ビジョン実現に向けて組織を繋ぐマネーフォワード MEのPMが重視する「人生のビジョンとの合致」

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今回は、株式会社マネーフォワードで家計簿アプリ「マネーフォワード ME」のプロダクトマネージャー(以下、PM)を務める植竹広佑さん(@pon3takepon)に仕事内容やキャリア、マイルールなどを伺った。

植竹さんは、ナビタイムに未経験エンジニアとして入社し、「乗り換えアプリ」や「NAVITIME」のPM、ウォーキング+ライフログのサービスを提供する新規のヘルスケア事業責任者などを歴任した後に、リクルートでスタディサプリのPMを経て、現在に至る。

組織横断で向かう方向を揃えることやそこまでの歩みの実現可能性を引き上げることを得意とされており、ビジョンや叶えたい未来を前提にどうアプローチしていくべきかをフラットに考えるスタンスはぜひ見習いたい。また、個人として感じている社会課題や人生のビジョンをベースに転職時の企業や事業内容、プロダクト選びをされているお話はPMのキャリアを考える上で、参考になることも多いのではないだろうか?

この記事は100人100色のプロダクトマネージャーのリアルを知るためのインタビュー記事「PdM Voice」の連載第24回目の記事である。

プロダクトに対する熱量は人生のビジョンとの合致で決まる

Q.プロダクトに対する熱量や解決したいと設定している課題の大きさを決めるものは何だと思われますか?

全く無の状態からプロダクトに熱量を出すことは難しいと感じており、「自分の人生のビジョン(もしくは原体験)との合致」が必要だと思っています。

今は、それがちょうどハマったな、という感覚を持つことができています。

Q. 担当プロダクトの課題は何ですか?また、どのように解決しようとしていますか?

お金は、センシティブなもの、かつ、日本の文化的に積極的に勉強したり教育をするということが避けられてきた領域だと思います。
そのため、ユーザーにおけるリテラシーの差がものすごいあると感じています。

いまいちそれを埋めていくようなサービス・機能を提供できていないと感じており、それが大きな課題だと感じています。

リテラシーの高い方は収集された資産や支払いのデータを見て、感覚的にここは使い過ぎだからここを削減しようと自然にできるのですが、そうじゃない方はまずい状態なのかどうなのかが分からず、まずいと思っても何をしたら良いか分からずアクションには繋がらないという現状であり、それを打破しないといけないと考えています。

そのためには、ユーザーにどう気付かせるか、どう学ばせるかが重要だと思っています。

お金のことは、あまり他人に言われたくないと思うので、サービス的なコミュニケーションとしては『ダメだよ』ではなく、自分で興味を持って自分で何かをしたいと思う状態を作り、その先に何をするが明確にある状態を用意していく必要があります。

つまり、ちゃんとユーザーのストーリーを作ってあげることが重要です。

Q. その課題はマネーフォワード入社前から感じられていたのでしょうか?

前職では教育関連を扱っていましたが、教育格差が生まれる理由は地域性とお金の2つでした。
「スタディサプリ」は、インターネットで地域性を解消し、お金は格安の月額1000円くらいで提供しお小遣いでなんとかなる、この2点で教育に革命を起こしていくというビジョンで立ち上げられました。

私は、元々、世の中の幸せを増やすことや、個人が自己実現できる世界=自己肯定感が高くやりたいことができ、自信を持って取り組むことができる世界をつくっていきたいと思っていて、ずっと教育が大事だと思っていました。

そのような思いでやっていたのですが、それでもやはり教育って難しいなと、鶏が先か卵が先かじゃないですが、お金がないと教育も受けられない、教育の選択肢が狭まってしまうというのはやはりあって、ビジネスで教育を提供していると越えられない壁があることなども痛感しました。

そんなタイミングで、私生活での状況の変化などがありました。父親が小さな会社を経営していたのですが、突然倒れて、整理したらはじめて知るようなお金関連の話がいくつかあって、母親も私も大慌てするということがありました。

なかなか普段からそのようなお金に関する会話を家族でもすることは難しく、それが整理されているのも本人の頭の中だけにあるようなことはあるよなと、お金に関する難しさを感じました

それまでは言語化できていなかったのですが、友人から声をかけられてマネーフォワード社の面談での会話などを通して思いを馳せていく中で、自分が感じていたモヤモヤはそこだったんだなと見えてきたり、色々繋がってきて、さらに情報をインプットして言語化できる状態に至りました。

