今回は、クロスマート株式会社でPM(プロダクトマネージャー)を務める杉原 達也さん(@sugihara_xmart)にお話を伺いました。
杉原さんは、株式会社Speeeで法人営業としてキャリアをスタートし、2020年からクロスマート株式会社にジョイン。フィールドセールスやインサイドセールスを経て、未経験からPMに転身しました。
圧倒的なファシリテーション力と整理力を強みとし、様々なステークホルダーとの関係性を丁寧に構築していく真摯な姿勢が持ち味のPMです。
この記事は100人100色のプロダクトマネージャーのリアルを知るためのインタビュー記事「PdM Voice」の連載第18回目の記事です。
目次
食品卸向けB2BSaaSのPM
Q. まずはご自身の仕事について教えてください。
XTechグループ、クロスマート株式会社(https://xmart.co.jp/)という食品卸向けB2BSaaSでPMをしています。飲食業などの食材の仕入先である「食品卸」の受発注や販促、決済業務の効率化のためのプロダクトの責任者をしています。
Q. 食品卸というドメインのプロダクトというものはどのような特徴がありますか?
発注者(飲食業など)と受注者(卸売業者)の従来のやり取りは、とにかく紙の量と種類が多く、処理業務が煩雑という特徴があります。そのような大量の紙を用いた業務をデータ化するサービスを展開している企業は当社以外にも既に20社程ありますが、発注者への導入が進まないという理由でIT化が進みづらい傾向がありました。
当社ではLINEで受発注できる仕組みや、親しみやすいUI/UXにこだわり、シンプルで使いやすいプロダクトの実現を通じて、この領域のIT化・業務効率化の実現を目指しています。
組織課題が提起された時に自ら手を挙げてPMに
Q. どのようなキャリアパスでPMになったのでしょうか?
クロスマートに入社した当初の期待役割は営業領域でした。約半年間、フィールドセールスやインサイドセールスを経験し、顧客数も増えてきたのでCS領域を少しずつやっていこうと思っていた2020年6月ごろ、社内で「開発生産性が低い」と開発体制が問題提起され始めました。
当社の開発体制は親会社・グループ会社から出向で参画しているメンバーが多いこともあってか、小規模の組織にも関わらずビジネスサイドと開発サイド間での分断がありました。具体的には、ビジネスサイドの要望を開発サイドに渡した後、要件定義〜仕様作成〜実装を全て開発サイドに一任していたことで、要望と、実装の内容や優先度がずれてしまう問題が発生していました。この問題解決に関して議論をし、PM役割をビジネスサイドから輩出しようという方針になり、『ポテンシャルでよければ、PMやりたいです』と手を挙げたのがPM就任のきっかけでした。
ミッションは「イケてるプロダクト」を作ること
Q. 今の会社でのPMのミッションを教えてください。
特に言語化はされていないですが、現在のフェーズにおいてはとにかく稼げるプロダクトにすることだと思っています。『イケてるプロダクトのPMになってよ!』ということは代表からも言われていています。クロスマートが考える「イケてるプロダクト」とは、ちゃんとユーザーがついていて、稼げるプロダクトであること、だと考えています。
あとは「シンプルな使いやすさ」を実現し続けるという代表の想いがとても強く、大切にして受け継ぎたいと思っています。この「実現し続ける」というのが肝で、要望は山のようにあって、機能を追加すれば煩雑になっていく・・・
先行企業ではあらゆる機能を詰め込んだUIのままサービス提供をしているのですが、そうではなく、極論言うとマニュアルがなくても画面を見れば何ができるのかがわかるシンプルなプロダクトを実現し続けたいと思っています。
Q. シンプルなUIにこだわりを持つというスタンスが根付いている企業文化だったりするんでしょうか?
特にそう言った感じではないですね。元々営業畑出身のメンバーが多い会社なので。創業者の思いがあったからなんとか今のUIを保てているという感じすらあります。
あとは競合との差別化戦略的な側面や、先行企業のユーザーからの声も大きいと思います。『機能はびっしり詰まっているけど、画面を見てどう操作していいかわからない』という声をよく耳にするので、いろいろな機能が追加されてもある程度スッキリして見えるような画面にするといったことは意識しています。
