手を差し伸べる、個を尊重しつつ全体最適を常に考慮するといったマインドが形成されたのだと思います。
自衛隊時代に形成された4つのマイルール
Q. 行動指針や大切にしているマイルールはありますか?
- 常に誠実であること
筋を通す、正直でいる、背伸びをしない
- 継続は力なり
「銀の弾丸」はない、毎日コツコツと地道に行動を重ねる - 知ったかぶりはしない
恥ずかしがらずに知らないわからないことはすぐ聞く
- 人間関係を大切に
人間関係は大事
Q. たもりょうさんの人となりが垣間見えるご回答だと感じましたが、例えば「常に誠実であること」について、過去の失敗から学ばれたものなのか、育ってきた環境などから形成されたものなのか?
これも自衛隊の頃に形成された気がします。
嘘をつくと大変なことになる(極端に言うと、仲間が死んでしまう)ので、嘘はつかずに事実だけ言うことや、発言に対して筋が通るように腹案(前もって心の中で考えておくこと)を持つことが身に付いたのだと思います。
いいチームをつくるために意識する5つのこと
Q. いいチームをつくるために取り組まれていることはありますか?
- 傾聴する
人の話をよく聞いて、本質に近づけるような質問や本人も自分も気付きがあるような質問をすることを意識しています。傾聴することで、本人も受け入れられていると感じてくれて、コミュニケーションが良くなると思っています。 - 透明性を意識する
隠れてコソコソやるとあとでしっぺ返しを食らうことがあると思っています。透明性と合わせていかに心理的安全性を作るかを意識しています。 - ワクワクを感じられる未来を伝える、仕事に楽しさを見出してもらえるようにする
仕事が楽しくないと毎日が楽しくないと思うので、働く上で楽しさを見出してもらえるようにすることや、ワクワクを感じてもらえるように未来の状態(プロダクトの未来も、組織の未来も)を伝えるようにしています。 - 働く環境を整える
リモートワークもそうですが、PC1つとっても働く環境のマイナスを消していくことも重要だと考えています。 - 明るく元気よく笑いを作る意識をする
ギャグセンスは自信ないですが、自分のことを笑ってもらえるくらいがちょうどいいと思っています。
企画のポイントは、ユーザーの声を聞くこと
Q. 質の高い企画をするために意識していることはありますか?
全てはユーザーありきなので、ユーザーの声を聞くことを一番重要視しています。
特に一次情報が大事なのでCSと一緒に機能のヒアリングをしたり、営業の商談に同行したり(今は録画を見たり)してユーザーのペインを探って企画の解像度を上げることを意識しています。
次の段階として、成功確率を高めるために、実現するためのアセットとして何があるのかの特定と、開発の見積り精度を高めることを意識しています。
プロダクトマネジメントの組織化に挑戦中
Q. 今、挑戦していることはありますか?
現在、プロダクトマネジメント組織の構築をしたところで、さらにプロダクトマネジメント領域を強く厚くするために、プロダクトマネージャーの採用を始めています。入社後にワークできる環境や仕組み作り、最終的には僕がいなくても組織として上手く機能するような仕組み化に挑戦しています。
興味が少しでも湧いてきた方、まずはカジュアル面談からお気軽にご応募ください。
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問題発見の本質を学ぶことができるオススメの本
Q. かけだしPMへのオススメの本はありますか?
かなり昔(1987年)の本なのですが、「問題とは何か」や「問題発見」の本質を学ぶことができるいい本です。
本の中では色々な問題が出てきて、解決されたらまた別の問題が出てきたり、解決したと思ったらユーザーが求めているものとは異なっていたといった内容が書かれており、気付きがあります。
プロダクトマネジメントは「問題定義」から始まると思っているので、その点で非常に参考になると思います。
僕のプロダクトマネージャーキャリアにおける親のような存在で、雛鳥の時にめちゃくちゃ読んでました。
「ライト、ついてますか」で根本的な考え方を学んで、「プロダクトマネージャーの教科書」でプロダクトマネジメントに関する具体的な手法を体系的に学ぶとバランスが良いと思います。
かけだしPMへのメッセージ
Q. この記事を読んでいるかけだしPMへ一言お願いします!
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オススメのポイントは、
- 壁がなく、上下もなく、経験やスキルも関係なくフラットにプロダクトマネジメントについて会話ができる
- 活動していると情報が自然に入ってくる
- 自分1人で勉強するのは大変だけど、周りのみんなとなら頑張れる
最後に
たもりょうさんのお話はいかがでしたか?
感想や得られた気付き、気になったフレーズがありましたら、「#PMノート」を付けてツイートしてみてください〜!
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