マネーフォワード MEの1人PMとして、個人のお金の見える化を推進

Q. 現在の仕事について教えてください。

現在、株式会社マネーフォワードにて、C向けの家計簿アプリ「マネーフォワード ME」(アプリ・Web)のプロダクトマネージャーをしています。

「マネーフォワード ME」は弊社のミッションである『お金を前へ。人生をもっと前へ。』を実現するために、弊社としての初期プロダクトになります。

個人のお金を見える化してより良くするためのアクションが取れるようにすることで、最終的にお金の悩みや不安が無くなり、自分らしく生きられたり、新しい挑戦ができるようになる状態を目指して作っています。

具体的には、銀行やクレジットカードなどお金の状態を自動的に取得して、一つの情報にまとめ、どのような資産があって、どういうところにお金を支払っているのか、食費が多いのか、光熱費が多いのかなど、一目でわかるように表示して可視化することをメインの機能として提供しています。

なお、私が入社するまでの約1年弱の間、「マネーフォワード ME」はPMがいない状態だったため、現在1人PMとしてやっています

Q. PdMのミッションは何ですか?

「マネーフォワード ME」が最終的に成し遂げたい世界とそれの実現ステップ(数値面も含めて)を描き、実現していくことです。(ビジョン、ロードマップ、KGI/KPIの設定、推進)

toCのサブスクのプロダクトのため、P/Lで売上を上げていくところを見ています。
事業責任者はカンパニーの役員が担っており、責任分散されています。

Q. プロダクトマネジメントトライアングルを元に、具体的な業務範囲を教えてください。

メインの領域としては、開発とビジネスの間の領域です。
プロダクト仕様やデザインを中心に、若干プロジェクトマネジメントをやっています。

また、まだ入社して日が浅いので自身でSQLを書いてデータ取得を行うことはしていないですが、既存の集計データやデータ抽出のお願いをしながらデータ分析を行なっています。

その他に、カスタマーの声を拾ってアクションをしていったり、トラブルの際のユーザー対応の方針決めなどを行なっています。

Q. 「マネーフォワードME」が1人PMの体制ということに驚いているのですが、どのような体制でプロダクトを開発・運営されているのでしょうか?

マネーフォワードはカンパニー制をとっており、私はtoC向けのカンパニーに所属しています。担当役員の配下に本部があり、そこに属している状態となります。

その本部内に、マーケティング組織やサービス開発を行う組織、広告営業の組織、ユーザーサポートの組織などが存在するのですが、各組織の担当者と連携して「マネーフォワード ME」というプロダクトを見ている状態です。

なお、「マネーフォワード ME」以外に新規のサービス開発も行なっており、例えば「固定費を削減して家計改善する際に、何を対象にどういうアクションを行なったら良いか分からない」という課題に対して、マネーフォワード固定費の見直しを利用すると電気代の削減にもなりマネーフォワードの有料会員プランもついてくるとか、保険の見直しを行うアクションを提案するような新規プロダクト開発も行なっています。それらは事業開発組織内にそれぞれプロダクトマネージャーが存在する形となります。

Q. 立ち位置的に複数部署の取りまとめやステークホルダーとのコミュニケーションは大変ではないでしょうか?

所属しているカンパニー全体で100名未満の規模感とまだそれほど組織が大きくないことと、弊社の良い点ですが、プロダクトのビジョンや成し遂げたいことなどがメンバー全体でブレずに同じ方向を見れているので、コミュニケーションがしやすいと感じています。

Q. 植竹さんが「マネーフォワード ME」のPMをとして入られたことで、従来の体制と比較してどのようなポジティブな変化がありましたか?

『サービスやプロダクトをこういう状態にしたいという思いはあるが、どう動くのが最善なのか分からない』を改善できたと思います。

当初、開発組織的には近視眼的に言われるものをそのまま対応してしまったり、マルチタスクで適切な優先順位が付けられていないような不健全な状況がありました。また、マーケ組織的にはあるべきの未来はありつつも、現実的な開発スピードや短期の数値もあるため、一旦暫定的にこういうことやりましょうといった感じで、上手く噛み合っていない状況がありました。

『プロダクトとして結局どこに向かっているのか?』『我々がいきたいところはあの場所だけど、本当にそのままやればちゃんとそこに辿り着けるのか?』ということが、少しずつ組織横断で目線を合わせられているように感じます。

