外資系IT企業のジレンマと「顧客の声」を目指すPM

外資系IT企業のジレンマと「顧客の声」 を目指すPM

今回は、セールスフォース・ドットコムのPMであるKazuki Hayakawaさん(@kzkHykw1991)にお話を伺いました。

Hayakawaさんは、外資系IT企業の日本法人におけるPM特有の難しさの中で、日本市場の顧客に寄り添いながら「お客様の声になること」を実践し、日本市場に最適化されたプロダクトの価値を最大化して利用するお客様のビジネスの成功に貢献しようとされています。

ビジネスサイドとプロダクトサイド、お客様の声の翻訳者でいることを大切にされており、人と人とのコミュニケーションを重視してあえて労力をかけることなど参考になりますので、ぜひご覧ください!

この記事は100人100色のプロダクトマネージャーのリアルを知るためのインタビュー記事「PdM Voice」の連載第11回目の記事です。

セールスフォース・ドットコム日本法人のPM

Q. まずはご自身の仕事について教えてください。

セールスフォース・ドットコムの日本法人でPMをしております。セールスフォースに新卒で入って5年目になったところですが、最初はプリセールスエンジニアという技術営業をしており、3年目からAI製品のPMM(プロダクトマーケティングマネージャー)になりました。その後、PMになりまして2年弱ぐらいAIの製品を中心にセールスフォースの複数のプロダクトを担当しています。

個人的には、バンド活動やポッドキャスト配信、小さなサービス開発チームなど様々な活動を行っています。

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【ミッション】日本のお客様に寄り添いながらプロダクトを届ける

Q. 今の会社でのPMのミッションを教えてください。

PMのミッションは多岐に渡るのですが、メインのミッションは日本市場に最適化された製品を、日本のお客様にしっかり届けるというところです。

それをするために何をするかというと、一つは、正しく正確な情報を本社から取ってきて、それを日本の社内、お客様、パートナー様、社外に届けるというところです。情報だけではなくて、しっかりと製品を使ってもらえるように、アダプションであるとか、アウェアネスも含めて。

また、新機能が出てくる際にパイロットとして新規のお客様にβ版という形で使っていただくための支援や、GA (General Availability、正規版)になった後はお客様の要望やVOCをしっかりとキャッチアップして、本社のチームにフィードバックしてロードマップやプライオリティーの中に上手く入れてもらうように交渉していきます。

Q. 定量な指標としてはどんなものがあるんですか?

定量的なところで言うと、セールスフォースでは「V2MOM」という仕組みを使っています。これは何かと言うと、OKRみたいなものなんですけど、「Vision」「Value」「Method」「Obstacles」「Measurement」の頭文字を取って、「V2MOM」と言っているんですが、その中の「Measurement」のところが今の定量的なKPIになります。

私の場合は、まず大きくあるのが、新製品を今年日本でどのくらいローンチできたかというのが一番大きなものです。
その次が、機能のバグのフィックスと、フィードバックできたVOCの数、どのぐらいローカリゼーションのバグをなくせたのか(ローカリゼーションの観点で改善にどのくらい貢献できたのか)というものがプロダクト観点のものです。

もう一つあるのは、意外とこれは他のPMはやってないと思いますが、βプログラムにお客様をどのくらい参画してもらって成功に導けたのかであるとか、新機能は使い始めが大変なので、全く新しいAI製品のオンボーディングを何社のお客様にどれだけ提供して、その結果どのくらいのお客様が活用できたのかというところを数値で取っていたりします。
そこから派生して、PMMと共同の KPI という観点だと、カスタマーストーリー、事例をいかに作れるのかというところの一端を担っています。

多くなってしまいましたが、単純なデイリーアクティブユーザーやマンスリーアクティブユーザーみたいな、一般的なプロダクトの指標も見ています。

【業務】外資系企業の日本法人のPMは調整が大変?

