エンタメ領域で幅広くサービスを展開するGENDAのPMから学ぶ!リアルとオンラインの両面で人生を豊かにするプロダクト作りのヒント

今回は、株式会社GENDAでPM(プロダクトマネージャー)を務める千葉俊輝さん(@104kn)にお話を伺いました。

千葉さんは、ヤフー株式会社(現 LINEヤフー株式会社)でスマホアプリエンジニアとしてキャリアスタートし、その後、同社で新規事業立ち上げ経験を経て、リクルートではUXディレクターや組織マネジメントに従事しながら副業や起業など、テクノロジーからビジネスに至るまで幅広く活躍をなさってきました。

これまでのキャリアでデジタルプロダクトを中心に向き合ってきた千葉さんが、エンタメ領域の重要性に気づき、オンラインだけでなくリアル店舗の領域の双方に向き合うという難易度の高いプロダクトマネジメントを行う姿、課題との向き合い方、スキル獲得のプロセス、行動指針やチームづくりや、企画の質の高め方は、なかなか知り得ることができないので必見です。

エンタメ領域の事業で幅広くサービスの展開に携わるPM

── まずはご自身の仕事について教えてください。

千葉:株式会社GENDAでエンタメ領域事業のプロダクトマネージャーを務めています。複数のプロダクトを担当しながら、プロダクトマネージャー組織のマネジメントも行っており、幅広いサービスを展開するチームの運営に携わっています。

GENDAでは、さまざまなエンターテイメントサービスを提供しており、私が関わっているプロダクトも多岐にわたります。グループには、国内外で「GiGO」などのアミューズメント施設を約300店舗運営するGENDA GiGO Entertainment、「カラオケBanBan」を約400店舗運営するシン・コーポレーション、映画配給会社として知られるギャガがあります。他にもグルメポップコーンのHillValleyを展開する日本ポップコーン、レモネード専門店「LEMONADE by Lemonica」を展開するレモネード・レモニカなどのF&B事業もあり、幅広いエンターテイメントを提供しています。

特に、私が長く担当しているのはオンラインクレーンゲームサービスです。ユーザーが自宅からブラウザやスマホアプリを通じてクレーンゲームを操作し、実際に景品が取れたら自宅に配送されるという形態です。こうした新しい体験を通じて、エンタメの楽しさをお届けすることを目指しています。

リアル店舗やオンラインサービスの価値を「幅」と「深さ」の両面で広げていく

── 先程の質問から、非常に幅広いサービスに携わっていらっしゃることが窺えましたが、プロダクトビジョンや会社としての目指す世界観についてお聞かせいただけますか?

千葉:会社としては「世界中の人々の人生をより楽しく」というAspiration(アスピレーション=大志)を掲げています。このAspirationを実現するために、GENDAが提供するリアル店舗やオンラインサービスの価値を「幅」と「深さ」の両面で広げていくことに注力しています。

「幅」というのは、エンターテイメントのジャンルを増やしていくことや、オフラインとオンラインのタッチポイントを増やすことです。たとえば、リアルなゲームセンターに加えて、オンラインクレーンゲームのようなオンラインサービスも含め、ユーザーとの接点を多様化していくことです。

「深さ」に関しては、サービスやプロダクトそのものの価値を向上させることを指しており、顧客が求める体験を提供することに重きを置いています。また、業務効率化のためのサービスや従業員向けの支援という意図でBtoB向けのツールを開発するなどを通じて、プロダクトの提供価値を高めることを意識しています。

── どのような体制でその数多くのプロダクトやサービスを運営されているのかについても教えていただけますか?

千葉:GENDAにはプロダクトマネージャーの組織があります。現在は5〜6名のプロダクトマネージャーが在籍しています。その中で、グループ会社の事業やプロダクトを担当し、グロースや推進を行っています。

現状、プロダクトの数に対してプロダクトマネージャーの人数が足りていないため、1人のプロダクトマネージャーが複数のプロダクトを見ていることが多いです。各プロダクトに1名ずつPMを配置することを目指していますが、どうしても1人が複数プロダクトを担当せざるを得ない状況です。ですので、業務委託や副業の方々にもサポートをお願いし、何とか体制を整えているというのが現状ですね。

── 1人のプロダクトマネージャーが複数のプロダクトを管理しているということですが、それ以前の体制ではどのようにプロダクトを管理してきたのでしょうか?

