プロダクト、ユーザー、メンバーに真摯に向き合うRettyのPMから学ぶ!PM組織の作り方、育て方

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今回は、実名口コミグルメサービスRettyを運営するRetty株式会社でプロダクトマネージャー(以下、PM)を務める野口大貴さん(@roki_n_)に仕事内容やキャリア、マイルールなどを伺った。

彼は、新卒でSpeeeに入社し、SEOコンサルティングやWebディレクターとしての経験を積んだ。その後、Rettyに入社し、マネジメントを経験した後、執行役員(VPoP)となり、組織改善を推進された。現在はVPoPを退任され、シニアマネージャーとして引き続きプロダクトを改善する役割を担っている。

Rettyの理想のPM像である「Rettyの未来に向かって、突破できる人」を構成するPMスキル(ディスカバリー力など5つ)や プロダクトマネージャー組織を作ってきたマネジメントの工夫、1→10でプロダクトを成長させてきた経験など、参考になること間違いなし!

この記事は100人100色のプロダクトマネージャーのリアルを知るためのインタビュー記事「PdM Voice」の連載第39回目の記事である。

RettyのPM組織を築きあげたプロダクトマネージャー

PMノート マツバラ(以下、PMノート):ご自身の仕事内容について教えてください。

野口:実名口コミグルメサービスを運営しているRetty株式会社におりまして、参画して9年目です。Rettyはユーザーさんが実名で口コミを投稿するという特徴があり、信頼性の高いグルメ情報を届けることを強みとしているサービスです。ビジネスとしては、飲食店様に向けて集客支援やネット予約機能を提供している他、食に関するデータを活用した広告・データビジネス事業を行っています。

Rettyのサービスは、スマホ・ソーシャルメディアの普及とともにユーザー数が伸びていきました。今はコロナの影響もあり少し落ち込んでおりますが、復活に向けて色々と仕込み中です。

私がRettyに参画した当時はプロダクトマネージャーという職種はなく、Webディレクターを担っていました。当時はメンバーが少なかったこともあり、新卒採用の責任者を兼務している状態でした。

2、3年である程度、採用の体制を構築してからはWebディレクターに専念し、その中で、私がリードしてプロダクトマネージャーという職種の導入も行いました。その後、執行役員(VPoP)として、プロダクトの責任者も経験しました。

昨年末に執行役員を退任。今はシニアマネージャーという形で、引き続きプロダクトマネジメントの現場でプロダクトの改善に取り組んでいます。

文系出身WebディレクターからRettyの執行役員に

PMノート:これまでのキャリアについて教えてください。

野口:

社目(新卒入社):株式会社Speee

就職活動では、「Webサービスを自分で生み出す」 「新しい事業を作る」 といった仕事に興味を持ちました。Webの力を用いて世の中を便利にし、課題を解決すること。それこそが自分にとって、社会に一番価値を提供できるのではないかという思いを抱き、ベンチャー企業を中心に就活を進めていました。
そんな中で、「新規事業を積極的に行い、ホームランビジネスを生み出そう」という会社の姿勢が自分のやりたいことにマッチしていると感じ、株式会社Speeeに入社しました。

入社当初は、文学部出身かつシステムやWebの知識が何も無い状態で、SEOコンサルティング部門の分析担当に配属されました。クライアント企業のエンジニアや場合によっては社長さん相手にサイトの問題点を指摘し、改善策を提案。しかしながら当時は知識・経験不足で、表面的で至らない提案をして、怒られることも度々ありました。ただ多様なビジネスモデルに触れる機会が多く、クライアント様に育てていただいた学び多き時間でした。また、会社でプログラミングの勉強会を受ける機会があったのも、有難かったですね。

他にも、兼務で東南アジア向けのHRメディアのディレクターをしたり、新規事業を企画するプロジェクトにアサインしていただいたり、色々な経験を積みました。そこで初めてWebディレクターとしての仕事を経験することができ、その後のPMとしてのキャリア形成に繋がったと感じています。

