今回は、株式会社FinatextのPdMである太田さん(@keisuke_ohta_)にお話を伺いました。
太田さんは、求人広告の営業職からキャリアをスタートし、その後新規事業開発に従事され、30歳の時に大腸ポリープの摘出手術の影響でノイローゼになってしまったことで「死がそんなに遠くないものである」と感じ、本当に自分がやりたいことを実現するためにエンジニアに転身されました。
さらにその後、マーケットプライスを上げるためにプロダクトマネージャーにロールを変更されるのですが、そのキャリアの歩み方や組織の成果を最大化するための考え方などは参考になること間違いないので、ぜひ読んでみてください!
この記事は100人100色のプロダクトマネージャーのリアルを知るためのインタビュー記事「PdM Voice」の連載第14回目の記事です。
このインタビュー記事を音声で聞くこともできます!(β版なので、聞きづらくてすみません…もし聞いていただいた方は、ご意見・ご感想をお待ちしてます!
目次
自社サービスとクライアントワークの二刀流フィンテックPdM
Q. まずはご自身の仕事について教えてください。
株式会社Finatextという会社で、「母子保険はぐ」という妊婦向け保険商品のサービスサイトのプロダクトマネジメントと、保険クラウド「Inspire」を使ってクライアント企業のDXを支援するプロジェクトのPjMを担当してます。
Q. 「Inspire」を使ったDX支援について詳しく教えてください。
DX支援については、BizDevに同行してSaaSプロダクトの「Inspire」の技術仕様説明を行うことから要望をもとに工数見積もりをして、受注が決まってからはプロジェクト計画や要件定義、デザイン、開発などをディレクター・デザイナー・エンジニアと連携しながら推進します。
Q. 自社サービス「母子保険はぐ」と「Inspire」を使ったDX支援のリソース配分はどのような感じでしょうか?
基本的には5:5くらいですが、クライアントワークのピーク時は2:8くらいになります。
母子保険はぐの運営は、私の他にディレクター・デザイナー・エンジニアがいますが、クライアントワークと自社サービスのグロースを並行して行うことはなかなか難易度が高いです。
【キャリア】営業、新規事業開発、エンジニアと経験し、自身のマーケットプライスを上げるためPdMに
Q. どのようなキャリアパスでPdMになったのでしょう?
2006年に新卒で人材紹介サービスの会社に入社し、1年半弱ネット求人広告の営業に従事しました。バリバリの営業として9時から12時までテレアポをし続け、午後は4〜5社に訪問し、帰社した後に企画書を作成し深夜まで働き、終電が無くなりネットカフェに泊まるということを繰り返すような生活をしていました。
その後、システム会社で技術者派遣の営業を1年間やったのちに、新規事業開発に6年間ほど従事しました。当時、まだ初期の頃のAsana(ワークマネジメントツール)を知り、プロダクトマネージャーという募集職種があることを見て興味を持ったことが、今思えばプロダクトマネージャーとの出会いだったと思います。
転機が訪れたのは30歳の時です。初めて人間ドックを受け大腸ポリープが見つかり摘出手術を行ったのですが、その後ノイローゼ気味になってしまいました。その時に死がそんなに遠くないものであると感じ、本当に自分がやりたいことは何だろう?と改めて考えるきっかけになりました。
仮に3ヶ月後に死ぬとしたら何がしたいだろうかと自問し、システム会社で働いていた頃にiPhoneが登場しスマートフォンアプリ開発者が便利なアプリを作ってApp Storeに出して何十万、何百万とダウンロードされるのを見て自分でもiOSアプリやWebアプリを作りたいと思っていたこともあり、「自分の手で価値あるプロダクトを作りたい」と決意し、エンジニアに転職しました。
日程調整ツールを開発しているスタートアップで、小規模ながらWEBアプリケーションやiOSアプリの開発、新規事業開発、グロースハック、スクラムマスターを2年強やりました。
エンジニアをやりながらひしひしと感じていたのは、文系出身で、30歳からエンジニアを始めて、さらにiOSアプリの黎明期が過ぎた今、理系出身だったり新卒から開発をやっている人を超えるのはかなり難しいということです。
その上で、新規事業開発や営業、エンジニアの経験を活かして自分のマーケットプライスを上げていけるロールは何だろう?と考え、たどり着いた答えが「プロダクトマネージャー」でした。
UUUMにプロダクトマネージャーとして入社し、最初の2年はYouTuber向けの制作支援ツールとかクリエイター育成ツールとか、YouTuber周りのシステム全般のPdMをやりました。後半の1年9ヶ月ぐらいはUUUMが買収したInstagramインフルエンサーマーケティングツール「LMND」のPdM、マーケなど、営業と開発以外の全般を担当していました。