千葉:GENDAは、M&Aを成長戦略の柱として掲げており、「世界一のエンタメ企業」を目指しています。そのため、M&Aした会社に対してPMI(Post-Merger Integration)を行い、システム統合やプロダクト開発の推進を行っています。

もともとM&A前のグループ会社では、プロダクトマネージャーという職種自体が存在しないケースが多く、店舗運営や情シス担当者が片手間でプロダクトを見ている状況でした。そこで私たちプロダクトマネージャーが参画し、組織としてのプロダクトマネジメントを支援し、役割や体制の定義、システム統合を行っています。

例えば、ゲームセンターの運営担当者がシステムを管理していたり、外注やOEMを利用したプロダクト開発を、内製化できる体制に整えることなど、ゼロから体制を作り上げていくことが多いです。本当に何もない状態からスタートし、体制の定義やリソースの調達、プロセスの設計などを行います。プロダクトがまだ存在しないケースや、システムすらないケースもあるので、まずはプロダクト開発ができる状態を作り、そこにプロダクトマネージャーが入っていって推進していくスタイルです。

そのため一般的なプロダクトマネージャーの職務範囲よりも幅広く、異質な部分もあると思います。比較的レガシーな運用が多い事業領域のため、まずはITの導入をし、そこでやっと施策をいろいろと始められるスタート地点に立てることも多いです。こうした体制の構築が、GENDAにおけるプロダクトマネージャーの重要な役割の一つです。

​​── プロダクト開発体制を構築するところから関与することも含め、非常によく理解できました。そうした企業のミッションと、千葉さんの価値観やキャリアビジョンなどが繋がっているなと思う点はありますか?

千葉:私は現在、GENDAで3社目のキャリアとなります。新卒でヤフーに入り、その後リクルートを経て現在のGENDAに至っています。ヤフーやリクルートでは、大きな事業やプロダクトの中で、主に使いやすさを中心とした顧客体験の向上やビジネスの効率化に取り組んできました。

しかし、効率化を追求して生まれた時間が、必ずしも人々の幸福につながっているわけではないと気づいたんです。各々が楽しめる時間を生み出すことだけではなく、その時間をどのように過ごすかが大切で、そこでエンターテイメントが重要な役割を果たすと考えるようになりました。

コロナ禍では、多くの人々が自宅で過ごす時間が増えましたが、その際にエンターテイメントが心の支えとなり、人々の生活を豊かにすることを目の当たりにしました。これが私自身のキャリアビジョンとGENDAの「世界中の人々の人生をより楽しく」というAspirationと強く結びついていると感じています。

私自身、これまでは効率性の追求ばかりに注力していましたが、コロナ禍を経てエンターテイメントの重要性に気づき、大きなキャリアチェンジをしたと思っています。目指す姿としては変わっていないものの、アプローチの仕方が変わったと感じます。

前職ではエンタメは生きるうえでオプションにすぎないと思っていましたが、コロナ禍の経験を通じて、それがオプションではなく、人生を豊かにするための必須の要素だと感じるようになりました。エンタメは人々の心を動かし、支え、前に進ませる力があると確信しています。

リアルとオンライン双方に存在する課題をデジタルサービスで解決することを目指す

── 現在向き合っている課題と、それをどのように解決されようとしているのかお伺いできますでしょうか?

千葉:はい、プロダクトがたくさんあるため、それぞれに異なる課題が存在しており、全てをお話するのは難しいのですが、分かりやすい例として一つお話させていただきます。

例えば、先ほどもお話した「GiGO」というブランドのゲームセンターには、たい焼き屋さんを併設している店舗があります。そこでは人気作品とコラボしたたい焼きを販売しており、そのキャラクターがデザインされたたい焼きとノベルティをセットで提供しています。しかし、人気がありすぎて毎回多くの人が並んでしまい、朝の7時、8時には何百人と行列ができることがあります。

行列が長すぎると、お客様が購入するまでに何時間もかかってしまう上に、並んでも購入できずに帰られる方も出てきてしまいます。そこで、抽選システムを導入し、お客様の不満を解消する取り組みを行いました。

私たちはオンライン上の体験設計にとどまらず、リアルな現場の体験をデザインし、その課題をデジタルサービスで解決することを目指しています。こうした取り組みは、リアルとデジタルを融合させる形で、多くのプロダクトに共通する課題解決の方向性となっています。

── 他のプロダクトでも共通する課題はあるのでしょうか?