Q. どのPMタイプ(Core PM / Growth PM / Platform PM / Innovation PM)に該当しますか?

ユーザーのコア価値にフォーカスすることが多く、Core PMに該当すると思います。

Core PM
 既存顧客のペイン解決に注力|既存プロダクトの機能開発
Growth PM
 ビジネスKPI改善に注力|既存プロダクトのグロース開発
Platform PM
 社内のスケール課題の解決に注力|プロダクト開発を促進するPF開発
Innovation PM
 PMFを拡大する新たな機会の特定/テストに注力|新プロダクト創出/PMF開発

参考:The Growing Specialization of Product Management

ナビタイムに未経験エンジニアで入社し、PM・新規事業責任者を歴任し、リクルートを経て現在に至る

Q. キャリアのスタート地点を教えてください。

高校生の頃から自転車が好きで自転車競技をやっていたり、大学時代は自転車で旅をするサークルに入っていました。
自転車での移動をメインにしていたので「NAVITIME」をよく使っており、会社のビジョンが面白そうだと感じ、新卒採用2年目の年でエンジニアの採用しかしていませんでしたが、未経験で株式会社ナビタイムジャパンへ入社しました

入社する時点で、元々好きだった自転車のナビゲーションをより良くすることや、テレビでやっていた興味深いお店の情報がパッと見れたり、そこまでナビできるような状態を作れたらいいなと思っていました。

入社してからも技術的な勉強をしながら、『こういうことができたらいいんじゃないですか?』と勝手に提案を行っていました。
アイディアが採用されてリリースするなど、新機能を作ることもできるようになり、段々と企画というものが分かるようになってきました。

その後、初めて担当したプロジェクトは「乗り換えアプリ」を新規につくるというものでした。
責任者と話をしながら、『乗り換えのためだけのアプリをなぜ作るのか?』といったことや、『ユーザーはどういう体験をするのか?』『どんなビジネスモデルとしてやっていくのか?』など幅広く検討して新規アプリの開発を進めていきました。ディレクションを行うだけではなく、企画屋でもなく、プロダクトマネージャーとしての最初の仕事だったと振り返って思います。

toCのシンプルなサービスではあるものの、新規開発し、機能追加やアライアンスなどの他社連携ができないかと売り込みを行なってみたり、サービスの成長段階に合わせてマネタイズ観点での施策を行うなど、プロダクトライフサイクルにおける一通りのミニマムの業務は経験できたと感じています。

時流的にもアプリのダウンロードが跳ねやすい時期だったこともありますが、2年かからず200万ダウンロードに成長させることができたことは誇らしく思っています。

Q. 植竹さんのPMキャリアの原点は乗り換えアプリにあるんですね!その後はPMとしてどのようなご経験をされたのでしょうか?

次は、プロダクトの改善に専念したいと思い、「NAVITIME」のプロダクトマネージャーを担当することになりました

システム的に古くなってきたことと、プロダクトとしても伸び悩んでいた時期だったため、リニューアルをすることを決めました。

既存のサービスに対して、どんなユーザーが使っており、どんな課題があるから、全体のプロダクトの流れとしてはこうあるべきと設計していき、それをどのようなシステムで構築していくのかとエンジニアメンバーと会話しながら、少し開発も行いながらプレイングマネージャーとして実行しました。既存システムのリニューアル・再構築の経験ができたことは良かったと感じています。

その他に、サービスの成長のための差別化(ルート品質では競合と差がない状態であり、いかに初めに使ってもらう理由を作るか)もやっていく必要があるということで、「着せ替えサービス」として好きなキャラクターが移動の案内をしてくれる、移動の間いつもそばにいるという状態をつくることにも取り組みました。

当時はアライアンス営業のようなことまで行うなど、今までない形でのマーケティング活動を行なって、既存サービスをもう一段グロースできないかと取り組んだりもしました。

Q. 新規事業を立ち上げられたご経験もあると伺いまして、詳細をお聞かせいただけますでしょうか?

「NAVITIME」ではやれていなかった、日常をもっと楽しくするようなサービスを提供できないかと考え、ウォーキング+ライフログのサービスを企画しました

常に位置情報を取得し、どこを移動した、どこに滞在したというログ情報、撮影した写真をもとに後で自動で日記が作られるような機能を提供することで、楽しく移動ができる状態を作れないか?と構想しました。

