今回は、フリーランスでプロダクトマネージャーをされながら美容サービス開発中のSoya Tanakaさん(@soyanchu_)にお話を伺いました。
soyaさんは、スタートアップのCTOとしてキャリアを始められた後に、FiNCのプロダクトマネージャーを経て、現在はフリーランスでPdMをやりながらご自身でプロダクトを作って起業しようと準備されています。
スタートアップ時代の失敗から学んだ短期的な売上よりもUXを重要視する考え方やそれを根底で支えるプロダクト愛の大切さなど、プロダクトマネージャーにとって超大事なお話をしていただいているので、たくさんの方に読んでもらいたいです!
この記事は100人100色のプロダクトマネージャーのリアルを知るためのインタビュー記事「PdM Voice」の連載第17回目の記事です。
目次
フリーランスでPdMをやりながら新規プロダクトを準備中
Q. まずはご自身の仕事について教えてください。
現在、フリーランスでいくつかB向け・C向けの案件を受けていて、プロダクトマネージャー兼エンジニアをやってます。また、今後は自分でプロダクトを作って起業しようと考えており、その準備も進めています。
Q. どこのドメインでどのようなプロダクトをつくろうとされているのでしょうか。
美容領域のドメインで、C向けのプロダクトを作ろうと考えています。
現在、企画段階中で夏頃までにプロトタイプを用意できればと考えています。
スタートアップのCTOからキャリアを始め、FiNCでPdMに
Q. どのようなキャリアパスでPdMになったのでしょうか?
学生時代にエンジニアリングを学び、その後に友人とスタートアップを立ち上げてCTOをしていました。
その中で、どう事業やプロダクトを伸ばして行けばいいのか悩んだ時があったのですが、エンジニアリングだけできても、いいUXのプロダクトは作れないと感じていました。
また、当初はスタートアップ自体をやりたいと考えていたので事業領域はどこでもいいからとにかくグロースさせたいという思いが強かったのですが、実際続けていくにつれて少し違和感を感じる事が増えました。
今後のキャリアを考える上で、自分でプロダクトを作ってみたいと思っていたのですが、このままやっても上手くいかないと感じていたことと、ちょうどそのタイミングで国内でPM界隈がホットになりはじめていたため、PMとして転職しようと決めました。
それに伴い、自分が心の底からやりたいことはなにか?を考えて、自分の興味ある分野や趣味に近い領域である美容領域でやりたいと思うようになりました。
元々、学生時代にインターンをしていたFiNCで、ちょうどPMができそう、かつ自分の興味ある領域の仕事ができそうだったので入社することにしました。
Q. FiNCへの入社でいきなりPMになられたと思いますが、スタートアップのCTO時代にスキルを身に付けられたのでしょうか?
スタートアップ 時代は、PMのコアの部分の仕事はしてませんでした。
企画して、要件を詰めて、デザイン・開発して、KPIを改善するサイクルを回すというプロセスで考えた時に、要件を詰める以降のプロセスを中心に担っていたのですが、どんなプロダクトにするのか、どういうUXにするのかなどの検討はCEOがやっていました。