Q. 「稼げるプロダクト」というお話がありましたが、ビジネスモデルやマネタイズはどのようになっているのでしょうか?
ユーザーには、発注者(飲食業など)と受注者(卸売業者)がいますが、料金は受注者からしか頂いておりません。受注者からするとシステムを導入しても発注者に使ってもらえないと業務改善に繋がらないので、導入してもらいやすいよう発注者はタダで使えるようにしています。
受注者には膨大に紙があって、それを処理する際に時間もかかるしミスも多くなりがち、さらに深夜帯の作業が多く時給単価も高い。だからこれをデータにしてしまえば楽になりますよね、という非常にわかりやすい課題に対するアプローチとなっています。
さらに、料金体系は、「紙や業務負荷が減った分その分料金をください」というようなモデルなので、導入に当たっての費用対効果が考えやすい構造になっています。僕らにとって介在価値は業務改善に関わることだと捉えています。
Q. 元々業界内ではこのような負へのアプローチというのは取り組んでいたことなのでしょうか?
ありました。冒頭でも少しお話したよう既に先行企業もアプローチしていましたが、一部を除きスケールしてこなかったんです。その最大の理由が、『発注者が使ってくれない』というものでした。
アプローチはあったものの解決に至っていなかったので、僕たちが受注者に『何困ってますか?』と聞いたら、みんな結局、『受発注業務が煩雑で困っている』と。そして、発注者側からも『LINEだったら使ってもいいよ』という声を聞き、ペインの発見とそれを解消するソリューションが結びついたと感じています。
圧倒的なファシリ力と整理力でチームとビジネスを動かす
Q. 今の会社でのPdMのミッションを教えてください。
ファシリテーションや情報を整理することに強みがあって、それがプロジェクト進行や会議進行などに活きていると思います。
最近では、ユーザーへのインタビューでどういうところにペインを感じているかを整理し、デザイナーの方にも教えてもらいつつちゃんとワイヤーを書いて、開発に伝えるようにしています。
Q. ビジネス領域におけるマーケティング、パートナーシップ、ビジネスデベロップメントも携わったりするんでしょうか?
ミッションとしては渡されていないので担当していません。ですが、強みがファシリテーションや整理することなのでついやってしまうことがあります。
例えばユーザーヒアリングも兼ねてCSと一緒に顧客先に訪問した際、気づいたら僕の方がよく喋ってるってことがあったり(笑)。それがビジネスデベロップメントに該当するかわかりませんが、現場で整理して、こうしていきましょうっていうのが好きなタイプですね。
Q. 網羅的に様々な領域をやっている感じでしょうか?
色々と浅く広くやっている感じではあります。開発領域に関しては全く知見がないので、もちろん勉強はしているんですが、エンジニアと話ができれば及第点かなと思って、開発についてはエンジニアに任せています。
とにかくたたきを作り、整理することがマイルール
Q. 行動指針やマイルールはありますか?
僕はとにかくサンドバッグにされるようなたたきを作ることを意識しています。ミーティングにおける議事録やたたき台がないと議論が空中戦になっちゃうことが多いので、自然発生的なミーティングでも僕が最初に画面共有をして、話した内容を書き出し、インデントなどをつけて構造化する、そして決定事項を洗う、ということは露骨にやるようにしています。
あとは、営業時代から意識していたのが、ホワイトボードがない時に備えて必ずノートを持っていて、書き出しながら共通認識をとるというのは癖づけてやっていたりします。オンラインに切り替わった今でも、パワポを開いて、四角や矢印のオブジェクトを並べて図にまとめて認識合わせをするという形で実行していて、馴染んでいるマイルールかと思います。
また、エンジニアからフィードバックを得るために、風通しをよくすることを意識しています。非エンジニアとしては、ビジネスの貢献度合いなどは評価したり讃えたりはしますが、エンジニアとしての評価をするべきではないと思っていて、常にエンジニアへのリスペクトを忘れないこと。エンジニアがユーザーのことを考えてプロダクトをこうした方がいいという意見があれば、それを積極的に受け入れて一緒にいいものを作っていくことが大切だと考えています。
そして、「事業を良くするために自由演技的に立ち回るメンバーを守る」ということもポリシーとしてやっています。何も言わなくてもその時その時に必要なことを自発的に実行してくれる人っているじゃないですか?これは営業であっても開発であってもありますが、『これってMRRに繋がるの?』とか『これはお客さんにとってどういうメリットがあるの?』と言われるようなこと。
例えば、リファクタリングはスタートアップの経営者からすると『そんなことより新しい機能を作って』と思われるケースが多いのですが、『これはこういうことのために必要なんだ』と説明をしたり、『この機能追加と一緒にやってもらうようにします』と調整しています。