Q. プロダクトマネジメントトライアングルを元に、具体的な業務範囲を教えてください。

外資系IT企業の日本法人のPMには共通するかと思いますが、最も関与していないのは一番上の開発者に関する領域です。

プロダクトマネジメント・トライアングルの解釈が会社によって違うと思いますが、開発者のところをエンジニアリングチームとすると、日本のPMがアメリカ本社のエンジニアチームに何か直接働きかけることはないです。
エンジニアリングチームの調整、例えば、デイリーのスタンズアップに参加して、エンジニアたちのリソースとかを見ながら、ロードマップのどこまでの機能、ユーザーストーリーを作ることができるのかみたいなところはやらないです。
また、プロダクトの仕様についても、最終的な責任は本社のPMが持っているので、そこに影響を与えることはできますが、そこを責任もって自分で意思決定をするということはないです。

このプロダクトマネジメント・トライアングルは、社内のエンジニアと社内のビジネスサイドの営業、顧客(カスタマーやお客様)を前提としていると思いますが、外資系IT企業の日本のPMの場合、「本社」が入ってくるんですね。

私がいつもトライアングルで表す時は、一番上に「本社開発チーム」がいて、右下に「日本のビジネス」、左下に「日本のお客様」という風に位置付けて解釈をしています

その前提で、トライアングルの一番上の本社開発チームとは定期的にミーティングをしながら製品や機能のプロダクト仕様について情報連携をしたり、日本のお客様にUXのテストをするために本社のデザイナーと一緒に日本のお客様とミーティングをしたりであるとか、対開発者を対本社PMとして取り組んでいます

Q. ロードマップやプロダクト仕様へ影響を与えることはできているというお話でしたが、どのように取り組まれているのでしょうか?

2つのプロセスで、ロードマップやプロダクト仕様に影響を与えているという形になります。

まず1つは、VOCを管理する仕組みが社内にあるので、PM自身や社内の製品が分かる人がVOCを入力して、そこで日本のVOCを管理しています。ビジネスインパクトと製品的なインパクトでプライオリティを付けながら、本社のPMに定期的にフィードバックするというのが基本的なプロセスです。

2つ目は、結局、PMも人間なのでコミュニケーションがすごく重要になります。アメリカ本社のPMの人たちとは、ウィークリーとか、バイウィークリーとかで定期的にミーティングをしながら情報をまず取って、その上で個人的と言うと変ですけど、オンラインですがface to faceで「今こういう悩みを持ってるお客様さんがこれだけいて、ここをこうできないかな?」とか、「こういう風に変えた方がいいと思うんだけど」みたいなフィードバックを直接して、一緒に検討していく形をとっています。

Q. 日本のVOCと全世界から出てくるものとで調整されると考えると、実際に採用してもらうというのはかなり難易度が高そうですね。 

まさに仰る通りで、やはりグローバルから出てくるVOCの中でいかに優先度を上げて入れてもらうかっていうところで言うと、単純なビジネスインパクトも重要でこれだけのお客様のお金が影響をするというのもあります。

しかし、結局そこも、人と人との信頼関係というのはすごくあって、いかに私と本社のPMとの関係性が良くなるのか、お互いにメリットを感じてくれる関係性になるというのが、結構大事です。本社のPMとしては、より製品が使われることがKPIになるので、そのために日本のお客様にも、しっかりと使っていただくようにしていかないといけないのです。

AI製品を日本の多くのお客様に使ってもらうことで、日本の比重が高くなり、声がより重くなって、グローバルにも本社にも反映されやすくなるので、そういう意味では単純なネゴシエーションやディスカッションで頑張って説き伏せるというよりは、日々のリレーションシップと日本のマーケットをより高めていくことが重要になります

Q. グローバルで見た時に日本のシェアをいかに上げていくかがとても重要ですね。

よく言いますけど、日本は他の世界各地とは文化が全然違いますし、私の担当しているAI製品は自然言語処理とかそういう言語依存が大きな製品も多いです。
特に日本語は母国語で話す人が少ないことからデータも少なくて、わざわざそこにどれだけ研究開発を行うのかということで、グローバルなビジネス的な判断が下されてしまうので、特にAI製品は大変ですが、少しずつ日本のマーケットを盛り上げていくことが、結果的に繋がると考えています。

【実績】AI製品の利用率をアメリカに次いで世界で2番目に押し上げた

Q. プロダクトマネージャーとしての自慢できる実績はありますか?

一般的に自慢できるかわからないですが、弊社としては、AI製品の利用率において、日本が世界でアメリカに次いで2番目になりました
先ほどお話した、日本からのVOCの重要性を上げるために、日本でいかにAI製品を盛り上げるかというところに繋がりますが、社内への普及活動や毎月のようにお客様を呼んでワークショップを開催、お客様の課題解決をしたり、イベントに登壇したりとやっていたことが功を奏しました。