サービスを作りながら、どこのユーザーに刺さるのか?と検証していたのですが、最終的に「ヘルスケア」であると位置づけました。

「歩くことが楽しいということに気づいてもらえれば、自然と歩いてくれるはずである」という考えに基づき、それを支えるサービスです。

『ナビタイムでなぜヘルスケア事業なの?』という声もあったのですが、今までは移動の時間をケアしていたけど、人生の時間を考えた時に健康でいられる時間が長くなればなるほど有意義に使える時間が増えるじゃないか、そういう意味でのタイムなんだ、というような事業ビジョンも掲げながら、事業責任者として事業を運営しました。

マネタイズを検討するにあたっては、当時「健康経営」が世の中的に盛り上がっていたので、まだtoC向けのプロダクトしかなかったのですが、パネルだけ作って企業向けの健康経営EXPOに出展してヒアリング調査を行い、そこから開発して営業活動を本格化するような取り組みもしました。

この経験がナビタイムでの最後になりますが、10年間で営業や開発、プロダクトマネージャー、事業責任者、開発組織のピープルマネジメントと幅広くやらせていただき、もっと色々な課題解決をしていきたいという思いから転職をすることにしました

Q. ナビタイム転職後から現在まで、どこでどのようなお仕事をされたのでしょうか?

2社目に、株式会社リクルートのスタディサプリを運営する組織へ入社しました。

システムや技術よりのPMとして中学生向けのサービスを担当し、どのように教育を提供していけばいいのかに向き合うことや、今まで経験のなかったリアルの力を活かすということに取り組みました。

中学生の個別指導コースにおいて、大学生のコーチがオンラインで中学生をコーチングしながら勉強を教えるというスキームを扱っていたのですが、オンラインのみの体験よりも、もっと考えることが増えました。

また、オフラインで人がいるからこそできることもあり、実験的な施策を検証する際に機能を開発せずにオペレーションでなんとかなるということも経験することができました。

リクルートでは2年間働き、より個人の守備範囲や裁量が大きく経験が積める環境が望ましいと感じたことと、友人に誘われたこともあり、現職の株式会社マネーフォワードに転職しました。

Q. ナビタイムで新規事業・プロダクトの立ち上げもご経験され、その後スタディサプリ・マネフォワードで既存サービスのグロースをされていると理解していますが、現在の志向性として、新規立ち上げよりも既存事業をグロースさせることへのモチベーションの方が高いのでしょうか?

個人的には、新規なのか、既存なのか、特にこだわりはありません。
ナビタイムの時に新規をやっていたのも、結局、既存のプロダクトでは救えていないユーザーやその課題があったからです。

我々が目指しているビジョンや叶えたい未来を前提に、どうアプローチしていけばいいのか?と考えた時に、既存のエンハンスを行うのか、それでは適したソリューションの提供ができないから新規サービスやプロダクトを作る必要があるというように選択をしてきました。

前述の乗り換えアプリを作ったのも、「NAVITIME」を「地図アプリ/ナビアプリである」と捉えるユーザーが一定おり、ユーザーがイメージする「乗り換えアプリ」ではなかったがために、我々が提供している価値(すべての移動手段でユーザーの移動をサポートする)を十分に伝えるにはよりシンプルでユーザーのイメージに沿う別の箱を用意するほうが適切であると判断したからです。

そのため、叶えたい未来やビジョンに対して自分が熱量を持てるかどうかを最も重視しており、その変化によってどのプロダクトをやりたいかが変わってきています。

Q. ナビタイムで事業責任者もご経験されていますが、事業責任者ではなくPMのキャリアを歩む選択をされたのはなぜでしょうか?

事業責任者でもPMでも、事業及びプロダクトに責任を持つことに変わりはなく、濃淡の違いだと考えています。

事業責任者は、事業の売上や組織運営に優先的にリソースを割く必要があり、PMは結果的な売上はあるものの、その手前のいかにユーザーにいいものを届けるか、に優先的にリソースを割きます。

その上で、自分がどっちの頭でユーザーやサービスに向き合いたいか?と考えた時に、「売上を上げて○○億円規模のサービスをやっている」よりも、「そのサービスを通して人生が豊かになっている人を1人でも増やす(結果的に売上が上がって事業としても成り立っている状態)」という思考の方が自分としてはしっくりきました。

また、「事業を作るぞと言って事業を作る」のではなく、「ユーザーと向き合っていった結果、事業ができた」というスタンスの方が、自分としては自然ですんなりアクションが取れると感じました。
第一に、モノやユーザーに向き合っていきたいんだと思います。