二社目:スマホのチケットアプリを手掛けている会社

Speeeで2年半ほど働いた後に、「to C プロダクトを大きくグロースさせられる人材になりたい。そのための力をつけたい。」という課題感を抱き、二社目にスマホのチケットアプリを手掛けている会社に転職をしました。

その会社では、マーケティングとディレクションを担当していました。入社したタイミングはちょうど資金調達が完了して、会社として非常に伸びている時期でした。しかし、そこからの成長は思うように進まず、資金的な不安や組織面での様々な問題に直面しました。そのタイミングで大学からの友人に声をかけてもらい、Rettyに転職しました。

三社目:Retty株式会社

Rettyに転職した時点で、新卒3年目で3社目になってました。
当時は「プロダクトは俺が伸ばすんだ!」あるいは「組織が悪い状態の時に自分が立て直すんだ!」と鼻息が荒い割に、何も知らない・できない状態でした。「グロースすると言っても本音はどこから手をつけていいかわからない」と、自分の無力さをすごく実感していたので、3社目で何とか結果を出したいと意気込んで、転職した事を思い出します。

Rettyに転職したタイミングが、ちょうど利用者数が増えてきており、非常に盛り上がっている時期でした。
勢いのある会社に入社し、Webチームにジョイン。すぐにSEOやコンバージョン改善で結果を出すことができました。そのおかげもあってかマネージャーを任され、初めてチームのマネジメントを経験しました。プロダクトだけではなく、開発組織の事も考えるように。

PMノート:執行役員になられた経緯を教えてください。

野口:初めのうちは順調でしたが、入社して3年程経った頃から「人は増えているのに開発が進まない。どうしても開発スピードが上がらず、うまくいかない」状態に陥りました。
例えば、エンジニアやデザイナーとPM(当時社内ではプランナーという名称で存在した)が上手く連携できない、組織内の人の相性や、開発プロセス自体の問題など。そもそもPMの職種定義がなされていなかったので、「PMって何やる人なんですか」という声までありました。

当時、私はWebの開発チームのマネージャーとして、PMとエンジニアを含む10人程度の組織を担当していました。その後、エンジニアの組織はVPoE付けに、プロダクトの企画系はVPoP付けにするために役割を分け、私のチームはPMとCS、デザイナーを束ねる20名〜25名程度の組織になりました。
開発チームは5チーム程ありましたが、各々のチームが個別で、ユーザーストーリーや戦略を考えていました。そのため各チームで連動性のないロードマップが乱立し、各々悪気はないのですが、工数の貸し借りのような問題が発生していました。結果的に各チーム小さなことしかやれないということが多く、このままではプロダクトとして大きな施策が打てず、価値提供の質が下がってしまうと危機感を持ってました。

そんな中で、「PMJP」というPM向けのSlackコミュニティのオフ会で、Reproさんの登壇内容に触発され、『大規模スクラムをやりたいです』と社内で発信。当時のVPoEからは『それちょうどやろうと思ってんだよ』と一言。ちょっと拍子抜けでしたが、そんなエピソードを始め、VPoEや当時の経営メンバーと変えていきたい組織像の方向性や感覚が合致していたことから、執行役員に推薦してもらえたと思ってます。私は昔から自分の領域以外にも首を突っ込むタイプだったのも良かったのかもしれません。

こうして執行役員VPoPとして、開発組織を立て直すべく、プロダクトマネージャー組織の再構築を行いました。

PMのミッションは、ビジョン実現に向けて突破できる人

PMノート:所属組織におけるPMのミッションは何でしょうか?