横で一緒に事業やプロダクトを成長させるために取り組んでいる中で、CEOがやっていることを見ながら理解が深まったということはあるかと思います。
Q. FiNCでPMを担われる上で、苦労されたことはありましたか?
2つありました。
1つ目は、主体性や意思決定の部分です。
スタートアップ時代、CTOはCEOが決めたことに対してフィードバックはするものの、役割的に最終意思決定者ではないので、過去を振り返ると自分の中で最後まで考え抜けてなかったと感じました。
また、最後まで決めるために、色々な人を巻き込んで仕事しないといけないとより感じました。自分から上司や関係者、経営陣に自分から働きかけてコミュニケーションとっていかないと価値が発揮できないと感じました。
エンジニアとしては、与えられたというと語弊があるかもしれませんが、イシューがあり、それを技術的負債などとバランスを取りながら最速で実現していきプロダクト価値を向上するとか、whatやhowにこだわることが重要だったので、価値の出し方の種別が異なると感じました。
自分で関わってやっていくことが得意じゃなかったので、苦労したポイントです。
2つ目は、課題の抽出部分です。
エンジニアはhowをどう実現するかを考えることは得意分野だと思うのですが、howの打ち手から考えすぎてしまったり、打ち手をどう早く実現するかを考えてしまっていました。
それよりも誰のどういう課題を解くかということの方が大事で、今思うと当たり前の話なのですが、その当たり前を意識付けするのがはじめは難しかったです。
ミッションを実行するためにプロダクト愛が大事
Q. 今の会社でのPdMのミッションを教えてください。
誰の課題を解決するためにどういうものを作るのかを決めた上で、どういう方向に向かっていくのかを明確にして、みんなが納得感を持って進める状態を作り上げることだと考えています。
プロダクトでも会社でも、ビジョン・ミッションがあっても人がついて来ないというところはあると思うのですが、
コアの部分からHowまで一貫性があって、ストーリー立てられていて、周りを巻き込めるくらいのプロダクトの愛や情熱があるといいのではないかと思います。
Q. やはり、プロダクトの愛は大事ですか?
個人的にドメインにとてもこだわっており、健康や美容、医療ドメインじゃないとあまり興味が湧かないので、プロダクトへの愛は大事だと思います。
そうではないタイプもいるとは思います。
私の解釈ですが、プロダクト愛があると何がいいかをご説明します。
例えば一般的にプロダクト開発をしていると、UXと売上でどちらを優先するか悩むことがあるかと思います。当然どちらも重要なのですが、プロダクト愛があるとUXの方を優先して考えることができ、ステークホルダーと粘り強くコミュニケーションを取ることができます。
一方で、プロダクト愛がないと簡単に売上を取ってしまいかねないです。
短期的には売上を取ってもいいと思うのですが、中長期的なプロダクトの資産としてはじわじわと目減りしていくのではないかと思います。
中長期的に見るとUXやユーザーの価値を追い求めていった方がいいと考えているので、なにかあったときの自分のブレない軸としてプロダクトへの愛があった方がいいと考えています。
Q. ステキな考え方だと思うのですが、何か実体験での学びがあったのでしょうか?
スタートアップでCTOをしていた時に、私もCEOもKPIをゴリゴリ追っていく派だったこともあり、その当時売上はとても伸びていたのですが、一方でUXには力を入れられていませんでした。
求人サイトを運営していたのですが、UXにあまり重きを置いていなかった結果、企業からクレームが入ってしまい、求人をほぼ全て閉じられてしまい売上もほぼ全てなくなってしまうということがありました。
その経験から、ユーザーのことを考えないでやるとどこかで破滅するということを身に染みて感じまして、何か迷った時はユーザーを見るべきだと考えるようになりました。
トライアングルの各領域を一通り経験し、バランスの良さに定評あり
Q. プロダクトマネジメントトライアングルを元に、具体的な業務範囲を教えてください。
ミッションである「どういう方向に向かっていくのかを明確にして、みんなが納得感を持って進める状態を作り上げる」ことに関しては、ターゲットユーザーへの課題や仮説を元にしたユーザー調査を行う際に、メンバーにも一緒に出てもらって生の声を聞いてもらうようにすることや、リーンキャンバスに可視化して認識合わせを行うこと、理想の状態に関する対話などを行うようにしています。