目指しているビジョンや叶えたい未来を前提に、どうアプローチしていけばいいのか?をフラットに考えることが得意

Q. プロダクトマネジメントを行う上での得意分野はありますか?

得意なのは、数字を伸ばすことやグロースをさせるというよりも、ユーザーに発見を与えるものや喜んでもらえるものを作っていくことです。

繰り返しになりますが、目指しているビジョンや叶えたい未来を前提に、どうアプローチしていけばいいのか?と考えた時に、既存のエンハンスを行うのか、それでは適したソリューションの提供ができないから新規サービスやプロダクトを作る必要があるというように選択をしてきました。

そのような行動の背景には、『こうしなきゃいけない』『こうでなければならない』という制約を取っ払って、『これって必要だよね』『やるべきだよね』とアクションを起こせることや、当たり前のことを当たり前にできることが自身の強みとしてあるのだと考えています。

現職を含めて3社を経験する中で、自分は所属部署や役割などに縛られないタイプだということが分かりました。そこにボールが浮いているのであれば自分がやればいいと思ったり、ユーザーが困っているならやろうよとフラットに考えて動くことは、意外に誰でもできることじゃないと分かりました。(私と逆の思考の方であれば、例えば、『〇〇部としては」とか『自分のミッションとしては』という言葉が出てきたりします)

マイルールは、「なぜを繰り返す」「早くやろう」

Q. PMとして働く上で、大切にしているマイルールはありますか?

2つあります。

①「なぜを繰り返す」
ちゃんと芯を食うことを意識しています。

その時々にどこまでコストをかけられるかはありますが、表面的な解決や理解ではなく、『ユーザーはそう言ってるけど本当は何が欲しいんだっけ?』とか、『パッと見こういうペインがあるけど本当にペインなんだっけ?』とか、ちゃんと見極められるようにしよう、見極めたアクションを取ろうといつも気をつけています。

②「早くやろう」
どうしてもユーザーに出さないと分からないことはあるので、一旦雑でもいいから外に出すことを意識しています。

Q. 解釈のしかたによって、芯を食う前提として本質的な課題設定を行うために一定の時間をかける必要があり、その2つは矛盾するのでは?と受け取ることもできると思いますが、どのようにお考えでしょうか?

本質的な課題設定や理解について、日常が大事であり、新しい課題が突然出てくるケースはあまりないと思っています。

普段から、『ユーザーはどういう使い方をしているのだろう?』『現在プロダクトはどういう状態にあるんだろう?』『世の中はどういう状態だっけ?』と考えを巡らせており、そういう中から課題や、やりたいことは生まれてくるのです。

だからこそ、何か新しい1つのトピックを考えるために情報収集するのではなく、常に日常的に情報収集している中で、扱うべき何かが出てきて、その時にはある程度理解が進んでいる状態を作ろうと思っています。

そうすると、自分の中でも仮説、課題に対しての本質の想定が一定ある状態になるので、これをやろうとなった時になぜ(WHY)がすっと入ってきて、足りないところはピンポイントでのヒアリングや分析を行えばいい状態になります。

つまり、トータルかけている時間は長いけど、動き出そうとした時にその課題にフォーカスして取り組んでいる時間は短いような状態になっています。

あとは、悩み過ぎないことが重要で、『やった結果、違ったね』ということはあるので、意識的に短期でやって、『本当にこれは正しいんだろうか?』と不安になる部分は自分を信じ込んで、周囲と壁打ちしながら軸となる部分を絞り込み、ユーザーに当ててみることが良いと考えています。

植竹さんから学ぶ、いいチームと質の高い企画の作り方

Q. いいチームをつくるために取り組まれていることはありますか?

どうコミュニケーションを取るかはすごく重要だと思っています。
ビジネス側と開発側の分断はよくある話だと思いますが、コミュニケーションをどう取るかで大きく変わると思っています。

例えば、エンジニアと企画者、マーケターは会話をしない、間をプロダクトマネージャーが全てを繋ぎますとしたとすると、『そりゃ理解が深まらないよな』と思うので、チームの規模やコミュニケーションパスなど、どういうチームとしてのコミュニケーションを取りたいかを考えて、それに沿った設計をするようにしています。