Q. 素晴らしい結果だと思いますが、取り組まれる際のモチベーションの源泉やビジョンがあったのでしょうか?

正直、当時は明確なビジョンがあった訳ではありませんでした。
ワークショップをやったり、イベントに頻繁に出るというアプローチは、いわゆるマスアプローチではないので、あまりスケールしないマーケティング手法です。ワークショップをやったら20〜30人のお客様に来ていただけますが、マーケティングのROIで見るとすごく低くなってしまいます。
普通だったらもっとスケールするようなマス的なアプローチを効率的に取るのがマーケティングアプローチだと思いますが、そうしなかったぐらい手探りでやっていました
AI製品を誰も分からない状況の中で、ちゃんと知ってもらうための活動を地道にやっていたら結果に繋がったという形です。

しかし、今振り返ると、私が入社した年にそのAI製品が生まれたので社歴として同い年で、そのAI製品は絶対に素晴らしいものだと思ったので、それを育てたいという気持ちが根底にはあったと思います。

よくPMに求められる姿として、「プロダクトをとことん愛する」というのがあると思いますが、そこが一番大きかったと思います。

Q. 社内への普及活動を積極的にされたことで営業メンバーにも伝播していって、それが結果に繋がってそうですね。

営業やプリセールスの方がAI製品を理解してくれないと、そもそも提案の土俵にすら乗せてくれないので、しっかりと説明していくことでちゃんと提案にも入れてもらい、結果的にお客様に使っていただけたと思っています。

なぜAIの製品はそれだけ社内への普及活動に力を入れなければならなかったか。
今まで弊社が出していたSaaSのプロダクトは、導入すれば顧客情報を一元化できて効率的に営業活動ができるので、売り上げが伸びたり生産性が上がるものや、コールセンター向けのプロダクトは導入することで、問い合わせの対応件数が多くなって、オペレーターのコストも抑えながら、オペレータの生産性を上げて、より対応先のお客様の満足度を上げることができるというもので、製品と期待される結果が1対1で紐付いていました。

AI製品はそこが特殊で、今までのITソリューションと違って「どう使いますか?」というところから入るのです。
これ当たり前ですが意外と落とし穴で、そこを飛ばして考えちゃうと「なんで自社はAI製品を使うんだっけ」とか、「なんのためにこのAIに投資したんだっけ」という話になって、今までやっていたプロジェクトがダメになってしまうということがよくあります。

だからこそ、「AI製品はこう使えるんですよ」という使い方まで上手く提示しながら社内で普及活動を行ったり、お客様にもワークショップを行うことで、「じゃあ、こうやって使ってみよう」という具体的なイメージを持ってもらうことが必要なのです。

使い方の分からないドリルを渡しても結局使われずに終わってしまうので、ちゃんと「こういう穴を開ける時に、こういう釘を刺す時に、このドリルをこう使ってください」というところまで丁寧にやらなければいけないのがAI製品の特長だと思っていて、そのような活動に注力していました。

Q. プロダクトマネージャーとしての強みや得意なことはありますか?

私はスキルとしての強みというよりは、心がけてることに近いんですが、お客様から直接声を聞くことにすごく重きを置いています。

ある程度の大きな会社のPMだと、ユーザーインタビューやお客様のVOCを取ろうと言った時に、アンケートなどマスアプローチをして、特定のお客様からちょっとインタビューして終わりになることが多いと思います。
私が本社PMとやっているのは、日本のお客様がAI製品を使い始める前のところから、使ってうまく活用できるところまでをずっと並走して支援しながらお客様のニーズや製品に対するフィードバックを得ることに取り組んでいます。いちPMがお客様の製品活用を0から10までを支援することはあまりないと思いますが、得られるものがとても大きいと思っていて力を入れています。

PMMだった時に行っていたAI製品のワークショップで直接知り合ったお客様に、新しい製品に関する話を聞きに行ったりしているのですが、PMMを経験してPMになって良かったと思っています。マーケットのことやお客様のこと、社内のこと、営業のこと、サポートのことを深く知った上でプロダクトの開発面に向き合うことができています