野口:Rettyにおける理想のPMは、「Rettyの未来に向かって、突破できる人」ですね。「食というドメインに精通し、Rettyのビジョンを自分ごと化し、Rettyの未来を描いていく上で、現状との差分を埋めるために、当事者意識を持って突破できる人物」と定義しています。

これはスキル的に高い/低い、どんなスキルに長けているかも大事なことではありますが、それ以上に突破力・当事者意識を最も重要なマインドセットとし、このような定義としています。

プロダクトの崇高な未来を描く。これも大事ですが、絵に描いた餅ではいけないなと。描いた未来をいかに実現し、食の領域で実際に価値提供できるか。どんな状況においても、当事者意識を持って課題を解決まで持っていくこと、いわゆる 「なんとかする力」 を重要視しています。

我々の 「PMスキル」 は、上記の5つで定義しています。
PMの役割は、主に課題から施策を立案し、デザイナーやエンジニアにパスするポジションであり、社内としては 「ディスカバリー」と 「デリバリー」でプロセスを分けています。

「ディスカバリー」プロセスでは、図の上2つがあたり、課題を明確にするために仮説検証を行い、その上で、何をやるか/何をやめるか、その優先順位を考えます。
シニアのプロダクトマネージャーであれば、ロードマップまで決めていく。そういったプロセスの中で、この「ディスカバリー力」と「意思決定」ができる人を大事にしてます。

「デリバリー」では、エンジニアとデザイナーと伴走して、できることは何でもボールを取りに行くスタンスで 「推進して行く力」。また、リリースの時のユーザー対応や、障害対応なども含めて 「守る力」を持っている事。

Rettyでは特に上の4つを大切にしています。エンジニアリング力やUI・グラフィックとして表現できるスキルは、そうしたバックグラウンドのPMが現状多くないこともあり、そこまで求めていません。とはいえ上4つを加速させるために伸ばすべく大事なスパイスとして捉えており、5つ目のスキル「英知」の中に包含しています。

このPMスキルの上位者をプロダクトマネージャー(PM)とし、担当領域のロードマップや優先順位を決定する役割としています。比較的ディスカバリーの比重が高いロールになります。

PM系職種のエントリーレベルとしてはプランナーから始まり、どちらかといえばプロジェクトマネージャーの役割を担います。業務の中でデリバリーの役割の比重が高く、プロダクトマネージャーの決めた優先順位や開発方針を踏まえて、ユーザーストーリーをエンジニアやデザイナーと伴走してリリースまで持っていきます。エントリーレベルのメンバー以外にも、「推進力」「最後の砦」といったデリバリーに関わる能力が高く得意なメンバーはプランナーの役割を組織の中で担ってくれています。

PMノート:ご説明頂いたPMミッション・スキルは、RettyのPM内で共通項としている考え方ですか?

野口:組織に根付いていますね。前述のスキルと共に、PMの職種を明確に定義したのが3年ほど前です。それ以来、半期に一度の評価タイミングで、スキルフィードバックを行うようにしています。

また開発プロセスの中でも従来はデリバリー一辺倒で、顧客の課題を発見しにいくディスカバリーのプロセスにそもそも残念ながら時間を割けていませんでした。しかし、現在では積極的にディスカバリーに注力し、各人がプロダクトディスカバリーのスキルの研鑽にも積極的に取り組んでいると思います。

Rettyのパートナーシップを支え、ビジネスと顧客を繋ぐ

PMノート:野口さんの具体的な業務内容をプロダクトマネジメントトライアングルに沿って教えてください。

野口:私の強みは、顧客と開発者を繋ぐ領域のデータ分析やビジネスと顧客を繋ぐ領域のマーケティング・パートナーシップ・ビジネスディベロップメント、そしてビジネスと開発者を繋ぐ領域の社内外調整・プロジェクトマネジメントです。
逆に元々デザイナーやエンジニアの経験はないため、デザインとカスタマー/技術サポートはやっていません。

好きな分野を挙げるとすると一つはアジャイル開発ですね。大規模スクラムのプロダクトオーナーをやっていたので、アジャイルの考え方やプロダクトオーナーとしてのふるまい、優先順位決めやロードマップについては好んで学び、実践しています。