千葉:はい、他のプロダクトでも共通している課題の一つとして「データの取得と活用」があります。リアル店舗のサービス、たとえばゲームセンターやカラオケ、レモネード屋さんなどで、消費者がどのような行動を取っているかを知り、それをどのようにプロダクトに反映させるかが難しい点です。

具体例を挙げると、「GiGOアプリ」というGiGOのお店で通常よりもおトクに楽しく遊ぶことができるサービスを提供しています。

現在、一部のゲームセンターではクレーンゲームなどのゲームで遊ぶ際に、筐体に接続されている決済端末でスマートフォンをかざし決済できる仕組みを導入しています。

この決済を増やし、リアルでの行動データを収集し、そのデータをもとに最適な体験やサービスを提供することを目指しています。

たとえば、クレーンゲームでどの景品に興味を持っているのか、どのような購買行動を取っているのかを把握し、それに基づいて景品の在庫管理や品揃えを最適化することができます。こうすることで、お客様の満足度を高め、私たちの売上にもつなげることができるのです。

── 非常に興味深いですね。その「データの取得と活用」を進める上で、どのようなアプローチを取っていくのでしょうか?

千葉:まずは、データの収集とタッチポイントの定量化から始めています。先ほどのスマホログイン機能をはじめとした仕組みを導入し、リアルな行動データを収集する機会を増やすことを進めています。そのデータをもとに、ユーザーに対して最適なソリューションやサービスを提供していくことが短期的な目標です。

将来的には、さらに多くのデータを収集し、顧客の行動や好みに応じてパーソナライズされた体験を提供できるようにしたいと考えています。ただ、リアルな場面での行動をデータとして収集し活用するのはオンラインほど簡単ではないため、長期的な取り組みが必要です。

オンラインではMAU(Monthly Active Users)や継続率、訪問頻度といった指標をすぐに定量化できますが、リアルの店舗では、なかなかリアルタイムに行動を把握できません。また、私たちが意図している通りに人が動いているかを現場に行かないと確認できないという難しさもあります。

一方で、リアルの店舗を持つ強みとして、実際にお客様がどう反応しているかを直接見ることができる点があります。たとえば、クレーンゲームで景品を取れた時の喜びの声や、惜しくも取れなかったときの悔しがる様子など、データからは見えないお客様の反応を直に感じられることが大きな魅力です。

── オンラインでは体験できないお客様の生の反応を見られるのは、リアル店舗ならではの強みですね。

千葉:はい、その点が非常に面白いと感じています。お客様が私たちのプロダクトをどのように楽しんでいるか、どのような体験をしているのかをリアルに見ることができるので、それが次の改善やアイデアにつながることも多いです。オンラインで完結するサービスでは得られないフィードバックを、リアル店舗での観察から得ることができるので、私たちの仕事の幅も広がっていきますね。

── これまでオンラインサービスを中心に取り組んできた千葉さんにとって、リアルとデジタルの融合は新しいチャレンジかと思いますが、抵抗はありませんでしたか?

千葉:抵抗はなかったのですが、やはりうまくいかないことも多くありました。例えば、ハードウェアの制約条件だったり、リアルの動きを設計するためには現場に行かなければわからないことが多い点です。オンラインのように、すぐに結果を数値で確認できるわけではないので、取り組みが良かったのかどうかを即時に判断するのが難しいこともあります。

ただ、リアル店舗を持つからこそ、顧客が実際にどのような体験をしているのかを直接見ることができる点は非常に大きいですね。リアルな反応が見られるので、デジタルだけでは見えないユーザーの本当の声を感じられるのは、GENDAでの仕事の醍醐味だと思います。

エンジニアからスタートし、事業開発、起業と幅広いフィールドで活躍

── これまでのキャリアについて教えていただけますか?

