
どうも、マツバラヤスユキ(@yaspontax)です。
アジャイル界隈に興味を持ち、記事やtwitterの投稿を探すようになったことで、心理的安全性性という言葉をよく目にするようになりました。分かったつもりで、心理的安全性という言葉を使い始めていたりするのですが、今一度、心理的安全性の正しい理解の為にまとめてみたいと思います。
目次
本記事はこんな方にオススメ
- 心理的安全性という言葉を初めて聞きその意味を知りたい方
- 心理的安全性の確保によるメリットをざっくりと知りたい方
- 自分の組織やチームに心理的安全性を作り始めたい方
心理的安全性とは
心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味する。
心理的安全性の高いチームのメンバーは、他のメンバーに対してリスクを取ることに不安を感じていない。自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地がある。(Google re:Workより)
サイコロジカル・セーフティ(psychological safety)という英語を和訳したもの。
心理的安全性という言葉自体は以前から存在していたが、Google社が約4年もの年月をかけて実施した大規模労働改革プロジェクト、プロジェクトアリストテレス(Project Aristotle)や、その他の人事関連研究の成果報告として『心理的安全性は成功するチームの構築に最も重要なものである』と発表したことにより、大きな注目を集めた。
チームを成功へと導く為に重要な心理的安全性
Google社のリサーチチームが、チームの構成(メンバーの性格的な特性や営業スキル、年齢・性別などの人口統計学的な属性など)とチームの力学(チームメンバー同士の関係性など)がチームの効果性にどう影響するかを調べた。
その結果、真に重要なのは「誰がチームのメンバーであるか」よりも「チームがどのように協力しているか」であることを突き止めた。
チームの効果性に影響する因子を重要な順に示すと次のようになります。
心理的安全性
心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味します。心理的安全性の高いチームのメンバーは、他のメンバーに対してリスクを取ることに不安を感じていません。自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地があります。
相互信頼
相互信頼の高いチームのメンバーは、クオリティの高い仕事を時間内に仕上げます(これに対し、相互信頼の低いチームのメンバーは責任を転嫁します)。
構造と明確さ
効果的なチームをつくるには、職務上で要求されていること、その要求を満たすためのプロセス、そしてメンバーの行動がもたらす成果について、個々のメンバーが理解していることが重要となります。目標は、個人レベルで設定することもグループレベルで設定することもできますが、具体的で取り組みがいがあり、なおかつ達成可能な内容でなければなりません。Google では、短期的な目標と長期的な目標を設定してメンバーに周知するために、「目標と成果指標(OKR)」という手法が広く使われています。
仕事の意味
チームの効果性を向上するためには、仕事そのもの、またはその成果に対して目的意識を感じられる必要があります。仕事の意味は属人的なものであり、経済的な安定を得る、家族を支える、チームの成功を助ける、自己表現するなど、人によってさまざまです。
インパクト
自分の仕事には意義があるとメンバーが主観的に思えるかどうかは、チームにとって重要なことです。個人の仕事が組織の目標達成に貢献していることを可視化すると、個人の仕事のインパクトを把握しやすくなります。
引用:Google re:Work – ガイド: 「効果的なチームとは何か」を知る
チームを成功へと導く為に、心理的安全性がいかに重要であるかをご理解頂けたのではないでしょうか。
心理的安全性の確保によるメリット
心理的安全性を確保することによって、以下のようなメリットがあると言われている。
- 生産性の向上
- 報連相(報告・連絡・相談)の徹底
- 目標達成を阻む障害の排除
- 円滑なコミュニケーション
- メンバーの積極的参加
- メンバーのポテンシャルの最大化
- 学習する組織・チームの構築
- イノベーションが生まれやすい環境
- 建設的な議論
- 優秀人材の流出抑制
- クオリティ・オブ・ライフの向上
- 最高のパフォーマンスを発揮できる職場環境
- 長期にわたって働きたいと思える職場環境
- 将来ビジョンを実現させるための人材育成計画の構築
また、以下のような”不安”を解消することができる。
- 無知だと思われる不安
- 無能だと思われる不安
- 邪魔をする人だと思われる不安
- 否定的でネガティブだと思われる不安
心理的安全性が不足していると
心理的安全性が不足しているチームでは、メンバーが上記の不安を抱えている為、分からないことがあったとしても聞くことができなかったり、失敗やミスを隠したり、ミスを自分だけで解決しようとしてより被害を拡大させてしまうといった問題が起こる。
また、自由な発言が許されない環境では多角的な視点からの検証や発想がなくなり、現代ビジネスにおける変化のスピードについていけなくなってしまう。
チームの心理的安全性を測る
「チームの心理的安全性」という概念を最初に提唱したハーバード大学で組織行動学を研究するエイミーエドモンソン氏は、チームの心理的安全性がどの程度のレベルであるかを調べる際、次の文が自分自身に強く当てはまるかどうかをチームメンバーに尋ねる。
- チームの中でミスをすると、たいてい非難される。
- チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える。
- チームのメンバーは、他と違うことを理由に他者を拒絶することがある。
- チームに対してリスクのある行動をしても安全である。
- チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい。
- チームメンバーは誰も、自分の仕事を意図的におとしめるような行動をしない。
- チームメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる。
「全く違う」、「かなり違う」、「やや違う」、「どちらともいえない」、「ややその通り」、「かなりその通り」、「全くその通り」の7段階評価とし、肯定的な質問2、4、6、7と否定的な質問1、3、5に分け、肯定的な質問は「全く違う」を1、否定的な質問は「全くその通り」を1として調査する。合計点数が高い程、心理的安全性が高いレベルにあると言える。
心理的安全性の作り方
組織へ浸透させる
Google のリサーチチームは、社内の各チームを対象にワークショップを実施した。ワークショップでは、匿名化したシナリオを用いて、チームの心理的安全性に好影響を与える行動と悪影響を与える行動を紹介し、ロールプレイでシナリオを示した後、その解説を行った。以下は、ワークショップで取り上げたシナリオの一例である。
心理的安全性のシナリオ | アイデアとイノベーション
技術的な専門知識に精通するAさんは、長年にわたりマネージャー職を担当しています。この 2 年間は、大規模プロジェクトの運営を担当する XYZ というチームのマネージャーを務めてきました。Aさんは、もともと要求水準の高い人物でしたが、ここ数か月は、ミスやありきたりなアイデア、自身の考え方にそぐわない出来事を受け入れない不寛容な側面が目立つようになっていました。
先日Aさんは、経験豊富なチームメンバーが提案したアイデアを皆の前で厳しく非難し、さらに本人のいないところで辛らつな批判を繰り広げました。Aさん以外のメンバーは皆、このアイデアには説得力があり、裏付け調査も十分で、試してみる価値はあると考えていたにもかかわらずです。この出来事の後、メンバーからアイデアが提案されることはありませんでした。
Aさんのアイデアが採用された新しい企画書は、創造性と新規性に欠けるという理由で、最終的に経営陣から却下されました。
シナリオ紹介後の質問
- 心理的安全性が表れているのはどの振る舞いですか?