2020年9月にFinatextにPdMとして入社して、現在に至ります。
Q. 30歳の時の意思決定について、新規事業開発の路線で「価値あるプロダクトを作る」のではなく、エンジニアになる意思決定をされたのはどうしてでしょうか?
やはり自分の手で自分が価値があると思うものを作りたいということが強いです。
Wantedlyの仲さんやストアカの藤本さん、freeeの佐々木さんが自らコードを書いてプロダクト作り始めたのは2010年代初期だったと思うのですが、その頃から、起業するとしても最初はエンジニアを雇えないだろうと感じていました。また、社内で新規事業を作るとしても初期開発にかかる予算獲得のハードルの高さや技術者派遣の営業経験から技術者不足は身をもって感じていたので自分が作れるようになった方がいいと思いました。
また、今後ITプロダクトを中心とした仕事に携わるのであれば、エンジニアとコミュニケーションを取るにあたってコードについての知識は必須だと思い、そのためにエンジニアを経験することが手っ取り早いと考えました。
【ミッション】自社サービスの成長とクライアントのDX支援
Q. 今の会社でのPdMのミッションを教えてください。
「母子保険はぐ」では、妊婦の方に母子保険の価値を伝えて、より多くの妊婦さんに保険にご加入いただくことがミッションになります。
また、保険クラウド「Inspire」を使ったDX支援では、クライアントごとに生活者向けの保険申し込みサービスサイトを作成して、Inspireと繋ぎ込んでSaaSも使っていただくような取り組みとなるのですが、クライアントワークとなるため、決められた納期に限られたリソースで期待されている品質のプロダクトを納品することがミッションになります。
【業務】プロジェクトマネジメント中心にデータ分析、マーケティング領域まで
Q. プロダクトマネジメントトライアングルを元に、具体的な業務範囲を教えてください。
Project Management領域が最も強い領域です。
- ビズ側やクライアントからの課題、要望を聞いてそれらに優先順位をつけたりやるやらを決める
- 優先度の高いものからディレクターと画面設計を考える
- 画面設計が決まったらデザイナーと連携してデザインに落とし込む
- デザインが決まったらエンジニアと連携して開発を進める
- 開発が完了したらビズ側、クライアントにレポーティング
というのをやってます。元々エンジニアをやっていたというのもあり、軽微な修正であれば自分でやったりします。
データ分析領域では、KARTE(CXツール)やAdobe Analytics、Google Analyticsを使用してユーザーの属性分析や画面ごとのUU・遷移率を見ながら、どういう人がどういうユーザーストーリーで何をしたら契約に結びつくのかといったことを分析しています。
データを分析して仮説を立て、その仮説に基づいて施策を打って検証し、検証完了したら分析してまた仮説を立てて…というのを繰り返してます。
マーケティング領域では、広告施策のところも関わっています。
【得意領域】広く全般的にボールを拾うことができること
Q. プロダクトマネジメントを行う上で得意なことは何ですか?
自慢できる実績はないですが、開発も含めて法務、財務、マーケ、営業などいろんなことを経験してきているので、多少調べながらにはなりますが広く全般的にボールを拾えることでしょうか。