新卒でヤフーに入社

千葉:私のキャリアは、新卒でヤフー株式会社(現:LINEヤフー株式会社)に入社したところから始まりました。当時は、ヤフーのトップページのスマホアプリのエンジニアとしてスタートしました。もともと大学では情報系の学科でAIを専攻していたのですが、ずっとコードを書き続けるのは飽きるかなと思い、一度アカデミックな道に進む前に、華やかな業界を知りたいと考えたんです。そこで、当時勢いのあったヤフーにエントリーし、スマホアプリのエンジニアになろうと決めました。

スマホアプリのエンジニアリングには2〜3年ほど注力し、ある程度できるようになってきた頃、社内の勉強会を主催したり、他のプロジェクトの支援をするようになりました。そのタイミングで、システムとしては良いものが作れるようになったと感じていたのですが、一方でユーザーが満足していない、期待に応えられていないということが何度か起きたんです。

その時私は、作れるだけではダメだと思ったんですよね。「何を作るか」に向き合わないとユーザーに価値を提供できない、と。それがきっかけで、企画やプロダクト全体の方向性を考える役割を目指すようになりました。新卒3年目くらいだったので、まだ若僧で正直「エンジニアの自分の方が良い企画を立てられる」と思っていました。そこで、証明しようと個人アプリを作ったんです。結果的にそのアプリがランキングで1位を取ったこともあり、実績として認めてもらえたのが大きかったですね。

それから、ヤフーの新規事業立ち上げの制度に参加し、ユーザーインタビューやリーンキャンバスを作成し、プロトタイプを作ってプレゼンし、実際に新規サービスを立ち上げることになりました。それが「Yahoo!キーボード」というサービスで、初めて会社員としてプロダクトマネージャーを経験した瞬間でした。その後、社内のハッカソンや新規事業立ち上げなどを通して、エンジニア、PM、UX担当など、さまざまな役割を経験しました。

事業開発スキルを追及し、リクルートや様々な副業・起業経験を経て、GENDAへジョイン

── その後はどのようなことを行っていたのでしょうか?

千葉:ヤフーでは新規事業の立ち上げや社内起業にも挑戦しました。しかし、最終的には立ち上げたサービスをいくつもクローズする経験をしました。ユーザーに喜んでもらえるプロダクトを作ることはできても、ビジネスとして持続できなければ意味がないということに気づいたんです。特に、マネタイズの部分が弱く、継続的に収益を上げられないという課題に直面しました。

そこで、ビジネススキルを磨くことが必要だと感じ、次に選んだのがリクルートです。「お金儲けがうまそうだな」という印象はありました(笑)。

リクルートでは、ホットペッパービューティーという美容室の検索・予約サービスを担当していました。最初はエンジニアとしてシステムのリプレイスやアーキテクチャの変更を行い、その後、UXディレクター(現在のプロダクトマネージャー)というポジションに移行しました。そこでは、サービスの価値とビジネスの価値を向上させることをミッションとして取り組みました。

その後、スマホアプリのプロダクトオーナーや組織のマネジメントを担当しながら、並行して副業で新規サービスの立ち上げや、企業支援、個人での起業なども行っていました。プロダクトマネジメントだけでなく、エンジニアやUXのポジション、そして組織マネジメントなど、幅広い業務を経験し、GENDAへ移り、現在に至っています。

── ヤフー時代の社内起業の取り組みについても少し詳しく教えていただけますか?

千葉:ヤフーでは、社内起業制度を利用して、外部のVC(ベンチャーキャピタル)のインキュベーターと連携しながら他のスタートアップと同じ空間で仕事をしていました。当時は、デーティングサービスが流行っていたので、それに挑戦しようとしたのですが、社内の事情で難しくなってしまいました。その後、カップル向けのコミュニティアプリを開発し、ユーザー獲得やサービス成長のためのピッチなどを行い、半年〜1年ほど取り組みました。

この社内起業制度では、毎年3組ほどのチームが選ばれ、社内外のリソースを使いながら新規サービスを開発する機会を得られるんです。その中で、実際にプロダクトをリリースし、投資家へのプレゼンや追加予算を獲得することにチャレンジしました。結果としては苦い経験も多かったですが、スタートアップのリアルな体験を社内にいながら学ぶことができたのは貴重な経験でした。

その経験を通じて、ビジネスの難しさと同時に、チームの統率の重要性を実感しました。社内起業とはいえ、スタートアップのような環境で、3人で1チームを組んでやっていました。しかし、3人ですらバラバラになってしまうと、全然バリューを出せないんですよね。

また、投資家の視点でのフィードバックも初めて受けたので、普通の会社員としての視点では気づかないような鋭い指摘をもらいました。たとえば、マネタイズや狙うべきマーケットの選定については厳しく指摘されることが多く、そこで「これは投資家から見たら価値のあるビジネスなのか?」という目線を学ぶことができました。結果として、そのプロダクトは成功とはいえませんでしたが、得られた教訓は大きかったですね。

── そのようなビジネス面の厳しいフィードバックは、やはり刺激的だったのでしょうか?