【キャリア】AI領域の専門性を高めPMMとなり、国内初のPMチームを立ち上げた

Q. どのようなキャリアパスでPMになったのでしょう?

新卒でセールスフォースの日本法人に入社したのが2016年になるんですが、ちょうどその年に弊社が初めての AI製品「Einstein」を発表しました。
会社に入りたてではあったのですが、大学院の時に研究所の研究アシスタントをしており、その時に自然言語処理や機械学習、推薦システム、そのあたりのテクノロジーを少し学んでいたのでAIに興味がありました。
そこからAI製品やビジネスにおけるAIについて色々と自分で調べていく中で社内でAIに詳しい新卒がいるという認知度が上がりました。また、ちょうどその次の年に、AI製品の認定資格がアメリカ本社から出たので、それを取得し日本で初めてのAI製品のスペシャリストとなりました

それがきっかけとなり、その時はまだプリセールスエンジニアだったのですが、AI製品のPMMというポジションを新たに作っていただいて、そこに異動しました
当時は、まだ AI がバズワード的に流行っていて「結局どこまでできるのか」とか、「ディープラーニングってなんなんだっけ」とか、「人の仕事を奪う」とか、逆に「ビジネスではAIはほぼ使えない」みたいなこと言われていました。
そのため、AI製品のメッセージングをちゃんとしなきゃいけない、日本市場にマーケットさせなきゃいけないというニーズがあったので、このAI製品のPMMになりました

そこから2年ぐらいPMMとして働いていたのですが、これは外資系のIT企業あるあるで本社に製品開発チームがいるとなると、日本をはじめヨーロッパやアジア諸国というのは、あくまでも営業、マーケティング、サポートに注力することでローカルでの販売を強化することが多いのです。そのため、プロダクトが詳しくてプロダクトの開発が分かる人というのはあまりいませんでした
その状況を改善するために、当時の上司と私の二人で日本で初めてPMチームを作り、PMになりました。そこからチームを作り、今は様々なプロダクトを担当しています。

Q. PM チーム立ち上げにはどんな背景があったのでしょうか?

外資系のIT企業は開発チームを各ローカルの地域に持たないことが多いので、プリセールスエンジニアやサポートのテクニカルなことが分かる人間などが、プロダクトの技術的な部分などを今までカバーしてくれていました。

しかし、彼らはそこがメインのミッションではないので、最新の製品がローンチされるという話が突然アメリカから出て来たり、急に製品の機能が変更になるとか、いわゆるロードマップの情報を適切に取得して、そこをハンドリングしながら日本におけるプロダクトのライフサイクルを管理して、時にはローンチをしなかったり遅らせたり、適切にローンチするために製品をローカライゼーションしたり、日本のお客様のVOCをちゃんと本社のロードマップに届けるとか、そういったことが今までできていませんでした

日本のお客様のVOCを本社に届ける仕組みはあるのですが、よりそこをエンハンスさせようということでPMチームを作りました。

【マイルール】ビジネスとプロダクト、お客様の声の翻訳者でいること

Q. 行動指針や大切にしているマイルールはありますか?

営業やプリセールスエンジニアの方から「こういうお客様の要望がある」といった感じで、PMは社内からリクエストを受けることが多いと思いますが、その際のコミュニケーションのしかたはすごく心掛けています

まずはリクエストの意図や背景をしっかりと聞くことがすごく大事だと思います。
と言うのも、やはり営業のビジネスサイドとプロダクトの人間は話す言語が違うのです。
そこの言語が違うと、話が噛み合わなくなり問題になってしまうので、そこを上手く行き来できる翻訳者でなければいけないと思っており、プロダクトとビジネスとの言語の翻訳者になるような立ち振る舞い方をしています。これはプロダクトマネージャーの教科書などでも言われていますよね。

営業さんから「この製品をお客様が購入を検討していて、将来のロードマップについて情報を知りたいんだけど教えてくれない?」というリクエストが来ることがよくあります。
ここで言う「ロードマップ」は「この機能のここの画面のこの部分がこうなって、パフォーマンスがこう変わって、こういう機能が使えるようになって」という機能のディテールのロードマップじゃないことが大半で、「その製品に投資をして、そこに乗っかってもらうための大きなビジョンを知りたい」ということが多いのです。

逆に、今度はプロダクトサイドが営業サイドによく言うのが、「この製品は将来の機能なので、まだ仕様とかはっきりできていないですし、詳細には言えません」というフレーズです。営業サイドとしては、「そうじゃなくて、もっと大まかにここを知りたいんだけど」ということがあると思います。プロダクトの言語で話しちゃうと、営業さんから「なんだこいつ、全く情報開示しないで、なんか冷たいやつだな」とか、「システマチックな回答しかしてこなくて、頼ってもダメだな」というふうに思われてしまいかねません。
こんな時は、元々私はプリセールスとして営業側にいたので、ビジネスの言語でプロダクトの状況や将来のことを伝えるようにしています