【マイルール】『スピード』『即レス』『見えない前提に縛られない』で成果を最大化する
Q. 行動指針や大切にしているマイルールはありますか?
①スピード
②即レス
③見えない前提条件に縛られない
①スピード
実際にやる前に緻密に考えられたらいいですが、緻密に考えたからといって上手くいかないケースもあり、やってみなきゃ分からないと思うんです。
何でもかんでもやればいいかというとそうではないと思いますが、70〜80%くらいの精度になって上手くいくかどうかはやってみないと分からないのであれば、そこからああでもないこうでもないと1週間くらい時間をかけるのであれば早くリリースしてしまうべきだと思うのです。
その結果、上手くいかなかったらその失敗から学べばいいと思います。
ただし、機能を作ってリリースしてしまったら簡単にオミットできないようなものはもちろん慎重にリリースする必要はあるので、あくまでもスタンスとしては意識してやりたいということです。
②即レス
開発を進める上でSlackベースでディレクターやエンジニア、デザイナーとコミュニケーションをとることが多いのですが、彼らの成果を最大化するためには手が止まらないようにする必要があるため、依頼されたことや確認されたことに対して即レスするようにしています。
ハイアウトプットマネジメントという本に、組織の成果を最大化するためにはスループットが大事であると書かれているのですが、正にこれだと思っています。
③見えない前提条件に縛られない
自分の話していることや考えていることがいつの間にか目に見えない前提条件を設定していることが結構あると思います。
そもそも自分が発している言葉や考えていることの前提条件って何だっけ?と意識的に確認して、取り払うようにしています。
【チームづくり】環境を整備し、意義を伝え、伴走する(同僚コメントあり)
Q. 業務上関わる人たちといいチームをつくるために取り組まれていることはありますか?
チームというかエンジニアと接する時は、彼らが得意としていることに集中できる環境を整備することに取り組んでいます。
また、ディレクターやデザイナーと接するときは、今の事業の会社の中での位置付けや自分たちの役割がどれだけ大事かを発信するようにしてます。
具体的には、「母子保険はぐ」のコンバージョンや遷移率など数値状況が良くない時に、「母子保険はぐ」は「inspire」を使った初めてのプロダクトでありFinatextでの保険事業の初めての商品であること、これが成功するのも失敗するのも僕ら次第であることを伝えています。
その上で、自分もディレクターも他の業務との兼務で取り組んでいる状況なので、「頑張って」ではなく「一緒に頑張ろう」とコミュニケーションを取るようにしています。
ちなみに、一緒に働くメンバーは太田さんのことをこんなふうに思っているようです。
・太田さんのバックグラウンドとして toC, toB の経験を持っているため、toC向けのマーケティングの施策から、顧客と向き合って要件ヒアリング・設計の立ち振ち舞いをマルチにやっておられる点がすごい
・プロジェクトが円滑に進むように動いてくれるような行動を自然に実践している
・エンジニアリングの知識・スキルがあり、極力エンジニアの手をわずらわせず、自分でできるところはやってしまう
・クライアントとエンジニアのどちらかに寄り添い過ぎないバランス感
・認識のすり合わせやタスク調整等、細かいところまでしぶとくやるのはすごい
【悩み】PdMのロールモデルとフィードバックの機会があれば
Q. PdMに関する悩みはありますか?
自社の話ですが、PdMという明確なロールがあるわけではなくて、例えば及川さんみたいなPdMの大先輩みたいなロールモデルがいるわけではないので、そういった方から客観的にPdMとしての評価をもらいたいという気持ちはあります。
【オススメの本】High Output Manegementを実践し、組織の成果を最大化させよう
Q. かけだしPdMに向けて「まずはこの本を読むべし」というオススメの本はありますか?
「High Output Manegement」、「誰のためのデザイン?」、「ノンデザイナーズデザインブック」ですね。
①HIGH OUTPUT MANAGEMENT(ハイアウトプット マネジメント)
組織の成果を最大化するためにはスループットが大事であることが書かれており、ディレクターやエンジニア、デザイナーの成果を最大化するために意識している即レスに繋がっています。
デザインを考える上で、1つの画面には多くの要素があると思いますが、この要素がなぜこういう形・色をしているのか、どうあるべきかを考えるきっかけになる本です。
デザインの鉄則を非デザイナーでも手に入れられて、デザイナーと話す上で役に立った本です。エンジニアでもBootstrapやMaterial Designを利用して自分でプロダクトを作ることがあると思いますが、その時に役立つと思います。
【PR】太田さんから皆さんへお知らせ!