また、開発チームも人数が多くなりすぎるとやりづらくなるので、チームを分けることなども行なっています。

最近、CRE(Customer Reliability Engineer)のチームを新設したのですが、ユーザーサポートのチームと密にコミュニケーションをとって、大きな課題解決に取り組んでいるとおざなりになりやすいような手元のユーザーの課題をどんどん改善していく時間軸の違うチームを作りました。エンジニアリングマネジャーと会話しながら進めたのですが、人となりも理解でき、ざっくばらんに会話しながら改善サイクルを回せるような2,3人くらいの小規模チームを切り出すような体制を作りました。

Q. 質の高い企画をするために意識していることはありますか?

①「Whyを突き詰める」

基本ですが、ユーザーのことをよく知る、プロダクトのことをよく知ることがまず必要です。

②「前提を疑う」

システムがこうだから、会社の制約的にこうだから、とよく耳にすることがあると思いますが、『実はその制約って取っ払えるんじゃない?』からちゃんと考える(疑う)ようにしています。打ち手も増えてくるし、変にかかっている制約は疑って適切に外していくことが大事です。

③「合議をし過ぎない」

色んな人に叩いてもらって合議をすると、遅くなり、角が取れて無難なものになって刺さらなくなってしまいます。失敗は減るかもしれませんが、『それは果たして成功と言えるのか?』というような状態にもなりかねません。

「本当にユーザーのことを考えて、熱量を持ってやる人が、ちゃんとリードしてその人が本当に良いと思うものを出す」ことが成功の秘訣だと思うので、あまり人の話を聞き過ぎないことが実は重要だと思っています。

特に『(感覚的に)違うんじゃないの?』『(経験則から)それ売れないよ』みたいな発言は、話半分でいいかなと思っています。笑

人間心理の理解やストーリーテリングに関するおすすめの本

Q. PdM向けのオススメの本を教えてください。

リーンスタートアップ

プロダクトマネジメントのすべて

プロダクトマネジメント ―ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける

このあたりは、シンプルに普遍的なプロダクトマネジメント関連の知識をまとめた本で、最初にインプットしておくと様々な人との会話がスムーズになると思います。

人を動かす(デール・カーネギー)

もオススメです。

プロダクトマネージャーは「プロダクトを通じて人を動かす」ところと、「プロダクトを作るために人を動かす」ところがあって、人に向き合ってやっていかないといけないので、人間心理の理解も有効だと思います

人間が動く時には本能的な部分での判断があり、深層心理を知っていないと人を動かせないと思うので、そういう観点での本は大事だと思っています。

ユーザーエクスペリエンスのためのストーリーテリング

PMはストーリーを話す人だと思っています。事業もプロダクトもビジョンもどう伝えていくかのストーリー性がすごく大事で、上手くストーリーを作って伝えるということはPMに求められる基本の力として重要だと思います。

相談乗ります|PMのキャリアの作り方やPM転職のアドバイス

Q. かけだしPMやこれからPMを目指されたい方のどんな相談に乗っていただけますか?

自分はエンジニアとしてキャリアを始めて、一時営業などもやった経験から、『プロダクトマネージャーとはつまり何なの?』『どうすればプロダクトマネージャーになれるの?』を理解する上で、お力になれるかと思います。

また、PMとして直近も転職しましたが、PMと言っても各社やることは違い、『自分は結局何がしたいんだろう?』『プロダクトマネージャーとして働くとはどういうことなのか?』など、正直とても悩みました。

その経験を踏まえて、キャリアの話や、自分が今まで悩んできたことの紹介を踏まえたアドバイスなど、できるかと思います

ちなみに、PMの業務リストを作成し、現状と自分の理想の状態、検討中企業だとこうなりそうを整理しながら、入社後のミスマッチが無いように取り組んだので、そのような手法もお伝えできます

その他、前述の組織としてどうコミュニケーションをするといいのかや、どんな考え方が大事なのではないか、といった普遍的なところも、客観的な立場から事例含めてお話させていただきつつ、組織内で一歩踏み出すことのお手伝いもできるかと思います。

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Q. かけだしPMやこれからPMの方へのメッセージをお願いします。

PMはまだ整備されていないことも多く、難しいこともありますが、一番大事なのは、ユーザーやプロダクトに向かう熱意の部分だと思っていて、それがあれば色々発揮できるし楽しい仕事だと思うので、果たして自分の熱意はどこなのか?ということに向き合って、ぜひチャレンジしてみて欲しいと思います!

最後に

植竹さんのお話はいかがでしたか?
感想や得られた気付き、気になったフレーズがありましたら、「#PMノート」を付けてツイートしてみてください〜!

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