そのように、聞く時と話す時、ちゃんとビジネスとプロダクトの言語を上手く通訳できる翻訳者になるように日々心掛けています。

Q. プリセールスを経験されているからこそ、ビジネス側の気持ちとか何を求めているかが分かるということですね?

まさに、プリセールスの経験があったからこそだと思います。もし大学院の研究所からの流れでエンジニアリングで入っていたりしたら、ビジネスサイドとハレーションが起きてしまっていたと思うので、良かったのかなと思います。

Q. ビジョンとかもっと抽象的なものでも、他に大切にされていることがあれば教えて頂けますか?

得意なことや強みのところでお話した内容と重複するのですが、「Voice of customer」をすごく意識していて、「Be the voice of the customer(お客様の声になること)」っていうのが自分のミッションステートメントであり、モットーとしてあります。何がどう転んでも、あくまでも製品というのはお客様の声を反映したものであるということを意識するようにしています。

Q. お客様の声も大小、粒度も様々あると思うのですが、その中で何が本質的な課題であるとか、重み付けや優先度をつける中で意識していることはありますか?

プロダクトマネージャーの教科書的なことでよく言われますが、「お客様から製品と機能の要望を直接聞いたらダメ」というのは意識しています
例えば、「今あなたが使っているこの製品に、どういう機能があったら使いたいと思いますか?」という質問は絶対NGですよね。
お客様がパッと思い付いた「こういう機能が欲しい」という回答が出てきてしまったら、その機能が解決すべき課題が明らかにならないので。

先程、ビジネスとプロダクトの言語が違うというお話をしたと思いますが、お客様の言語とプロダクトの人間が使う言語も違うと思います。

そのため、ヒアリングする時も機能とか使い方みたいな表面の「What」の部分を聞いてしまうとお客様は「What」で返してしまうので、「なんでそうなんでしたっけ?」という「Why」で質問することを意識しないといけません。
その上で、「Why」の部分は機能とは直接紐付いていないので、プロダクトの言語に翻訳することでお客様の要望となります。

また、「What」じゃなくて「Why」で聞いていくことで、自然とそのニーズの優先度とか、本来の課題の部分が見えてくるので、それを上手く優先順位付けしているのかなと思います。

【チームづくり】①役割分担を明確に②コミュニケーションにはあえて労力をかける

Q. 業務上関わる人たちといいチームをつくるために取り組まれていることはありますか?

PMMと一番多く一緒に働くことが多いのですが、そことの間で意識しているのは、役割分担を明確にすることで、ロール&レスポンシビリティをしっかりと定義することです。

どこまでがPMが責任を持つのか、どこからがPMMが責任を持つかっていうところを互いに意思疎通していないと、時に押し付け合いになり、時にお見合いしてボールを落としてしまう形になってしまうので、チーム作りとして大事だと思っています。

Q. 具体的にどのように役割分担の明確化をされているのでしょうか?

組織が変わるタイミングで、PMとPMMの役割分担の再定義を行う必要があって、例えばプロダクトのライフサイクルによってPMとPMMがどう関わっていくのかというところを定義すると良いと思います。

まずは一番最初、プロダクトがまだローンチする前の段階は、PMが責任を持ちながらローンチに向けてローカライゼーションであるとか、情報の精査をしていきます。その中で得た情報は、ちゃんとPMMに共有して、彼らがまずは社内のみで展開できるようにしていきます。

次に、ローンチするタイミングで、PMが責任を持って製品面でローンチが上手くいくようにすること、PMMとしてはそれをマーケティングしたり、PRを出したり、記者会見をやったりだとか、そういうところにロールを持ちます。もちろん、その場ではPMは製品の説明責任やデモンストレーションを担います。

その後は、ローンチされた後の製品を上手く売っていくフェーズなので、PMMがボールを持ってちゃんとマーケットさせる。もちろんPMは、そこで技術的なプロダクトロードマップの部分をサポートして、社内の営業やマーケティングチームに製品の情報武装をさせる、といったようなことを行います。