もう一つは分析における、UXリサーチ。こちらもアジャイルと同様に非常に好きな領域です。ユーザーインタビューや定性調査を用いた仮説検証について、組織としてもインストールし、型化できるよう取り組んできました。

PMノート:マーケティング・パートナーシップ・ビジネスディベロップメントの領域で、どのような取り組みをされているか教えてください。

野口:新卒時代の経験と親和性があることもあり、得意領域です。外部との開発プロジェクト責任者を何度か経験してきました。提携先の外部企業とのアライアンスや予約ポイント連携、Go To Eatプロジェクトなど。抽象的な取り組みを開発方針に落とし込み、プロジェクトを主導する役割を担うことが多かったです。デジタルマーケティング部のPMとして、SEO・Webプロモーション施策及びそれに関連する開発を推進しています。

PMノート:PMとして得意な領域を教えてください。

野口:プロダクトオーナーとして、意思決定すること。具体的には、「優先順位を決める」ことや「プロダクトのゴールを決める」ことだと思っています。

プロダクトの戦略や、機能開発において、たくさんの選択肢がある中で『何をやるか?』『何をやめるか?』取捨選択し、また『なぜそれが今一番重要なのか?』『なぜこれをやらないのか?』『どういった未来を創っていきたいのか?』と優先順位と意味付けをしていく作業をプロダクトオーナーがリードする必要があります。そして、その内容を経営陣に対しても、開発メンバーに対しても確実に説明 する責任がプロダクトオーナーにはあります。

プロダクトの成功のために、どんな開発方針・組織にするかを決めること、そしてそれを具現化するための体制構築を行い、ルールを整えて、可視化していくことが得意です。また、プロダクトオーナーの振る舞いや、優先順位や、ロードマップを決めていくところは、他の会社さんから相談を受けることもあります。『開発を速く進めるためには、やらないことを決めましょう』、『優先順位を合意するためには、同じ絵をイメージすることが大事。まず定性目標を言語化しましょう』といったアドバイスを行っています。

2つのマネジメントスキル『戦略目標を達成に導くこと』『Peopleマネジメント』

PMノート:『12PMコンピテンシー』を用いて、野口さんのスキルや強みについて掘り下げていきたいと思います。特に高くスコアリングされているのはInfluencing Peopleとお見受けしましたが、どのような経験を通してスキル開発されてきたのか教えてください。

野口:Influencing Peopleは得意な領域だと思います。マネージャーという立場も執行役員もやったので、自分の中で、意思決定の方法として成功/失敗事例を持つことができています。
『この施策はトップダウンで進めるとうまくいかない』『この方針は、こういう巻き込み方をすれば、ビジネス側も含めてうまく動くだろう』といったイメージを湧かせて意思決定をしています。

あとはメンバーや、マネージャーの育成もやってきたので、マネジメントも得意な領域です。プロダクトマネジメント以外でも、個人の活動としてEVeM社のマネージメントスクールの認定トレーナーとしての活動もしています。
トレーナーとしての活動を通じて、これまでの経験を言語化して再現性を持たせることができています。特にEVeMのマネジメントの型における戦略的に目標を達成していくプロセスでの学びは、自分のプロダクトマネジメントにもプラスになっていると感じます。

PMノート:話が逸れてしまうかもしれないですが、人や組織のマネジメントとプロダクトマネジメントは別物だと思ってますが、野口さんはどう考えられてますか?