Q. これらは杉原さんの元々のスタンスなのか、仕事を通して根付いたものなのかというと、どちらでしょうか?
元々のスタンスだと思います。ストレングスファインダーをやって、上位5個のうち1つに「調和性」が来る人ってスタートアップになかなかいないんじゃないかと(笑)。それが故に整理力や調整力が高くなっているのだと思います。
※杉原さんのストレングスファインダーの結果はこちらで紹介しています。
調整力を活かし、凄まじい成長角度を実現
Q. PMとして自慢できる実績はありますか?得意な領域はありますか?
社内外の調整は得意です。
僕らの会社が決済会社・カード会社と共同事業をした際に、それまで1年近く動きが無かったのですが、僕が参画するようになって、少し時間はかかったものの半年ほどたって今年4月にローンチすることになりました。
僕は全く金融の知識は無かったのですが、わからないことはしつこく聞き、フロントマンとしてユーザーのペインなどを洗って整理し、開発サイドに渡して進めました。利用規約のところは結構つまづいてしまったのですが、グループ会社を頼って推進しました。
色んな人を頼りつつではありますが、調整力を活かしながら、未経験から1年足らずで2つのサービスをリリースできたことを考えると、成長角度はかなり高いと自負しています。
自分で現場に足を運ぶことで企画の質を高める
Q. 質の高い企画をするために工夫していることはありますか?
先程もお話させていただきましたが、まず必ずたたきを作ります。そして可能な限りユーザーヒアリングは自分でするようにしています。
また、実際に体感しながら情報を得ることは意識してやっています。『実際の業務をやっている現場に足を運ばせてほしい』と言うようにしていて、一度断られてもしつこく言います(笑)。
どうしても現場に行かない限りは知り得ない事があります。自分が良かれと思って企画していることが実際のシーンではフィットしないということに気付かされることもあります。
Q. 今、挑戦していることはありますか?
PMとしてやることは山ほどあると思っているので、やはり全体的なボトムアップは必要と感じて、中でもワイヤーをしっかり書くことはこれからもしっかり頑張っていきたいなと思っています。
それと、作ったものが営業側でうまく売れないと言う時に、これを売るんだ!というモチベーションを上げられるような「間接的にビジネスサイドを動かす方法」も身につけていきたいです。
あと、実はpmconfのカンファレンススタッフのお誘いを頂いていて、昨年は当日スタッフとして参加したのですが、今年は企画から関わっていきたいと思っていて、社外でのこうした経験も広く糧にしていきたいと思っています。
かけだしPM向けオススメの本
Q. かけだしPMに向けて「まずはこの本を読むべし」というオススメの本はありますか?
実は僕、本当に読書が苦手で・・・(笑)
PM関連でしっかり読んだのは「プロダクトマネジメントのすべて」と「カイゼンジャーニー」くらいですかね。
あとはプロダクト筋トレでやっている輪読会をちょこ聞きしたりとか、人が読んだ本の感想などは見たりしています。
かけだしPMへ一言
Q. この記事を読んでいるかけだしPdMへ一言お願いします!
僕もかけだしPMなので一緒に頑張りましょう…!というのが率直な意見です(笑)
そういえば先日、久々のオフラインミーティングで多くのPMの方とお会いする機会があって、その時印象深かったのが、例えばエンジニアの採用であったり、PMの業務でどこまで深めていけばいいんだろうといった困り事を色々お伺いして、みんな悩みながらやってるんだな、と思いました。
各々の業務の性質上、秘匿情報も多くあったりすると思いますが、困っていることなどをカジュアルに相談しあったり相互に助けあって学習していける機会があってもいいかなと思っています。その中にぜひ僕も混ぜてください!っていうのが一言ですかね(笑)
最後に
杉原さんのお話はいかがでしたか?
感想や得られた気付き、気になったフレーズがありましたら、「#PMノート」を付けてツイートしてみてください〜!
杉原さんにオンライン相談できます!
PMノートでは、先輩PMにオンライン相談ができます。
もちろん、杉原さんにもご相談可能です!
ご興味ある方は、こちらからご覧ください!
PMインタビュー対象者を募集中!
この記事をお読みのプロダクトマネージャーでインタビューさせていただける方は、下記のフォームからお気軽にご連絡ください!
インタビュー内容など、詳細はこちらからご覧ください。
プロダクトマネジメントを学びたい方へ
オススメの本や動画講座をご紹介しておりますので、こちらをご覧ください!