Q. 他のチームとのチームビルディングやリレーションシップの作り方で意識していることはありますか?

プリセールスエンジニアと関わることが多いですが、プリセールスもどちらかと言うと営業サイドのチームなので、ビジネスの言語でちゃんと情報を伝えてあげることと、情報に透明性をもってコミュニケーションをすることがすごく大事だと思っています

営業的にはまだ言えないプロダクトのロードマップの話であったり、製品の裏側の話など、明かせない情報はあるとは思いますが、できるだけお伝えをするようにしています。
伝えられない場合は、なぜ伝えられないのか、こういう状況だから伝えられないということを、しっかりと透明性をもってコミュニケーションすることが、PMにとってすごく大事だと考えています。

Q. 営業サイドに対して透明性をもって情報開示することは結構労力がかかるなと思っているのですが、どんな捉え方をされていますか?また、なにか工夫されていることはありますか?

確かに労力がかかるというふうに思ってはいますが、これも結局は人と人とのコミュニケーションなのかなと考えています。

少し前までは、効率化しようと考えている自分がいて、例えば、パイロットテストにご協力いただけるお客様を見つけたいといった時に、営業サイドとかに「この30社は、とある製品の利用率が高い会社なので、担当の営業さんはぜひパイロットのプログラムをお客様にご紹介いただき、製品開発に協力してください。」みたいな感じで伝えていました。
しかし、営業さんにとってはパイロットのプログラムや開発に貢献することはあまりメリットがないので、なかなか協力してくれる方は少ないんですね

そのため、そういう伝え方ではなくて、個社ごとのお客様を担当している営業さんに直接「このお客様にパイロットを使っていただくことで、お客様の活用促進や成功を支援させていただきたいです。」という形でコミュニケーションしていくことが大切だと考え直しました。
そこがある意味、透明性というか信頼されるような形でしていくことが大事なところだと思っていて、労力はかかるのですがそれだけメリットがあると思っています。PMはプロダクトやテクノロジーに長けている人が多いので、より効率的にとか考えがちですが、意外と人との泥臭い部分というかコミュニケーションにあえて労力をかけた方が、結果的に良いアウトプットが出るのではないかと最近は思っています。 

効率化した方がいいところはしつつ、 お客様の声を聞くことや営業さんの声を聞くことなどは労力をあえてかけていくというふうにしています。

【挑戦】他の会社のPMと積極的にコミュニケーションする

Q. 今、挑戦していることはありますか?

個人的にはPMになってまだ2年ちょっとでまだまだPM暦が浅いので、他の会社のPMのお話やプロダクトの運用に関する悩みなど色々と聞きたいと思っていて、今年は他の会社のPMの方と積極的にコミュニケーションをしていこうと思っています
先日第1回 PM Meetup by pmconfで登壇したり、今回のインタビューを受けさせていただいたのもそのような目的です。
他にもtwitterのDMでPMとして働いている人の相談を受け付けていて、何名かの方に少しでもアドバイスになるようなことがあればと思って会話させていただいたりなど行っています。

PMは会社によって定義が違いますし、孤独になりがちじゃないですか。会社の中だけでやっているとガラパゴス化してしまうので、他のPMと上手くコミュニケーションしたいと思います。

【悩み】理想のPM像を目指して視野を広げること

Q. PMとしての悩みはありますか?

うちの会社の本社のやり方は身に付いてきてはいますが、日本で他の会社のPMがどうしているのかとか、ガラパゴス化にならないようにちゃんと視野を広げていかなければならないことが課題や悩みかなと思います。

PMとしてこれからもキャリアを伸ばしていきたいと思う中で、プロダクトマネジメント・トライアングルの開発者を対本社PMと捉えているところを、開発者やエンジニアリングチームと直接向かい合えるようなキャリアに進んでいきたいと思っています。
私の中で今のPMは本当のPMの姿ではないと思っているので、本来のPMになることが今後のキャリアですかね。

最後に

Hayakawaさん@kzkHykw1991)のお話はいかがでしたか?

外資系IT企業の日本法人におけるPM特有の難しさを感じましたが、その中でも、日本市場の顧客に寄り添いながら「お客様の声になること」を実践し、日本市場に最適化されたプロダクトの価値を最大化して利用するお客様のビジネスの成功に貢献しようとされている姿がとても素敵でしたね。

また、ビジネスサイドとプロダクトサイド、お客様の声の翻訳者でいることを大切にされており、人と人とのコミュニケーションを重視してあえて労力をかけることなど参考になることが多かったかと思います。

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