野口:基本的には、分けたほうがいいと思います。
マネジメントにもいろんな要素がありますが、二つ挙げるとすると、一つは戦略目標を達成に導くこと、もう一つはピープルマネジメントだと思っています。

一つ目の戦略目標といった観点では、戦略を立てて、目標を達成していくためのマネジメントは、プロダクトマネジメントにかなり近いと思っています。プロダクトの成功と事業の成功は密接に関わるので、シニアクラスのPMなら避けては通れない領域なのではないでしょうか。

もう一つのピープルマネジメント。
これは切り出せる領域で、シニアクラスのPMのマストの要件ではないと思います。もちろん同じ職種のPMからフィードバックを受けてピープルマネジメントされることが理想です。
しかしスキル違いのメンバーに成果を出してもらうためのマネジメントをすることは他の職種でもあり得ることなので、別職種の上司がPMをマネジメントしても問題ないと思います。スキルのフィードバックができなくても、成果を出してもらうためのオーダーとサポートはできるはずなので。

同時にピープルマネジメントとプロダクトマネジメントは使う筋肉が違うと思うので、その意味でもエースPMがプロダクトマネジメントに集中するために、分けられると理想かなと思います。

とはいえ現状ではRettyでもシニアのPMがピープルマネジメントをしているのが実情で、プランナーとデザイナーメンバーをマネジメントするのはPMの役割になっています。それぞれのプロダクトマネジメントとピープルマネジメントはやはり異なるものなので、本当は分けてプロダクトに専念する役割をおきたいと思ってますが、そこまで人がいないのが実情です。

PMノート:他の項目においても、全般的に高いレベルにあると思うんですが、これまでスキル開発してきた経験を教えてください。

野口:Customer Insight のVoCにおける、ユーザビリティテストや調査についてはここ数年注力して学んできました。

元々会社のカルチャーもあり、ユーザーインタビューはやっていました。コロナ前はクライアントの居酒屋さんの許可をもらって、夜の時間帯にほろ酔いのお客さんからどんな探し方をしてそのお店に辿り着いたかをゲリラユーザーインタビューしたこともありました。

ただ我流でやっていたこともあり、型をインストールすることにしました。
当時は、各チーム単発でユーザーインタビューを行っており、全社的にまとまったナレッジにはならず、同じようなリサーチが重複して行われるケースがありました。また、そもそもユーザーインタビューのちゃんとしたやり方が分かっておらず、結論を決めつけてやっていることも少なくありませんでした。

書籍や勉強会に加えて、外部の有識者に壁打ちやコンサルをお願いするなど、UXリサーチの専門家やアンケートが得意な方、プロダクトのターゲット戦略策定が得意な方など、非常にお世話になりました。
コンサルの方からのアドバイスを受けて、ユーザーインタビュー自体の方法やインタビューでの学びの整理・まとめ方、そこから仮説へいかにフィードバックしてユーザーストーリーに落としていくかなど、ナレッジを一通り学んで、型化してチームに落としていきました。

私自身、外部から学んでいくのが好きですし、開発チームも皆学ぶ意欲が高いメンバーが多いので『外部から取り入れ、社内勉強会でさらに学びを深め、共有していく』カルチャーが社内に根付いています。

飲食に対する解像度を高め、質の高い問いを設定する

PMノート:現在、野口さんが向き合っているプロダクトの課題は何でしょうか。また、どのように解決しようとしているのか、お伺いできる範囲で教えていてください。

野口:コロナ禍はようやく落ち着いてきたと感じますが、この2、3年で飲食業界を取り巻く環境は激変したと思います。店舗での営業が出来ない時期もあり、テイクアウト、デリバリーが急激に普及してきました。また、ユーザーさんが使うプロダクトも多様化してきています。

この中で我々は、Rettyをもっと多くの飲食店さんにも使ってもらいたいと思いますし、ユーザーハッピーなお店探しをユーザーさんに提供していきたいと思ってますが、激変した環境下では、課題に対する仮説検証であったり、その打ち手は、立体的な設計で、かつ、高い解像度がないとうまくいかないと思っています。

例えば、『お店ページのUI改善でユーザーさんに使われやすい体験を作ろう』とか『お店が困ってるから集客機能を作ろう』そういう点で考えた施策ではなく、この施策をやると飲食店さんもユーザーさんも両方ハッピーになって、さらに独自の価値を提供できる。といった面で考える必要があると思っています。