プロダクトマネジメントトライアングルにおいては、一通り経験はありバランス感覚は悪い方ではないと思っています。
スタートアップ のCTO時代からずっとやってきて得意
- プロダクト仕様
- カスタマー/技術サポート
FiNC時代に経験してできるようになった
- プロジェクトマネジメント
- 社内外調整/資源獲得
- マーケティング
- パートナーシップ
- ビジネスディベロップメント
普通
- デザイン
- データ分析
難易度の高いアライアンス案件でプロジェクトマネジメントスキルを磨いた
Q. プロダクトマネージャーとして誇れる実績や取り組みはありますか?
FiNCでやってきた仕事が、株主との2年がかりの大きな協業プロジェクトで、先方の役員の方や現場の方々に対するステークホルダーマネジメントを行いながら、自社のプロダクトにうまく落とし込んでいく必要があり、振り返ってもとても難易度の高いものでした。
ただ、2社間での協業の座組みから開発完了までリードし、クライアント満足度も得ながら、自社が実現したいことも叶えられたことは、自分の自信になりました。
この経験の中で、特にプロジェクトマネジメントやステークホルダーマネジメントが得意になりました。
短期的な売上よりもUXを大事にするためのマイルール
Q. 行動指針や大切にしているマイルールはありますか?
ミッションのパートでお話した短期的な売上よりもUXを大事にするということにも関連しますが、次の5つを大事にしています。
- いいプロダクトをつくる(中身が無いのにマーケティングだけうまくやるはNG)
- テクノロジードリブン(技術でレバレッジがかかるところでやっていく)
- そもそもなぜやるのか(本質)を突き詰めた上でやる
- 自分の心に正直になる(人の意見を聞きすぎて自分を押し殺すならやる意味がない)
- 透明性(メンバーがクリエイティブに動けるように必要な情報開示がされている状態)
風通しが良く、こぼれ球を拾い合えるチームをつくる
Q. いいチームをつくるために取り組まれていることはありますか?
まずは、風通しがいいことは大事にしています。
メンバーが自分の意見が言えないチームは微妙だと思っていて、心理的安全性を高めることは意識していました。
例えば、雑談の時間をあえて取ることなどを行ったり、MTGのファシリテーションをみんなで回すことによって当事者意識を持ってもらうこと、毎週金曜日にデモ会を行って途中経過でもいいので共有してお互いにフィードバックし合う機会の設定などを行っていました。
また、自分の職能を縛りすぎないようにすることは意識しています。
エンジニアでもカスタマーサクセスをしてもいいし、企画に入ってもいいし、デザインに入ってもいいと考えています。
その上で、こぼれ球を拾っていけるチームにしたいと思って、自らが率先して動きながら、チームへの働きかけを行っていました。
課題を空想ででっち上げない、ユーザーに憑依して企画する
Q. 質の高い企画をするために意識していることはありますか?
ターゲットユーザーに憑依して、まずは自分の直感を信じて企画を作り、周囲の人に壁打ちを行いフィードバックを得て改善していくことが多いです。
(FiNCでやっていた時は、自分がまさにターゲットユーザーだったので、あえて憑依させる必要はありませんでした。)
企画を行う際に、
- いきなり参考サイトやアプリなどを見ない
- 定量で見過ぎない
は注意しており、ターゲットユーザーの課題から定性で考えて、定量で答え合わせするということが多いです。
また、課題設定時は、誰の課題か分からないようなことを空想ででっちあげないことは意識しています。
これをどれだけ改善できるとKPIが上がって目標達成できるからこの人たちをターゲットとしてこれを課題として設定しようという逆算は、自分の経験上うまくいかない気がしていて、こういうターゲットのこの課題を解決するためにこういうプロダクトを作ろうという考え方であるべきだと思っています。
ユーザーインタビューのインプットとして定期的に読み返すオススメの本
Q. かけだしPdMに向けて「まずはこの本を読むべし」というオススメの本はありますか?
RUNNING LEANがオススメです。
顧客への課題のユーザーインタビューやソリューションのユーザーインタビューなど、一通り体系的まとまっており、定期的に読み返す本です。
かけだしPdMへ「大変なことは多いけど、楽しい。市場価値も高まる。」
Q. この記事を読んでいるかけだしPdMへ一言お願いします!
PMは、決めることも多く、関係者との調整など大変なことは多いと思うのですが、目標達成した時のやりがいは変えられないものだと思うので、できるようになると楽しいです。
ここ最近、日本でもプロダクトマネージャーの知名度も上がってきて花形の職種と言われており、情熱を注げる職業であり市場価値も高まると思います。
(エンジニアとPMのように複数の職種ができると正直仕事には困らないと思います。)
最後に
soyaさんのお話はいかがでしたか?
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社外のプロダクトマネージャーのリアルなお話を直接聞くことができて、学びや気付きが得られる、かなり有意義な時間だと感じています。
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