千葉:そうですね、特に「どのマーケットを狙うのか?」という話はかなり厳しかったですね。そもそも「そのマーケットに参入すべきではない」ということまで言われたりしました。確かにそれは事実で、私たちがその時狙っていたマーケットは小さすぎたり、すでに競合が多すぎたりして、選ぶべきではなかったんです。

そういった指摘を受けると、事業の戦略や方向性を見直さざるを得ませんし、いかに自分たちが戦略的に未熟だったかを思い知りましたね。それはとても苦しい経験でしたが、振り返ると学びが多かったです。

── リクルートでの副業やご自身の起業についてもお話されていましたが、どのようなことに取り組まれていたのですか?

千葉:リクルート時代は、副業として自動車系のサービスの立ち上げに携わり、UXデザイナーとしてUX戦略の策定を担当していました。その事業ではプロダクトマネージャーという役職がなかったので、事業責任者とデザイナー、エンジニアといったメンバーで構成されていました。そこで、プロダクトマネージャーの視点を持ちながらUXデザインの観点から体験設計を行いました。

また、自身の起業にも挑戦しました。リクルートの同僚と一緒に「写真が好き」という共通の趣味から、フォトグラファー向けのサービスを立ち上げました。リクルートには勤続年数に応じて長期休暇を取得できる制度があったので、それを利用して起業したんです。家族写真を撮影するためのサービスや、フォトグラファー向けのサービスを展開しましたが、最終的にはクローズしています。

現在は、以前のようにゴリゴリと新規事業を立ち上げるのではなく、少しずつ土壌を整えて、新しい課題に向き合う準備をしています。例えば、AIなど新しいテクノロジーを取り入れて、どのような価値を提供できるかを考えています。

ゆくゆくは、今までの経験を活かして、もう一度アクセルを踏むタイミングを見計らっています。その時までに、しっかりと自分たちの能力やリソースを準備して、時代の求められる価値に応えられるようにしておくつもりです。

──様々な経験や役割を通じて、多くのチャレンジをされてきたのですね。どのような経験も今の千葉さんに繋がっているのだと感じました。

千葉:はい、なんだかんだいって、いろいろなことに挑戦してきましたね。経験を積む中で、たくさんの学びがあったと思います。

エンジニアリングやUXを中心に広範囲な領域でハイレベルのスキル習得を実現

── 続いて、千葉さんに事前にお答えいただいた12PMコンピテンシーに基づいて、これまでにどのようなスキル開発を行ってきたのかお伺いしたいと思います。自己評価をしていただいた際に、すべての項目で「5」をつけていらっしゃいましたが、特に強みとしている部分があれば教えていただけますか?

千葉:そうですね、難しいところではありますが、自分としてはどれもそれなりにやれるという自信があるからです。いろいろな役割を経験してきたことで、どの領域でもある程度のパフォーマンスを発揮できるのが、自分の強みかなと思っています。

特に強みと言えるのは、やはりエンジニアリングやUXデザインの部分ですね。実際に最前線のプレイヤーとしてやってきた経験もありますし、今でも専門的な職能を持つ方々と目線を合わせながら、共通の理解を持って議論できるのは大きな強みだと思います。プロダクトエグゼキューションやカスタマーインサイトに関しても、専門家の方々と共通言語を使いながらしっかりと向き合えるレベルにあると思いますね。

── 今触れていただいた部分以外で、特にスキル開発につながったエピソードがあれば教えていただけますか?