一問一答ではなく、一つの施策で二つ三つの問いを解消できる。そういった施策を打っていく為に、飲食に対する「解像度の高さ」と、より「質の高い問いを設定する力」 が求められるなと思っています。

これは、我々PMだけではなく、エンジニアや、デザイナー、ビジネスサイドの方も含めて、大きくやり方を変えて、組織全体で取り組む必要があると思っています。

マイルールは、真摯に向き合うこと

PMノート:ご自身で、大切にしているマイルールや、行動指針を教えてください。

野口:『真摯に向き合う』ことです。
Rettyは、ユーザーさんや飲食店さんに育てていただいてるサービスだと思ってます。だからこそ、ユーザーインタビューは今も昔も大事にしています。またオフ会ではユーザーさんからプロダクトへの意見や感想を直に受け、その熱量を感じることができます。このようなフィードバックに対して真摯に向き合って、プロダクトを作っていく事が極めて重要だと思ってます。

さらに、私自身や、一緒に仕事をしているメンバー、社長も含めて、組織は人と人との信頼で回っていて、その信頼からプロダクトもできていると思っています。この信頼を作っていく上では、人によって「善悪」や、「こうありたい」といった考え方は違っていて当然で、「正しいこと」、「悪いこと」 は分からない。なので、色んなものに真摯に向き合って取り組んでいく必要があると思っています。

ユーザーのハッピーに繋げていく、ひたむきにみんなの頑張りを形にする。、そういう生き方・仕事の仕方をしていきたいと思ってます。

PMノート:ユーザーの方を招いてのオフ会は頻繁に実施されているのですか?

野口:年に一回は、100名ほどのユーザーさんを呼んで開催してます。去年の秋にも全国からグルメマニアの人たちが集まるイベントを開催しました。

私も最初は「食」には全く詳しくなかったんですけど、ユーザーさんに『私は牡蠣好きです』とか言うと、ラーメンのトップユーザーが『じゃあ、ラーメンと牡蠣だったらこの店美味しい』って教えてくれたり、ユーザーさんの知識はすごいですね。

また、オフ会ではユーザーさん同士のコミニュケーションがあって、『Rettyはこういう世界観でやってるから、ネガティブな投稿はしちゃダメなんだよ』『本当にいいお店をオススメするために使うのがRettyだから、こうやって盛り上げていこうよ』など、私達スタッフではなくて、ユーザーさんが語ってくれることもありました。本当にありがたいですね。

『この熱量があるから、自分たちのサービスは成り立ってるんだな』と感じていて、だからこそ、ユーザーさんにちゃんと向き合いたいと思っていて、この熱量をハッピーに変えて、もっともっと増やして行きたいと思ってやっています。

いいチームのポイントは「なぜやるか?」の共通認識を持っていること

PMノート:いいチームを作るために工夫されていることを教えてください。

野口:『なぜやるのか?』をみんなで共通認識として持つことですね。
『この機能の実装は◯◯のためにやる』といった理由だけではなく、そのバックグラウンドになる背景知識として、『ユーザーさんがどういうペインを持っているか?』『マーケットがどういう状況か?』『我々のビジネスはどうなっていて理想がどうなのか?』を深く知る必要があります。

その際に、デザイナーとエンジニア、大企業出身中途とスタートアップ新卒でそれぞれバックグラウンドが違うように、各々の専門分野で微妙に解像度の違いが生じがちですよね。「Why」がずれれば、「What」もずれるし「How」もずれる。『なぜやるのか?』の「Why」を全員の共通認識を完全に一致させることは難しいかもしれないけど、そこに少しでも近づけていくべきかなと。

そのためには、キックオフや、勉強会をするとか、ユーザーインタビューをみんなで一緒に見るとか、チーム全員で同じ事を学んで、同じ事を感じる事ができれば、そこから生み出されるアウトプットはよりいい物になると思っています。

デリバリーのために手を動かしていく前に、解像度を極限まで高めていく準備作業に時間を割けると良いですね。すぐ手を動かして開発したくなるものだと思いますが、急がば回れかなと。