Finatextグループでは、当社のプロダクトを一緒に育て上げていくメンバーや、クライアントと一緒にDXプロジェクトを推進していくメンバーを募集しています!
Finatextグループ 採用サイト
https://hd.finatext.com/recruit/
※求人タイトルは「プロジェクトマネージャー」や「サービスディレクター」となっています。
フィンテックと聞いてハードルを感じる方もおられるかもしれませんが、金融未経験のメンバーも多数活躍していますし、自社プロダクトとクライアントワークの両方を経験できることは、PdMとしてのスキルアップにつながると思います。ご応募お待ちしています!
参考:Finatextのディレクターが語る、サービスとソリューションの好循環
https://note.com/finatext/n/ne95be676ad09
最後に
太田さん(@keisuke_ohta_)のお話はいかがでしたか?
能動的な選択によってキャリアを自ら切り開いてきたという言葉がぴったりですね。
太田さんが経験されたような「死がそれほど遠くないもの」と感じる機会は全ての人にあるものではありませんが、コロナ禍において人生に求めるものや働く価値観、考え方が変わってきている方は多くいるのではないかと思います。
30歳のタイミングでのエンジニア転身は、周囲から反対に近いような声も上がったようですが、ご自身の思いや考えを優先された結果、今は良い選択をしたと胸を張って言える状態となっているようです。
一見遠回りに見えたり、一時的にしゃがむ時期があったとしても中長期的には点と点が繋がり線になっていることってありますよね。
過去の経験を踏まえて、自身のマーケットプライスを高めるためにどんなキャリアを歩むのかを主体的に考えることの大切さを改めて考えさせられる機会になりました。
感想や得られた気付き、気になったフレーズがありましたら、「#PMノート」を付けてツイートしてみてください〜!
PMノートではPdMインタビュー対象者を募集中!
この記事をお読みのプロダクトマネージャーでインタビューさせていただける方は、下記のbosyuからお気軽にご連絡ください!
【bosyu】インタビューさせていただけるプロダクトマネージャーの募集はこちら!
インタビュー内容など、詳細はこちらからご覧ください。
(下記の画像をクリックしても確認できます)
プロダクトマネジメントを体系的に学びたい方へ
オススメの本や動画講座をご紹介します!
INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント
プロダクトマネジャーのバイブルとも言われる一冊。
・どのように組織を構成し
・新しい製品を発見し
・適切な顧客に届けるのか
が、具体的な例を交えながら詳細に説明されています。
プロダクトマネジメント入門講座:作るなら最初から世界を目指せ!シリコンバレー流Product Management
テクノロジーの聖地シリコンバレーからPMの仕事や魅力とキャリアの可能性を、在住14年以上、現在米系スタートアップで働く現役PMが具体的事例をもとに紐解きます。
講座内容
プロダクトマネジメントができると、アイデアの創出からビジネスモデルを作り、デザインとテクノロジーを駆使してプロダクトを地球大のユーザーに届ける、そんなスケールの大きな仕事ができるようになります。こうしたスキルは人の生活、テクノロジーの変遷に強い普遍的なものです。これからの時代PMスキルを身につけることは自らの価値を大きく高めることに役立ちます。このコースはそんなプロダクトマネージャーの世界に入っていくための入門編です。
他にもオススメの本や動画講座が気になる方は、こちらをご覧ください!
(下記の画像をクリックしても確認できます)