- 心理的安全性の欠落を示唆しているのはどの振る舞いですか?
- 心理的安全性が非常に重要なのはなぜだと思いますか?チームにおいて、心理的安全性の有無はどのような違いをもたらしますか?ご自身のチームを振り返ってみるとどうですか?
個人の取り組み
エドモンソン氏がTEDx Talks でのスピーチの中で、チームの心理的安全性を高めるために個人にできる簡単な取り組みとして、次の 3 点を挙げている。
- 仕事を実行の機会ではなく学習の機会と捉える。
- 自分が間違うということを認める。
- 好奇心を形にし、積極的に質問する。
マネージャーにできること
積極的な姿勢を示す
- 「今」を大切にし、目の前の会話に集中する(例: 会議中はノートパソコンを閉じる)
- チームメンバーから学ぼうという意欲を持って質問をする
- 自分の意見を述べる、対話的なコミュニケーションを心がける、傾聴の姿勢を示す
- 積極的な姿勢を示すため、返答するときは言葉で返す(例: 「なるほど。詳しく説明してもらえますか?」)
- 体の動きや仕草に注意する。話を聞くときは少し体を乗り出すようにするか、相手の方に顔を向ける
- 会話の当事者として積極的に話を聞いていることを示すため、相手と目を合わせる
理解していることを示す
- 互いの理解が一致していることを確認するため、相手の発言内容を要約する(例: 「あなたがおっしゃったのは…ということですね?」)。その後で、同意できる点、できない点を示し、グループ内で率直に意見を交わす
- 話の内容を理解したことを言葉で示す(例: 「なるほど」「おっしゃることはわかります」)
- 責めを負わせるような言い方(例: 「なぜそのようなことをしたのですか?」)はせず、解決策に焦点を当てる(例: 「この作業をよりスムーズに進めるためにできることを考えましょう」「次に備えた行動計画を立てるため、皆で協力しましょう」)
- 気づかぬうちに否定的な表情(苦い顔や不愉快そうな顔)を浮かべていないか注意する
- 会話中や会議では、話を聞いていることを示すためにうなずく
対人関係において相手を受け入れる姿勢を示す
- 自分の仕事の進め方や好みをチームメンバーに伝え、チームメンバーにも同じように自身のやり方を皆に伝えるよう促す
- チームメンバーのために時間を割く、友好的な態度を示す(例: 1 対 1 の定例外の会話、意見交換、キャリアに関するコーチングのための時間を作る)
- 定期的な 1 対 1 の打ち合わせやチーム会議とは別に定例外の会議を開く場合は、会議の目的を明確に伝える
- チームメンバーの貢献に対して感謝の意を示す
- チームメンバーが他のメンバーについて否定的な言葉を口にしたときは間に入る
- 相手に対して開かれた姿勢を取る(チームメンバー全員に顔を向ける。誰かに背中を向けることはしない)
- チームメンバーと親密な関係を築く(例: チームメンバーと仕事以外の話をする)
意思決定において相手を受け入れる姿勢を示す
- チームメンバーに意見やフィードバックを求める
- 人の話を妨げない。妨げようとする人をたしなめる(例: 人の話を妨げようとする人がいたら間に入り、元の発言者に話を続けさせる)
- 意思決定の背後にある根拠を説明する(対面またはメールで、その結論に達した経緯を詳しく説明する)
- 他のチームメンバーの貢献を認める(例: チームメンバーが成功や意思決定に貢献した場合は、その事実に言及する)
強情にならない範囲で自信や信念を持つ
- チーム ディスカッションをコントロールする(例: チーム会議での雑談を認めない、意見の対立が個人間の対立に発展しないようにする)
- チームメンバー全員が聴き取れるよう明瞭に発声する
- チームをサポートする、チームを代表して行動する(例: チームの成果を上級役員に伝える、チームメンバーの功績を認める)
- 自分の意見に対して、チームメンバーが別の意見がある場合、反論したり異論を唱えるようチームメンバーに促す
- 自分の弱みを見せる。仕事や失敗に関する自分の個人的な考え方をチームメンバーに伝える
- リスクを取るようチームメンバーに促し、自分の仕事でも実践してみせる
心理的安全性に関するオススメの本
「チームの心理的安全性」という概念を最初に提唱したハーバード大学で組織行動学を研究するエイミーエドモンソン氏の著書『チームが機能するとはどういうことか』をオススメします。