PMノート:一か月や二か月の即席のプロジェクトチームで動く場合に、素早くチーム力を上げる方法があれば教えてください。

野口:即席チームはめっちゃ難しいですね。何か開発するとか、何か解決策を練るみたいな時に前提となる知識や、そこで重要なポイントがあれば、それについてみんなで学ぶことが重要だと思っています。

開発施策が決まっているのであれば、ユーザーインタビューをみんなで見るとか、マーケットリサーチをみんなで見る。施策や機能の企画であれば、他社のプロダクトを一緒に触ってみるといった、ライブで一緒に感じる時間は、非常に重要だと思っています。

また、私達が携わったGo To Eatのプロジェクトでいうと『不安なことをただみんなで話しましょう』といった会を開いた事もあります。これはPMが仕様について説明するのではなくて、『業務プロセスを構築する上で、今感じている不安をみんなで洗いざらい出そう』といった会でした。皆が不安に感じている曖昧なことから重要なポイントを見つけ出し整理して行って、解像度を上げて設計に落としていく。そんな意図で行いました。

一方向で、誰かが何かを説明するよりも、一緒に手を動かしながら学ぶ・考える・話し合う会を通じて、解像度をみんなで高めていくことが大事だと思います。

いい企画をつくるために、課題を立体的に捉える

PMノート:質の高い企画や、課題に対しての良い打ち手を生み出すために工夫されていることを教えてください。

野口:「筋の良い企画」になるかは、「課題を立体的に捉える」ことが肝になると思ってます。

昔と、今でも「筋の良い企画」というものが明らかに変わってきてるなと。何年か前であれば『どれだけプロダクトを触っているか?』とか『どれだけ課題やユーザーのペインが分かってるか?』そういったポイントだけで良かったと思います。しかし今の市場環境は非常に厳しく、プロダクトの栄枯盛衰も激しい。そんな現在では、プロダクトやユーザーに詳しいことももちろん引き続き重要ですが、それだけでは足りないと思っています。

課題を表面的に捉えるのではなく『どういう因果で物事が動いているか?』『どこがボトルネックになっているのか?』『どういう順番で進めていけば一番ベストなのか?』などの質問から深堀りして解像度を高めることで、課題を立体的に捉えていく必要があると考えています。

また、スピードだけではなくタイミングが重要かなと。最適なタイミングを捉えて、スピーディーにデリバリーしていくことが、プロダクトのヒットの前提条件になってきているように思います。

野口さんのおすすめ本

PMノート:PM向けのオススメの本を教えてください。

野口:皆さんに人気な本であれば、この辺りの本がおすすめです。

プロダクトマネジメント ―ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける

解像度を上げる――曖昧な思考を明晰にする『深さ・広さ・構造・時間』の4視点と行動法

他には、戦略系でいえば、「良い戦略、悪い戦略」がオススメです。
2012年発行の比較的古い本ですが、戦略を立てるためにどんな動きをしていくべきか、そもそも戦略の善し悪しについてなど、プロダクトや事業の戦略を策定・実行していく役割であるPMにとって学び多き本になっています。

1兆ドルコーチ シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え」も好きで、プロダクトを作っていく上でのリーダーシップやマインドセットが書かれており、面白いですね。

また、スクラム、アジャイル系が好きなので、その中のオススメは「スクラム実践者が知るべき97のこと」です。
ジェームズ・コプリエン氏を始め、スクラムやプロダクトオーナーの著名人による考え方や経験談が97個まとめられた本です。『プロダクトマネジメントの隙間に気をつけろ』『あなたのチームはチームとして機能しているのか』『デジタルツールは有害だ。それよりもアナログにスクラムを進めていったほうがいい』など、はっと気づかされることがたくさん載っていて、具体的なケーススタディとして学べて面白いと思います。

最後に

野口さんのお話はいかがでしたか?

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