千葉:そうですね。スキルを獲得してきた流れとしては、まずヤフーの時に”Product Execution”と”Customer Insight”のスキルをしっかり磨いてきました。そして、リクルートに移ってから”Strategy”や”Influencing People”といった領域に携わるようになり、そこでの経験を積んできたという感じです。

順番に経験していく中で、それぞれのスキルを身につけたというのが正直なところです。特別なことはしておらず、本当にすべての工程を一つずつ積み重ねてきただけですね。

── 確かに、幅広いスキルセットをお持ちですが、千葉さんがキャリアを歩んできた過程を見ていると、戦略的にいろんなことをやろうと考えていたのではなく、やりたいことを実現するために必要なスキルや経験を取りに行った結果、いろんなロールを経験されてきた印象がありますね。

千葉:おっしゃる通りです。私は「新しい価値を創出したい」「プロダクトを作りたい」という思いが常に先行していて、それを実現するために「自分に足りないものは何か?」を考え、それを補うための経験を取りに行っていました。だからこそ、自然とキャリアがいろいろと変わっていったんだと思います。

自分がすごいというよりは、そういった経験を積むことを許してくれたり、チャンスを与えてくれた人たちに恵まれていたというのが大きいですね。ヤフーでもリクルートでも、「こういうことをやりたい」と伝えたら、周囲が「じゃあ、こういうポジションをやってみる?」「こういう異動を考えてみる?」と、チャンスを作ってくれたんです。本当に感謝していますし、そうした支えがあってこそのキャリアだと思っています。

── そういった意味では、環境の力も大きかったんですね。特に大企業だと、様々な事業やプロダクトがあるので、千葉さんのように多様なチャレンジができるというのは強みだと感じました。

千葉:そうですね。いろんなプロダクトに関われる環境だったからこそ、そういった機会に恵まれたと思います。たくさんのプロダクトや事業を経験できる環境だからこそ、いろんな打席に立てたという感じですね。

行動指針は「正しさ」を意識すること

── 千葉さんが大切にしている行動指針やマイルールはありますか?

千葉:そうですね、マイルールというより、行動指針や意識していることになりますが、「正しさ」を常に意識しています。これは「正しいものを正しく作る」という考え方に影響を受けている部分もありますし、自分自身がエンジニアだったこともあって、「無駄なものを作りたくない」という思いが強いんです。

そのため、顧客やステークホルダーの要求に対して「本当に正しく答えられているか?」ということを、常に自分に問いながら向き合っています。例えば、依頼された内容に対して「なぜこの依頼が必要なのか?」と背景を知るように努めたり、相手の意図を深く理解しようとすることを心がけています。そのため、よく「なぜ? なぜ?」としつこく質問し過ぎてしまい、ウザがられることもあるかもしれませんが(笑)。そこは自分の中では徹底している部分です。

良いチームづくりのために「知ること」と「知ってもらうこと」を大切に

── いいチームを作るために工夫されていることはありますか?

千葉:これも先ほどお話した内容と少し近いのですが、「知ること」と「知ってもらうこと」を大事にしています。私は組織とは「同じ目的に向き合って成果を出す仕組み」だと考えています。そのため、まずは共通の目的を持ち、それをチーム全体で共有し、個々の目標と結びつけることが重要だと感じています。

ただし、共通の目的や目標をただ掲げるだけでは、みんなが向き合えるとは限りませんよね。なので、全体の目的を個々の目標にどうアライン(調整)していくかが非常に重要です。そのためには、メンバーひとりひとりが考えていることや大事にしている価値観を知ることが必要ですし、私自身も自分の考えを発信して知ってもらうことが大切だと思っています。

具体的には、会社のSlackでtimes(各メンバーが日々の業務内容や考えを共有する場所)を立ち上げ、自分がどう考え、どう解釈しているかを発信したり、他のメンバーの意見や考えを拾って全体に伝えたりしています。例えば、「この目的に対して、みんなが今やっていることはこう繋がっているよね」という話をしたり、他の人の発言を拾って「これもこういう共通のゴールに向かってるよね」と発信するんです。

── timesを活用しているのには何か理由があるのでしょうか?

