今回は、「ポジティブなPDCAを回す振り返り」について記事を書きたいと思います。
なぜ、僕がこのテーマで記事を書くか?
それは、僕がプロジェクトマネジメントのプロであり、プロジェクトマネジメントにおいてもPDCAのCにあたる振り返りをポジティブに行うことが、自分たちの成長やプロジェクトの成功確率UP、企業・組織の発展を考える上で超大事だと思っているからです!
※少し前置きが長いので振り返り術をすぐに見たい方は、目次から「ポジティブなPDCAを回す振り返りフレームワーク」へ飛んでください。
目次
プロジェクトマネジメントのプロ
僕は、IT関連の事業会社で働いており、数々のITプロジェクトを担当してきました。
プロジェクトマネージャーとして働く中で、PMP(Project Management Professional)というプロジェクトマネジメントの国際資格も取得し、大げさに言うと、プロジェクトマネジメントのプロです。
振り返りが超大事!
プロジェクトは「独自性があり」「有期的な」取り組みと定義されるので、プロジェクトには必ず終わりが存在しますが、プロジェクト単位で見た時に、一切問題が発生せず全て完璧なプロジェクト進行だったと言えるようなプロジェクトなんて存在しないのではないでしょうか?
その一つ一つのプロジェクトの中で発生した問題の原因を特定することや失敗からの気付き、教訓などを抽出し、プロジェクト関係者をはじめ、組織に還元されること、つまりPDCAのCである振り返りを行うことが超大事なんです!
いくつかの問題や失敗はありつつも、1つのプロジェクトが終わったのであれば、後ろを振り返るのではなく、前だけを向いて次のプロジェクトに取り組めばいいんじゃないの?と思った、そこのあなた。
「ずっと同じ問題や失敗を繰り返すことになりますよ。」
問題や失敗を発生した事象を表面的にしか捉えられておらず、「つらかった」「大変だった」と感情的には記憶に残ったとしても、何が原因だったのか、今後何に気をつけて改善するのかは全く分かっていないのではないですか?
企業や組織の視点で見ても、企業や組織が長期に渡って事業活動を継続する上で、個人や個別のプロジェクトの中での気付きや教訓がプロジェクト関係者のみにとどまらず、企業や組織に還元されることが望ましいのは言うまでもないと思いますので、その点から見てもPDCAのCである振り返りを行い、プロジェクト関係者をはじめ、組織に還元しましょう。
面白いのは、同じ事象を経験したとしても僕と同僚のBさんでは感じ方やそこから気付く内容や学ぶ内容は異なるので、それらを共有し合うことで理解を深めたり、視野を広げることができます。
ポジティブに振り返ろう!
問題の原因や失敗からの気付き、教訓と表現していた為、ネガティブな事象のみをイメージされるかと思いますが、PDCAのCである振り返りの対象は、ポジティブな事象にも目を向けるべきです。
ポジティブな振り返りを行わないと、
「たまたま上手くいった好事例の再現性が無くなりますよ。」
今回のプロジェクトで想定していたよりもたまたま上手くいった好事例がありませんでしたか?その好事例がなぜ上手くいったのかの要因を把握しないと次に同じことが起きるのは運任せ、再現性を高めることはできなくなってしまいます。つまり、成長の機会をみすみす放棄することになってしまいます。
プロジェクトの反省会という名前でネガティブな事象のみを対象とする振り返り会を開催している事例をみることもありますが、そもそも精神的に苦痛じゃないですか?
PDCAサイクルを回し続ける為には高いモチベーションを維持することも大切である為、上手くいったことやポジティブな事例こそ積極的に取り上げて、次も上手くいくように、更に上手くいくようにポジティブな振り返りを行うことが大事です。
問題や失敗の責任を問う場でも、謝罪をする場でもありません!
次に同じ問題や失敗を繰り返さない為の改善策や気付き、教訓を得る場であり、上手くいったことの再現性を高め、ポジティブなPDCAサイクルを回す為の原動力とする為の場にしていきましょう!
ポジティブなPDCAを回す振り返りフレームワーク
前置きが長くなりましたが、ポジティブにPDCAを回す振り返りフレームワークをご紹介したいと思います。
KPT(ケプト)(ポジティブ気味にファシろう!)
KPT(ケプト)という振り返りフレームワークをご存知でしょうか?
- K(Keep|良いこと。これからも継続すること。)
- P(Problem|悪いこと。問題点。)
- T(Try|挑戦すること。改善アクション。)
を定期的に洗い出して振り返ることで改善サイクルを回します。
KPTでの振り返り方法
- 現状のKeep(良いこと。これからも継続すること。)とProblem(悪いこと。問題点。)を洗い出します。
- Problemを改善する為のTry(挑戦すること。改善アクション。)を挙げます。
- (1週間〜2週間サイクルで)前回Tryで挙げた改善アクションの実施状況や結果を振り返り、良かったことや継続することはKeepに振り分け、課題や問題点はProblemに振り分けます。Problemの中で改善されたものは削除します。
- 更に次回に向けたTryを挙げ、改善アクションを実行します。
- これを繰り返すことで、Problemが減っていき(レベルが上がっていく)、Keepが増えていく(習慣化できたものは削除して良い)ことで改善が図れていくことになります。
このフレームワークを用いることで、Keep(良いこと。これからも継続すること。)を挙げることを意識的に行うことができます。
つい、振り返り会と聞くと問題や失敗というネガティブな事象を思い出し、その反省点のみに終始してしまいがちな人もいますが、自信を持ってポジティブな良いことをあげることができるのではないでしょうか?