千葉:直接的に声をかけると、圧を感じてしまう人もいますし、あまり良い印象を持たれないこともあると思うんです。だから、「知ってもらわなくてもいいけど、知ってもらえるなら嬉しい」くらいのスタンスで発信しています。

たとえば誰かのために書いた発言でも、その人に直接「こうだよ」と言っても、受け入れてもらえないことが多いんですよね。人は、タイミングや自分の気づきがなければ受け入れられないこともあると思います。なので、その時にはスルーされても構いません。後から、「あの時、こんなこと言ってたな」と気づいてもらえればいいと思って、ヒントを散りばめるように発信しています。

企画のストーリーや構造の因果関係を整えて質を高める

── 質の高い企画や課題に対する筋の良い打ち手を生み出すために、どのような工夫をされているか教えていただけますか?

そうですね、特別なことをしているわけではないんですが、大事にしていることはあります。まず、企画のストーリーや構造としておかしな点がないか、つまり因果関係が正しいかどうかを重視しています。

例えば、「毎日アプリを起動するユーザーや、毎日来店するお客さんの単価が高いから、毎日来店してもらうためにプッシュ通知を毎日打ち続けよう」といった企画は、実際にはお客さんのロイヤリティが高いから毎日来店しているのであって、強引に毎日来店させようとするのは売上を伸ばす施策として矛盾していますよね。このように、目的に対して因果関係が崩れていないか、矛盾がないかをしっかりと確認することが大切だと考えています。

また、解決策の「How」の部分、つまり具体的な手法については、専門家に任せるべきだというスタンスです。プロダクトマネージャーとして素案や仮の方向性を示すことはしますが、最終的にはデザイナーやエンジニアといったプロフェッショナルに任せる方が、より実現性が高く、効果的な手段が見つかることが多いんですよね。

たとえば、「雨の日と晴れの日を比べたときに晴れの日のほうが売上が伸びるから、毎日晴れにしましょう」という企画は実現性がなく、無意味です。こうした実現性を全く考慮しない施策は考えるだけ無駄なので、そこはプロに任せて、私はストーリーや因果関係の正しさを確認することに注力しています。

── やはり、先ほどおっしゃっていたように、目的に対して正しいソリューションを考え、課題に対して正しい打ち手を設計するということを非常に大事になさっているのですね。

千葉:​​そうですね。どれだけ正しく作っても、そもそも正しくない企画や打ち手では意味がないんです。私は開発も企画も横断してきたので、どちらの側面も大事だと考えています。企画がどれだけ素晴らしくても、実際に正しく作れなければ意味がないですし、逆に、正しく作れたとしても企画がズレていたら結果的に失敗してしまう。なので、両方をちゃんと担保することを強く意識していますし、これが私だからこそ提供できる価値だと感じています。

千葉さんからのおすすめの本

── PM向けにおすすめの本がありましたらご紹介お願いします!

千葉:一応、私は結構本を読むんですよ。だいたい1週間に1冊くらい読んでいます。ただ、どれをピックアップするかは本当に悩ましいですね。多分、他のインタビュー記事でPMにとって有益な本の情報はたくさん紹介されていると思うので、私はちょっと毛色が違う本を紹介しようかなと思います。

もともと私は本を読むのが好きだったのですが、今でこそ情報を効率よく収集できるようになったとはいえ、昔は読書に苦手意識を持っていたんです。それを克服するきっかけになったのが『コンサルタントの読書術』という本です。

この本には、効率的に本を読むための方法が書かれています。具体的には、まず本を読む前に目的を設定し、得たい情報を明らかにしたうえで読み進めることや、読んだ内容をアウトプットしながら進めることで記憶や理解が深まるという話が載っているんです。また、本の選び方や読み方を工夫することで情報の網羅性や効率性を高める方法も書かれていて、それが自分にとってすごく参考になりました。

一番印象的だったのは「誰にとっても役立つ本は存在しない」という考え方ですね。要するに、人それぞれの知識や経験、これまで読んできた本の蓄積が違うので、万人にとって有益な本というものはないと。だからこそ、人に本をおすすめするときはとても慎重にならなければいけないと気づかされました。

なので、今回の「PM向けにおすすめの本は?」という質問には、あえて「おすすめの本はなし」とお答えしたいと思います。PMの方それぞれの背景や経験によって求めるものが違いますから、その人にとって一番役立つ本を見つけてほしいと思いますね。

最後に

千葉さんのお話はいかがでしたか?
感想や得られた気付き、気になったフレーズがありましたら、「#GrantyPM」を付けてツイートしてみてください〜!

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