とは言っても、実際にKPTでの振り返りを行ってみると、こんなことに出くわすかもしれません。
- Problem(悪いこと。問題点。)はたくさん出てくるけど、Keep(良いこと。これからも継続すること。)がなかなか出ない。
- Try(挑戦すること。改善アクション。)を考える上で、Problemばかりに目が向いてしまいマイナスを0にする or プラスにするような取り組みは出るものの、Keepにある良い点を更に伸ばすという プラスを更に大きなプラスにするという挑戦的なTryが出にくい。
そんな時は、意識的にポジティブなKeepに寄ったファシリテーションを行ったり、1人で振り返りを行うのではなく2人以上で行うようにして振り返りのプロセス自体を共有し知識習得・気付きを得る機会と楽しみながら振り返りを行うと良いと思います。
チームで始めた、各人の仕事の進め方や業務プロセスに対するKPTでの振り返りワークショップについてまとめた記事もぜひご覧ください。
「メンバーがより挑戦的な発言をするようになった」「ポジティブな発言をより頻繁に口にするようになった」「他人の良いことに対して「いいね!」を気軽に言えるようになった」という良い変化がありました。
[blogcard url=”https://pm-notes.com/whatis-kpt/”]
YWT(ワイダブリューティー)
振り返りのフレームワークとして最近よく耳にするようになったYWT(やったこと、わかったこと、つぎやること)をご紹介します。
KPTを試したけど、
- どうしてもネガティブな振り返りになってしまう。
- 挑戦的なTryが生まれない。
という方にオススメです!
YWTは、
- Y:やったこと
- W:わかったこと
- T:つぎにやること
を順に洗い出し、振り返りを行います。
YWTの振り返り方法
- まずは、「Y:やったこと」を事実に基づき思いつくままに洗い出します。
- 次に、「Y:やったこと」から学んだ・気付いた「W:わかったこと」を書き出します。どんな些細なことでも良いです。なぜなぜ分析を使って深掘りしてみたり、具体的な分かったことから抽象化してみたりと、本質的な学びや気付きが得られると効果的な振り返りになるでしょう。
- 最後に、「W:わかったこと」を元に、「T:つぎにやること」を決めます。漠然としたアクションではなく、すぐに実行可能な粒度まで具体化することがポイントです。次回の振り返り時に「Y:やったこと」に書かれるはずのものです。
YWTの振り返りは事実ベースの「Y:やったこと」が基点となって、「W:わかったこと」を抽出し、「T:つぎにやること」を決めていく為、ポジティブな振り返りになりやすい特徴があります。
問題解決型の振り返りを行いたい場面では、少し物足りないと感じてしまう可能性があるので、その時はKPTがオススメです。
FDL(ファン・ダン・ラーン)
最後に、FDL(Fun/Done/Learn)を簡単にご紹介します。
まだあまり知っている方は少ないかもしれません。
名前の通り、「Fun(楽しい)」や「Learn(学び)」にフォーカスした振り返り方法であり、最もポジティブな振り返り手法だと思います。
スクラム開発チームにおけるスプリントの振り返りを対象に生まれた振り返り手法とのことであり、チームでの振り返りを対象としています。
FDLの振り返り方法
- メンバーそれぞれがやったことを付箋に書き出します。
- 付箋に書き出したやったことを他のメンバーに共有し会話しながらFDLふりかえりボードの該当する領域に貼っていきます。重なっている領域はどちらにも該当するという意味合いになります。書いた本人以外が貼り付ける領域を選ぶようにすると面白いようです。
- 次に、プロジェクトや振り返り対象の取り組み全体としてどうだったかを1人一つずつ選び(シールを貼ったり、ペンで印をつけます)、会話をしながら全体としての評価をします。
- 最後に、次のプロジェクトや取り組みではどの領域を狙いたいか会話をします。全体的な方向性から具体的なアクションまで話ができると良いでしょう。
次回のプロジェクトや取り組みに対する各個人のTryを明確にし、行動に起こせる状態にするまでを含めてファシリテーションしてもても良いかもしれません。
まとめ
ポジティブなPDCAを回す振り返りフレームワーク3種として、
- KPT
- YWT
- FDL
をご紹介させていただきましたが、どれが良くてどれが悪いということはありません。
振り返りの対象や参加メンバーの人員構成、性質によって、どの振り返り方法がマッチするかは異なると思います。
下記に振り返りシートのダウンロードが可能なので、個人での振り返りやチームでの振り返りにぜひご活用ください!
振り返りシート(フォーマット・テンプレート)
以下からそれぞれPDFファイルでダウンロード可能です。
A3以上のサイズで使用することをオススメします。
今回は、以上です。
ポジティブな振り返りでPDCAを回し、未来をその手に掴んでください!
ご質問やご意見などは、twitterでマツバラヤスユキ(@yaspontax)までお願いします!